フラッシュ203
2014年8月27日
 

中国の伙伴関係(パートナーシップ)について

 
江原 規由
(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹
 

中国は、現在、世界中の58国・機構(地域)と15種類の「伙伴(フオバン)関係」(下記『表』を参照)を構築している。「伙伴関係」とはパートナーシップの意味で、かつて、NATOが構築した非NATO欧州諸国ならびに旧ソ連構成国の24ヶ国と信頼を醸成するための取り組み(平和のためのパートナーシップ構築)に共通するところがある。


表:中国が構築している伙伴関係一覧

伙伴関係の種類
国・地域など
全面戦略伙伴 EU、英国、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、デンマーク、ベラルーシ、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ベネズエラ、カザフスタン、インドネシア、マレーシア、南ア、アルジェリア、モンゴル
全面戦略協作(協力)伙伴 ロシア
構建(構築)新型大国関係 米国
全天候戦略合作(協力) 伙伴 パキスタン
全方位戦略伙伴 ドイツ
全面合作伙伴 コンゴ共和国、ネパール、クロアチア、タンザニア、バングラデシュ、エチオピア
全面戦略合作伙伴 タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー
戦略合作伙伴 アフガニスタン、韓国、インド、スリランカ
戦略伙伴 ASEAN、ペルー、アラブ首長国連邦、アンゴラ、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、モンゴル、ポーランド、ナイジェリア、カナダ、セルビア、チリ、ウクライナ
友好伙伴 ジャマイカ
友好合作伙伴 ブルガリア
全面友好合作伙伴 ルーマニア
伝統合作伙伴 アルバニア
重要合作伙伴 フィージー
戦略互恵伙伴 アイルランド

出所:京華時報 2014年7月25日


1.中国の伙伴(フオバン、パートナーシップ)関係

二国・機構(地域)間関係をこれほど多種多数に表現している国は、中国をおいてほかにはないといえるが、日本が「伙伴関係」にリストアップされていないのには、やや違和感を覚える。

日中間では、1998年、江澤民国家主席(当時)が訪日した折、“致力于和平与发展的友好合作伙伴关系”(平和および発展の友好協力パートナーシップに構築に尽くす“との共同声明が、また、2008年、胡錦濤国家主席(当時)の訪日時、福田康夫首相(当時)との間で、《中日关于全面推进战略互惠关系的联合声明》(戦略互恵関係を全面的に推進することに関する日中共同声明)が出されている。1998年の共同声明で使われている『致力』には『努力をしているが、まだ達成されていない』との含意があるが、2008年の共同声明で、戦略互恵関係を推進するとしつつも、「伙伴」の2字が付けられていないのは、日本とはまだ伙伴関係が構築されていないということである。中国の解釈によれば、伙伴関係とは、『双方にすでに一定の信頼関係が構築されており、重大な問題において、基本的には意見を異にしない』状況が構築されている関係とされている。

また、北朝鮮がリストアップされていないのには、大いに違和感を覚える。かつて、朝鮮戦争をともに戦った両国の関係は「血の友誼」とも表現され、現在、両国は、「中朝伝統友好合作(協力)関係」を構築している。「伙伴関係」は二国・機構間関係を位置付けているのであれば、北朝鮮は「伙伴関係」リストに入って当然といえる。これは筆者の独断ではあるが、「伙伴関係」とは、双方(特に中国)にとって、国家利益となる何かが存在し続けていること、その利益が、さらに拡大するとの前提があれば、「伙伴関係」を格上げするということにあるらしい。この点、韓国との「伙伴関係」を見ると、1998年:合作(協力)伙伴関係、2003年:全面合作伙伴関係、2008年:戦略合作関係と格上げされている。この時期は、中韓経済交流が拡大基調にある一方、北朝鮮とは、核開発問題などで、利益を共有できない状況が増えつつあったことに、関係があると判断される。そのことを如実に物語っているのが、2014年7月の習近平国家主席の訪韓で、中韓FTAの年内妥結を目指すことで一致をみるなど、両国が各分野での関係強化で一致したことからもうかがい知ることができる。

上記との関連でもう一点、「伙伴関係」につき指摘しておきたい。目下、中国は「シルクロード経済帯」(国際貿易投資研究所 季刊 国際貿易と投資 2014年夏号 NO.96 参照)建設を国家の威信をかけて積極的に推進しているが、その母体となる上海協力機構(正規加盟国:中国、ロシア〈全面戦略協作伙伴〉、カザフスタン〈全面戦略伙伴〉、キルギス、タジキスタン、<戦略伙伴〉、ウズベキスタン〈戦略伙伴〉)の内、キルギスのみ、中国と「伙伴関係」にない。今後、シルクロード経済帯建設でキルギスとの関係が深まれば、中国とキルギスの「伙伴関係」が構築されるものと判断される。

なお、社会主義国では、唯一ベトナムとだけ、「伙伴関係」が構築されている。

以下では、「伙伴関係」リストの中から、特徴のある「伙伴関係」をピックアップして説明したい。

 

①伙伴関係から戦略伙伴関係へ

今年7月、習近平国家主席は、第6回BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア)会議出席のためラテンアメリカを訪問した折、アルゼンチン、ベネズエラと、それまでの2国間関係を「戦略伙伴関係」から「全面的伙伴関係」に格上げ(提升)することで合意した。

