フラッシュ383
2018年8月22日
 

正念場を迎えた英EU離脱交渉(その2)
-英政権、離脱の基本方針を決定-メイ首相、穏健離脱路線へ転換

 
田中 友義
(一財)国際貿易投資研究所 客員研究員

 

テレーザ・メイ首相は2019年3月30日(英国時間3月29日)のEU離脱(ブレグジット)を巡り、与党・保守党内のボリス・ジョンソン外相(当時)、デービッド・デービスEU離脱担当相(当時)ら強硬離脱派とフィリップ・ハモンド財務相ら穏健離脱派の圧力の板挟みで、内閣としての統一的な方針を決定できず、2017年6月8日の英下院議員選挙後(与党保守党議席が過半数割れ)1年以上の綱渡りの政権運営を強いられてきた。

メイ氏は去る7月6日、ロンドン郊外のチェッカーズ(首相公式別邸)の10時間近くに及んだ特別閣議で、EU離脱後もEUとの協調を重視する自らの「穏健路線」の基本方針について、閣議後の声明で「閣僚がEUとの今後の交渉について共有できる方針で合意を取り付けた」と発表した(注1)。メイ氏の提案は、「EUとの共通の規則(common rulebook)に基づく工業製品や農水産品の自由貿易圏(Free Trade Area)」の創設をEU側に求め、貿易面での緊密な繋がりを維持するというものである。ただ、この案では、英国が得意とする金融サービス分野が現在享受しているEU市場へのアクセスを失うというものである。一方、英国はEUの単一市場・関税同盟から離脱して、独自に非EU加盟国と自由貿易協定(FTA)を締結できるとしている。

交渉方針(閣議の合意事項)の主要ポイントは以下のとおりである。

(1)英国は品目によっては除外する権利を持ちつつも、農水産品を含むすべての物品に関してEUとの共通の規則を維持する。一方、サービスに関しては、英国側の規則の柔軟性を確保するために別個の取り決めを締結し、英EU間の現行水準での市場アクセスが維持できなくなることを容認する。

(2)開かれた公正な貿易に関する相互に強力なコミットメントを(EUとの)将来関係を規定する法的文書に組み込むことで、公正な貿易環境を確保する。英国は国家補助金に関するEUとの共通の規則を適用し、競争に関する協力的な取り決めを制定することをコミットする。また、環境、気候変動、厚生、雇用および消費者保護についてはこれまでの高度な規制水準を維持する。

(3)英EU間の諸合意に関して一貫性のある解釈と適用を実現するため、共同の制度的枠組みを確立する。英国が引き続いて共通の規則を適用する分野では、EUの判例法を充分に配慮しつつ、英国では英国の裁判所、EUではEU司法裁判所(CJEU)がそれぞれ判断を下すこととする。

(4)英国は、あたかも統合された一つの税関地域(combined customs territory)のように,英EU間の税関検査手続きなどを撤廃するため新たな税関円滑化取り決めの段階的導入に向け協議することを提案する。この取り決めによって、英国を仕向け地とする物品には英国の関税と貿易政策、EUを仕向け地とする物品にはEUの関税と貿易政策を適用する。

(5)この他の閣内の合意事項として、①英国は独自の貿易政策をとり、TPP11(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership:CPTTP)への加盟も検討する、②英国の裁判所の優越性を回復し、英国内でのEU司法裁判所の司法権を終了する。ただし、英国が共通の規則を適用する場合、EU司法裁判所の判例を充分に配慮する、③(英EU間の)ヒトの自由移動を終了し、英国に入国する(EU国籍者の)人数を制限することなどがある。

強硬派閣僚、相次ぎ辞任

英国の交渉方針は、工業製品や農水産品の規格・基準でEUと共通の規則を採用し、離脱後にEUと自由貿易圏を新たに創設し、貿易を極力、スムーズに続けることを目指す。EUとの協調を重視する穏健離脱派や企業が国境を越えて展開しているサプライチェーン(部品の調達・供給網)を守りたい英産業界は歓迎するものの、EUと共通の規則を採用することで、EU司法裁判所の影響力が残るとして、強硬離脱派の不満はなお渦巻く。EU側の「いいとこどり」(cherry picking)との主張に配慮して、英国の最重要産業である金融サービス分野では、EUと現状通りの市場アクセスができなくなることを受け入れたが、英金融業界の失望感は強い。

