一般財団法人 国際貿易投資研究所(ITI)

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2016/11/11 No.301荷役運搬・搬送用ロボットが主体の産業用ロボットの対米輸出(その1)(日本の輸出品–3-)

増田耕太郎
(一財)国際貿易投資研究所 客員研究員

「産業用ロボット」は、「組み立て」用、「塗装」用、「溶接」用、「搬送」用等、さまざまなタイプがある。産業用ロボット以外にも、「医療」用、「介護」用、「清掃」用、「レスキュー」用、「警備」用、「建設用」等のサービス分野のロボットがあるし、家庭、教育などの場所で活躍するロボットもある。

日本は世界有数の「ロボット大国」で、産業用ロボットの生産台数、導入状況では世界のトップレベルにある。災害救助、ホビー用などの新しい用途のロボット開発が盛んで、特に「人型」ロボットでは世界をリードしている。Robotics Business Review誌による『最も影響力が大きい世界50大ロボット企業』では、50社中日本企業は9社と米国(18社)に次いで多い。

【産業用ロボットの貿易統計分類】

“ROBOTS”を特定し分類番号を設けているのは、HS関税分類に準拠した米国の輸入統計分類(HTS)では次の3品目である。

  1. HTS84.28.90-0220 荷役運搬・搬送用ロボット(以下『搬送用ロボット』)
  2. HTS8479.50-0000  産業用ロボット(他の分類に属するものを除く)
  3. HTS8479.90-9440  産業用ロボットの部分品・付属品

HS分類における産業用ロボットの分類はHS8479.50を除くと、各種機械機器に分類する。例えば、溶接用ロボットは「溶接用機器」に、塗装用ロボットは「塗装用機器」に分類するので、HS6桁分類ではロボットだけの貿易額を知ることはできない。このため、HS6桁より詳細な分類を設けているかどうか各国の関税率表で確認するしかない(表-2中の中国の産業用ロボットの輸入状況の品目分類参照)。

【米国の対日輸入額は約3.5億ドル】

日本からの産業用ロボットの輸入額は3.5億ドルを超えている(上記3品目の合計)。輸入額が大きいのは荷役運搬機械(HS84.28項)に分類するHTS84.28.90-0220(搬送用ロボット)である。2012年のHS改正にともない新設され、日本から約2.5億ドル前後の輸入がある(図-1)。

日本製産業用ロボットは、米国輸入市場では大きなシェアを持つ、主力の搬送用ロボット(HTS84.28.90-0220)の場合、輸入額シェアの51.2%、輸入量(台数)シェアの60.0%を占める(表-1)。ただし、輸入額が1,000万ドルを超える表1の7か国中、輸入平均単価14,803ドルは中国製(5,941ドル)に次ぐ安価である。

図-1: 日本からの産業用ロボットの対米輸出単位:100万ドル

注 HTSは米国関税率表(The Harmonized Tariff Schedule of the United States Annotated)の分類番号。上位6桁はHS分類に従っている。
出所: 米国輸入統計。

表-1: 米国における搬送用ロボットの国別輸入(2015年)

注: 対象品目は、HTS84.28.90-0220 荷役運搬・搬送用ロボット
出所: 米国輸入統計より作成

【日本製産業用ロボット(HS8479.50)の輸出先は、米国・中国の2か国で約5割】

日本の産業用ロボット(HS8479.50 他に分類されるものを除く)の輸出先は、米国が最大である。2015年の輸出額(14億3,700万ドル)のうち、米国向け(3億5,850万ドル)のシェアは24.95%。次いで中国(3億5,075万ドル、24.4%)、ルクセンブルグ(2億360万ドル)、韓国(1億6,313万ドル)と続く。ただし、輸出先3位のルクセンブルグ向け輸出は最終仕向け地ではなく、その多くは欧州各国の需要先に販売されていると推測する。

なお、米国に次ぐ輸出先である中国の輸入状況をみると、日本製産業用ロボット(HS84.79.50)の輸入シェアはきわめて高い。2015年の輸入額8億483万ドルのうち、日本製のシェアは56.7%(輸入額4億5,601万ドル)と大半を占めている。数量ベースでは78.5%と圧倒的である。その主力は多機能産業用ロボット(84.79.50-10)であることが分かる(表-2)。

その2(ロボット輸出拡大の背景)に続く

参考  表-2  中国の産業用ロボットの対日輸入状況

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