中国の識者によれば、「戦略伙伴関係」とは、双方が国家安全利益を基礎とし、全体(整体)、全局、核心利益で一致するよう協力し合う関係で、この関係をさらにバージョンアップ(より広い協力範囲、よりハイクラス・全面的な戦略関係)したのが、「全面的伙伴関係」であるという。現在、中国が構築している「戦略伙伴関係」は18であるが、2003年にEUと構築された「戦略伙伴関係」が最初である。

「伙伴関係」の構築およびその格上げは、中国と相手国・機構(地区)が、政治、経済、文化、国際および地域での事務・実務遂行面でどれだけ良好な関係を構築しているかを知る目安であり、リトマス試験紙といってもよいであろう。


②ロシア、米国、パキスタン、ドイツとの特別なパートナーシップの構築(注)

次に、全面戦略伙伴以外の各種伙伴関係(対ロシア、米国、パキスタン、ドイツ)やその構築の経緯について、中国の報道や有識者の見解から紹介しておきたい。

○全面戦略協力パートナーシップ(ロシア)

2014年5月、中国上海で開催された第4回アジア信頼醸成措置会議に出席したプーチン大統領との間で、《关于全面战略协作伙伴关系新阶段的联合声明》(全面戦略協力パートナーシップ関係新段階に関する共同声明)が署名された。

中ロ両国の全面戦略協力パートナーシップとは、世界の大国として、世界の安全など重大な局面において、中ロ両国は共同して一定の影響を発揮するための関係という。

注目点は、ロシアだけが、「伙伴関係」(全面戦略協作伙伴関係)に『合作』でなく、同意語の『協作』が使われている点である。その意味するところは、中ロ両国は隣国の大国として、多くの国際問題で協力し合う特別関係にあるとの含意があるとされる。


○構建新型大国関係(米国)

1997年の中米共同声明で、両国は“建設戦略伙伴関係”(戦略伙伴関係の構築)に努力するとした。以後、2002年に両国関係を「建設的協力関係」、2011年、胡錦濤国家主席(当時)訪米の折、共同声明に《致力于共同努力建设相互尊重、互利共赢的合作伙伴关系》(相互尊重、ウィンウィンの協力パートナーシップ関係を協力して建設する)ことが盛られた。2013年6月、習近平国家主席が訪米した折、オバマ大統領との間で、両国は新型大国関係の構築に努力するとの共同声明が出された。新型大国関係とは、武力衝突などで世界秩序の改変を避けるため、両国は不対抗、不衝突、相互尊重、ウィンウィンの大国関係を構築し、対話を通して双方間の矛盾を解決するための関係を指す。


○全天候戦略協力関係(パキスタン)

国交63年来、中パ両国は、政治的平等・信頼、経済的ウィンウィン関係、そのほか両国の核心的利益といった問題において相互理解、相互支持をしてきた。パキスタンとの友好関係の発展は中国政府にとって首尾一貫した方針であり、両国は台湾、チベット、テロ問題、対米関係で相互支持し合い、その協力関係において暗黙の了解があるという点など、国家関係の模範とされている。

この点、建国後一貫して中国と密接な関係にあった中国とパキスタン、中国と北朝鮮との関係で対比すると、中国は、パキスタンと一貫して、関係強化・発展してきているのに対し、北朝鮮とはすでに「血の友誼」ではなくなっているとされている。中国がパキスタンと唯一「全天候戦略協力関係」構築しているのに対し、北朝鮮とは未だに「中朝伝統友好合作(協力)関係」のままである点に明らかである。

なお、全天候戦略協力関係と全面戦略協力関係は同じではなく、“全天候”の意味は、どんな時でも、どんな状況にあろうと、密接かつ友好関係にある関係を指すとされる。


○全方位戦略関係(ドイツ)

2013年3月、習近平国家主席とメルケル総理が、《建立中德全方位战略伙伴关系的联合声明》(中独全方位パートナーシップ関係を構築する共同声明)を発表、両国は今後の協力発展のため10分野で全面計画を策定している。全方位は全面より立体的な協力関係、多方面に及ぶとされる。即ち、環境保護、省エネ、再生可能エネルギー分野での協力を強化し、世界貿易の自由化を推進し、投資を開放し、財政金融領域での協調を強化するという。また、ドイツは、中国の全面的改革深化を支持するという。


③伙伴关系の一端を見る

先に、習近平国家主席がBRICS会議出席のためラテンアメリカを訪問したとしたが、その首脳会議で、中国がこれまで積極的に支持してきたBRICS開発銀行の開設、外貨準備金制度の発足などで合意した。BRICSは、2008年の金融危機以降、世界経済の発展に大きく貢献してきているが、今回の会議は、現在の世界経済・貿易体制を支えている世界銀行やIMF体制に対し“BRICSが一石を投じた”とする報道が少なくない。中国とBRICS構成国との「伙伴」関係をみると、構成国のブラジルとは全面戦略伙伴、ロシア(全面戦略協力伙伴)、インド(戦略合作伙伴)、南アフリカ(全面戦略伙伴)となる。

因みに、BRICSの拡大加盟国予備国とされるのが、メキシコ(全面戦略伙伴)、インドネシア(全面戦略伙伴),ナイジェリア(戦略伙伴)、トルコ(未構築)などである。

 また、習近平国家主席が2014年8月にモンゴルを訪問した折、それまでの戦略伙伴から全面戦略伙伴に格上げされている。伙伴関係の構築は、中国の外交戦略の一翼を担っているといえる。

 

注 京華時報(2014年7月25日)などから、筆者が作成