一方、完全に離脱して、英国の主権をEUから取り戻すことを求める強硬離脱派にも配慮した合意内容となっている。英国はEUの単一市場・関税同盟から脱退して、独自に他国と自由貿易協定を締結すると主張しているほか、2016年6月24日の国民投票で離脱を支持した民意の背景にある(他のEU加盟国からの)移民の規制については「人の移動の自由を終わらせる」と明記している。

特別閣議で一度は同意したものの、デービスEU離脱担当相は7月8日、辞任文書の中で「政府の方針は英国の交渉の立場を弱らせるものだ」「EU側にあまりにも安易に妥協するもので、危険極まりない」などと述べて突然辞任した(後任ドミニク・ラーブ住宅担当閣外相)。動向が注目されていたジョンソン外相も7月9日、辞任文書の中で「われわれはEUの植民地のようになろうとしている。主権の回復にはつながらない」「ブレグジットは好機と希望であるはずだが、夢はついえつつある」として辞任した(後任ジェレミー・ハント保健・社会福祉相)(注2)。

EUからの完全な離脱(単一市場・関税同盟)を求める強硬離脱派2閣僚の相次ぐ辞任で、与党・保守党の強硬離脱派が「(EUとの)下手な合意より決裂の方がまし。(メイ氏の方針はまずい)」などと一段と勢い付いている。与党内ではEUと決別するという公約をメイ氏が反故にしたとの批判が根強く、不信任投票実施を求める声が強まる可能性もある。メイ氏は7月9日、英下院で「移動の自由を制限しながら雇用や経済を守る最善の提案だ」と述べ、穏健離脱の基本方針を撤回しない考えを強調した。今後も政権内の内紛が続けばEUとの離脱交渉に影響が及ぶことは必至である。本年10月までの合意を目指し交渉が時間切れに終わるようなことになれば、経済が大混乱する「無秩序な離脱」が現実味を帯びる。メイ氏が柔軟離脱路線を継続できるのかどうか、いよいよ正念場を迎えようとしている。

英政府、離脱基本方針「白書」を公表

英国政府は7月12日、EU離脱(ブレグジット)方針を明確にした100ページの「英国とEUとの間の将来関係」に関する「白書」を公表した(注3)。メイ首相は英国の主権回復を重視する強硬離脱路線から転換し、EUとの貿易関係の維持に力点を置く穏健離脱姿勢を明確にした。2016年6月24日の国民投票後、政権としての統一した方針が定まらないまま、2年が過ぎ、2019年3月29日(欧州時間3月30日)の離脱時期が迫る中、遅きに失した感が強い。

白書の内容は、先のチェッカーズ特別閣議の合意事項を踏まえたものである。基本理念として、国民投票で示された民意を尊重し、EU法の直接効果や優先性の原則の終了、移民規制など人の自由移動の終了、EU単一市場・関税同盟からの離脱、独自の貿易政策による他国との自由貿易協定の締結など、英国の主権の回復を謳っている。ここには、辞任した閣僚のデービス氏やジョンソン氏ら離脱強硬派が強く反対する理由は見当たらない。

基本理念とは、あくまで建前である。では、強硬離脱派は、白書で示された方針のどの部分を問題ありとしているのか。最大の対立点の一つが、EU単一市場・関税同盟から撤退した後に創設する「EUと共通の規則に基づく工業製品・農水産品の自由貿易圏」をEU側に提案していることである。英国が物品の規格・基準でEUと共通の規則を採用すれば、EU司法裁判所の影響力が残るので、離脱が中途半端となる。これでは、英国内でのEU司法裁判所の司法権を終了し、英国の裁判所の優越性を回復させることができないという。

もう一つの問題点として、離脱後の英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境問題がある。英国とEUはこの地域の国境における通関措置を含む国境管理の復活を回避し、「ベルファスト合意」(注4)を維持することでは合意しているものの、EUは北アイルランドのEU単一市場との一体性を維持するための「特別規定(back-stop provision)」が認められなければ移行期間を含む離脱協定に合意することはできないとしている。このことは、北アイルランドを関税同盟に残留させてEU法の管轄下に置くことを意味する。離脱強硬派がグレート・ブレトン島(英国本島)とアイルランド島(英領アイルランド)をアイリッシュ海で分断するものだと強く反発する。いずれにしても、10月の交渉期限までにアイルランド国境問題で合意できない場合、「無秩序な離脱」が現実味を帯びてくる。

