フラッシュ251
2015年9月18日
 

アフリカにおけるチャイニーズ・ボナンザの終焉
~中国モデルを見直し始めたサブサハラアフリカ~

 
大木 博巳
(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹
 

2014年にサブサハラの対中輸出は頭打ち

中国とサブサハラアフリカ地域(以下サブサハラ)は、資源貿易で互いに利益を享受できるウィンウィン関係を築いてきた。中国は成長に必要な資源をサブサハラ諸国から安定的に調達し、サブサハラは中国からインフラ投資や割安な製品を輸入して生活水準を向上させることができた。しかし、このウィンウィン関係の持続性に赤信号が灯りだした。

中国は、サブサハラとの貿易で大きな利益を享受していた。中国の経済成長に必要な資源を確保する一方で、中国は輸出を拡大させることができた。中国のサブサハラ向け輸出は2000年の46億ドルから2014年に779億ドルに急増している。2004年には米国を抜き、EUに迫っている。(図)中国のサブサハラ向け輸出の伸び率は、2003年から2008年には毎年30%を超える勢いで拡大した。2004年は16%増と半減しているが、世界貿易が低迷している中でサブサハラ輸出は2桁の伸びを確保している。

中国のサブサハラからの輸入も2000年の33億8500万ドルから2014年に1089億ドルへと拡大している。しかし、2014年の輸入の伸び率は2.5%増と横ばいと頭打ちに転じている。EUや米国のサブサハラからの輸入が前年比減と縮小しているのに対して中国はかろうじてプラスを維持した。しかし、リーマンショック後の2010年には、61%増と急増したが、当時の勢いはない。中国のサブサハラからの輸入に急ブレーキがかかっている。

サブサハラの対中輸出は、中国の固定資産投資に依存している。IMFの試算では、中国の国内固定資産への投資が1%増えるとサブサハラの輸出額は約0.6%増える。特に中国への輸出割合が高いアンゴラや南アフリカ、コンゴなど5カ国ではこの割合が0.8%に高まる。これまで中国の固定資産投資は毎年20から30%で拡大していたから、サブサハラの対中輸出は、固定資産投資だけで10%を超える伸びを享受できた。しかし、2015年の中国の固定資産投資は大幅に減速している。2015年1月から8月までの非地方部(都市部)固定資産投資は前年同期比10.9%増、これだけでも輸出伸び率が半減から3分の1に減少させる要因となっている。

 

出所:EU、米国、中国の貿易統計

対中依存度を高めたアンゴラの状況

サブサハラの輸出の9割は原油や鉄鉱石、石炭などの資源が占めている。GDPに占める輸出の割合が3割に達している。GDPの27%は資源輸出に依存している。サブサハラの輸出のうち、原油が51.1%、石炭が1.8%、鉄鉱石が2.8%、天然ガス3.8%。プラチナ1.9%を占めている。

中国経済の減速と一次産品価格の下落で打撃を受けている国が、対中輸出金額が大きいアンゴラや南アフリカ、コンゴ共和国である。表は、中国のサブサハラからの輸入上位10カ国を並べたものである。2014年には、輸入上位3カ国の南アフリカ(マイナス7.5%、アンゴラ(マイナス2.7%)、コンゴ共和国(マイナス4.1%)がいずれも輸入金額が前年を下回っている。

2015 年 9 月 10 日付のウォールストリートジャーナル紙(「中国経済減速のあおり受けるアフリカ諸国、対中関係見直しも」)は、中国経済減速の影響についてアンゴラの状況をレポートしている。

アンゴラは、人口が1,908万人(サブサハラの約2%)、GDP(名目)が844億ドル(サブサハラの約8%)、1人あたりGNIが3,940ドルの資源国である。2002年の内戦終了後、石油生産が本格化し、サブサハラでは、ナイジェリアに次ぐ石油生産国となり、将来、ナイジェリアを抜く可能性が指摘されている。石油ブームに乗り2005年から3年間で20%超の高成長を達成した。原油輸出の5割を中国に依存している。インフラ建設などに中国から多額の借金をしているが、それを石油代金で相殺している。今では「中国人なしではカネが回らない」状況にある。

同記事によれば、アンゴラでは、医薬品や穀物といった基礎的な物資の輸入代金支払いに苦しんでいる、通貨が対ドルでアンゴラの通貨クワンザは今年1月以降、対ドルで4分の1価値が下がった。さらに懸念されるのが、経済の不振が政治の安定性に影響を及ぼすことである。同記事では、「中国とより密接な経済関係を構築する一方で、アンゴラをはじめとするアフリカ諸国は政治的基盤の強化を目指し、中国の政府主導による成長モデルを追求した。だが、中国からの原油や鉄鉱石需要を見込んでいた各国は、中国は常に資源を買ってくれるわけではないことに気付きつつある。永遠に権力を握り続ける方法を教えてくれるわけではないことにも。」とサブサハラの対中関係の見直しの動きを指摘している。

 

表:中国のサブサハラ主要国からの輸入金額(2013,2014年) 単位:100万ドル、%

出所:中国貿易統計

中国型成長モデルの見直し

このWSJの記事で筆者が注目したのは、ヨハネスブルクにあるコンサルティング会社、デロイト・フロンティア・アドバイザリーで新興国市場とアフリカを担当するマネジングディレクター、マーティン・デービス氏のコメントである。マーティン・デービス氏は「中国が消費主導型の成長モデルへ向けてかじを切るなか、アフリカもかじを切る必要があることは明白だ」、「問題はその原動力をコモディティーから何に変えるかだ。中国モデルをアフリカに移植可能だと考える人がいたとすれば、その人はそもそも世間知らずだということだ」と述べている。

筆者は、2012年にマーティン・デービス氏と面談した際には、「中国経済成長が鈍化していると最近のニュースでは報道されているが、中国の対アフリカ投資および関与は少なくとも今後5年間は続く。アフリカ経済への中国の関与を強め続けているということである。」と述べて、サブサハラと中国とのウィンウィン関係をまくし立てられた経験がある。

サブサハラの資源国にとって、資源を爆食してくれる中国は、ボナンザ(幸運)であった。

ボナンザとは、スペイン語で「繁栄」、「豊かな鉱脈」と訳されているが、19世紀の前半の米国西部では「大当たり」、「思いがけない幸運」という意味に使われていた。サブサハラのチャイニーズ・ボナンザは終焉を迎えているようである。