フラッシュ184
2014年4月21日
 

アフリカ消費市場展望(1)
~2050年のサブサハラ、米国並み水準へ?~

 
(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹
大木 博巳
 

2013年11月初めに、南アフリカのヨハネスブルグでアフリカ小売り会議(フォーブス社主催)が開かれた。スピーカーには、国際機関(IFC)、地元銀行や欧米のマーケティング会社や会計事務所のエコノミスト、在南ア欧米企業の現地法人トップ、南アフリカやケニアの大手小売業の幹部、ブラジルや欧州の新興企業の幹部が登壇して、サブサハラアフリカ(以下サブサハラ)の消費市場の現状と今後の市場開拓について熱く語っていた。以下では、これらスピーカーの発表や筆者がアフリカ取材で集めたデータ等をもとに、サブサハラ市場の展望、欧米企業や南アフリカなどアフリカの小売業のサブサハラ市場における事業展開等について紹介する。第1回はサブサハラ市場の可能性と問題点。

Planet RetailのBoris Planerチーフエコノミストによれば、長期的な視点で見るとサブサハラ市場には二つのメガトレンドがある。第1は、2050年までにサブサハラの人口は倍増して、20億人に達すること。第2は、都市化が進み、教育レベルも向上することで生産性が改善して、経済成長率が高まり、サブサハラ地域の所得水準が米国水準並みに達する見込みであること。現在、米国の一人当たり所得は、サブサハラの38倍、南アフリカの9倍という大きな開きがあるが、この格差が急速に縮小することになる。所得水準の向上に伴ってサブサハラの小売市場(米ドル建て)は2038年までの25年間で現在の7倍増に拡大する見込みである。サブサハラの人口は米国の約3倍であるが、小売市場の規模はアメリカの約6分の1に過ぎない。

しかし、こうした楽観的な見方に対して、現状を見ると多くの問題点が指摘できる。第1は、包括的な成長がないということ。例えば、サブサハラの多くの国で5から7%の高い経済成長率を記録しているが、経済成長の恩恵にあずかっている人たちは、一部の人たちである。国民にあまねくその恩恵が行き渡っていない。

第2は、サブサハラの経済成長のけん引力は資源輸出に依存しており、一次産品価格の変動に弱い。さらに、世界水準に満たない低い生産性のために製造の投資がアフリカに来ない。サブサハラにとって、持続的な雇用の創出と拡大が必要であり、製造業の投資を呼び込むことが欠かせない。

第3は、家計の借金レベルが高いこと。南アフリカでは、可処分所得の約80%が借金の返済に費やされている。2013年には家庭の半数が3ヶ月連続の借金に追われ、実質的な可処分所得は僅かである。また、失業率は25%を超えており依然として高い。

スパザショップ進出が鍵

深夜のアフリカの衛星写真を見ると、明るく輝いている地域は、アフリカ南東地域と石油資源の豊かなニジェール・デルタ付近である。これらの地域は急速に都市化が進んでいる。サブサハラは、今やインドよりも都市化が進むと見込まれており、都市化の進展により産業集積が進み、成長を促進する。サブサハラの消費市場は、国単位ではなく、都市単位でみるべきであろう。特に都市化が進む地域はヨハネスブルク、ラゴス、ナイロビ、ケープタウン、ルアンダ(アンゴラの首都)などである。

都市部の消費市場において、注目すべき点としては、第1は低所得層向けの小売店であるスパザッショプ(都市部の低所得層地域や農村部で展開する必要最低限の雑貨・食品を販売する小規模小売店)である。ネスレのマギーやユニリーバのシャンプーは、スパザショップの定番品である。サブサハラで存在感がある欧米企業は、大手スーパーだけでなくスパザッショプまで商品を流通させる力を持っている。サブサハラの小売市場の半分はいまだにスパザッショプによる販売であるとみられており、スパザショップで商品を販売しなければ、本物とは言えない。サブサハラに限らず、インド、パキスタン、インドネシア、フィリピン、メキシコ、コロンビアなどの消費市場でも、名称は異なるがスパザショップの役割が大きい。サブサハラの経験がこうした地域にも応用できる。

第2はサブアフリカ市場では、欧米市場でみられるような企業間の価格競争はなく、価格は比較的高い水準で維持されている。欧米ではプライベートブランド品は、同様の品質にも関わらずブランド品の2から3割は割安であるが、サブサハラ市場ではこの点が大きく異なり、価格差はない。

第3はここ数年の間には、外資系小売企業のサブアフリカ市場への新規参入の見通しはないという点である。例外は、WalmartとCarrefour。ただし、10年のうちには外資の特に欧州のハイパーマーケットがサブサハラ市場に参入を果たすだろうから、今がチャンスといえよう。

次回以降の予定

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