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2011/12/15 No.149_3FTAが牽引するASEAN‐中国貿易 ~2012年にさらなる関税削減が見込まれるACFTA( ASEAN中国FTA)~
(3.2012年に大きな関税削減を予定)

高橋俊樹
(財)国際貿易投資研究所 研究主幹

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3.2012年に大きな関税削減を予定

2012年、2015年、2018年が節目

あらゆるFTAにおいて、最も企業の関心を集めるのは、関税削減に関する規則である。企業にとっては、FTAで自社の製品がどの削減対象品目に分類され、どのようなスケジュールで関税が削減されるのかが、最大の関心事となる。

ACFTAにおいては、関税削減対象品目は、早期に関税を引下げる「アーリーハーベスト品目(EHP)」、一般スケジュールどおりに段階的に削減し最終的に0%にする品目である「ノーマルトラック品目(NT)」、ある期間までに一定の関税率まで引下げることを猶予される「センシティブトラック品目(ST)」に分類される。

ノーマルトラック品目((NT)は、予定通りに関税削減する品目(NT1)とノーマルトラックの例外品目(NT2)に分類される。センシティブトラック品目(ST)は、センシティブリスト品目(SL) と高度センシティブリスト(HSL)品目、に分けられる。HSL品目は、SL品目よりもさらに関税削減スケジュールが遅れることになる。

EHPは、原則として農水産物であり、貿易統計分類のハーモナイズ・システム(HS)のコードでいえば、HS01-08に当たる。この関税は、中国及び先行ASEAN6では既に2006年から関税が0%となっている。

表4にあるとおり、マレーシアはEHPの例外品目を設けている(ASEANのみ対象22品目)。また、タイ、フィリピンなどの国は、農水産物以外からEHPの追加品目を設定している。CLMVのEHP品目削減スケジュールにおいては、ベトナムが2008年、ラオス・ミャンマーは2009年、カンボジアは2010年から関税をゼロにしている。

中国・先行ASEAN6のNT1は2010年から関税はゼロになっている。ノーマルトラックの例外品目(NT2)は中国・先行ASEAN6では150品目以下と制限されているが、2012年から関税は0%になる予定である。CLMVでは、NT1は2015年から関税が0%となり、250品目以下と制限されているNT2は2018年から0%の予定だ。

NT2の150品目、250品目の制限であるが、これは協定書ではHS6桁ベースのことであり、一般の部品・製品に近いHS8桁・10桁ベースになると、もっと品目数が増えることになる。

センシティブトラック品目(ST)は、中国・ASEAN6 では「HS6桁で400品目以下か輸入額の10%以下」と制限されている。中国・先行ASEAN6においては、HSLは「STの40%以内か6桁で100品目」と規定されている。SL品目は、2012年から20%以下、2018年から0-5%に引下げる予定だ。HSL品目は2015年から50%以下になる。

CLMVにおいては、STは「6桁で500品目以下」に制限され、HSLは「ST全体の40%以内か150品目以下(ベトナムは140品目)」となる。SL品目の関税削減スケジュールは、2015年から20%以下で、2020年から0-5%になる。HSL品目は2018年から50%以下の予定だ。

複雑なACFTAの関税削減スケジュール

このように、ACFTAの関税削減スケジュールにおいては、2012年と2015年、2018年が節目となる。特に来年の2012年には、中国と先行ASEAN6ではノーマルトラックの例外品目(NT2)が0%になるし、同時に、SL品目の関税が20%以下になる予定である。日本企業にとっては、ACFTAを活用する上で大きなインセンティブになることは間違いない。

HS分類の8桁・10桁ベースでは、中国のNT2の数は233品目、インドネシアは474品目、マレーシアは140品目、タイは173品目であった。

中国のセンシティブトラック品目(ST)であるが、議定書においては、6桁ベースでSLが176品目、HSLは101品目と指定されていた。しかし、現実に実行関税率を決める際の8桁・10桁ベースでは、中国政府はSLとHSLを区別した関税削減スケジュール表(TRS表)を発表していない。したがって、ASEAN事務局のサイトから得られる中国のTRS表には、SLとHSLを区別していない431のST品目だけが掲載されている。しかも、公表されているのは、2010年と2012年の2年間だけのST品目リストのみである。

すなわち、中国の8桁・10桁ベースのSL品目の数は正確にはわからないが、最低でも431品目から6桁ベースのHSL品目の101品目を引いた330品目はあることになる。インドネシアのSL品目の数は642品目、マレーシアは140品目、タイは521品目である。

これらの数カ国のNT2とSL品目の数だけを見ても、2012年におけるACFTAの関税削減の影響が大きいことを理解することができる。

以上のように、ACFTAを使いこなすには、まずは関税削減スケジュールをしっかりと把握する必要がある。しかしながら、そのスケジュールはあまりにも複雑なので、一度では絶対に覚えきれない。表4を参考にしながら、その都度チェックすることが不可欠である。  

表4  ACFTAの関税削減スケジュール 

(資料)  ACFTAの枠組み協定書と物品貿易協定書及びその修正議定書から作成

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