ところで、英国の産業界は、白書をどのように評価しているのだろうか。英国産業連盟(CBI)はEUとの自由貿易圏の創設を通して、EUとの関係を継続する政府の方針を歓迎する声明を発している。これは、離脱後も英国とEUの工業製品などの貿易は煩雑な通関手続きなどを不要とし、自動車など英国と欧州をまたぐ複雑なサプライチェーン(部品調達・供給網)を維持できるからである。英国政府の狙いが、単なる自由貿易協定(FTA)ではなく、「あたかも統合された一つの税関地域」として、「関税ゼロで税関手続き不要」という(実質的に関税同盟に近い)恩恵を享受し続けたいことにあるからである。

他方、金融サービス分野では、金融規制での英国の主権回復を優先し、EUの規制に縛られず独自色を重視する。英金融業界は、独自路線は英国とEUとのつながりを薄め、英金融業界の打撃になるとの声明を出している。

英金融街シティー・オブ・ロンドンや金融業界シティーUKは現行の「単一パスポート制度」(注5)の代わりに、英国とEUがそれぞれ自由な市場アクセス権を得られる「相互承認」制度をEU側に提案すべきだと主張していたが、「白書は英国の金融業界と関連する専門サービスセクターにとって本当に痛手だ」「相互承認制度が実現すれば、既存の顧客サービスを維持できたのに、政府が断念したのは悔やまれるし、不満に思う」と述べている(注6)。

 

表1 「EUとの将来関係に関する白書」の主要点

主要項目

内容

ブレグジットの基本理念

  • 国民投票の結果を尊重する
  • 英国は法律、国境、通貨の管理を回復する

経済連携

  • EUの関税同盟、単一市場から離脱する
  • 農水産品を含む物品の「自由貿易圏」を創設し、EUとの共通規則を適用する
  • 「通関円滑化取り決め」(Facilitated Customs Arrangement :FCA)を段階的に導入し、ひとつの統合された税関地域(combined customs territory)のように英EU間の税関手続きを撤廃する
  • サービス、投資、デジタル分野は現在と同等の市場アクセスを相互に得ることはなく、新しい取り決めを結ぶ
  • 金融サービスは「EUパスポート制度」を維持せず、市場アクセスに関し二国間の新しい協定を結ぶ。英国、EUは独自の規制権限を確保する
  • 2020年末まで英国市民、EU市民は現在と同様の条件で移動、居住、就労できる
  • 英国は国内的な移民規制を決定し、移動の自由を終了する
  • 「ベルファスト合意」(平和的プロセス)を順守し、英領北アイルランドとアイルランド国境での厳しい管理を回避する
  • 英国は他国と野心的な二国間協定を追求できるようになり、CPTPP参加を検討する

安全保障連携

  • 英国、EUの市民の安全を守るために新しい安全保障協力で連携を維持する
    -刑事司法諸機関への英国の参加(Europol, Eurojustなど)
    -外交政策、防衛、開発協力(グローバルな挑戦への対応、防衛産業力の強化など)
    -より広範な安全保障上の課題への対応(亡命者・不法移民、サイバー・セキュリティ、テロへの対応など)

横断的分野など

  • 企業活動を支援するため個人データの自由移転の継続性を含めたデータ保護を可能にする
  • 科学、技術革新、文化、教育、防衛研究開発、宇宙などの分野で協力協定を結ぶ

(出所)英国政府「白書」(2018/07/12)などから作成

 

欧州委、無秩序離脱への準備を要請

欧州委員会は7月19日、実質的な交渉期限とする(次の欧州首脳会議が開催される)10月まで約3ヵ月と残された時間が少なくなるなか、それまでに「秩序ある離脱に向けた合意が形成されるか、いまだに不確実だ」として、2019年3月30日以降、英国はEUの「第3国」となり、EU・英国の政府、企業、市民への影響が及ぶとして、「あらゆる結果」への準備加速を求める政策文書を採択した(注7)。具体的には、EU・英国間の国境管理の復活、英国政府が発行したライセンス・証明書のなどの効力、個人データ保護に関わる規則、および部門特有の問題など、多様な影響が想定されると警鐘を鳴らす。欧州委員会がEU・英国間の「合意なし離脱」のシナリオを明示した文書を採択し、欧州の政府、企業などに対応を求めるのは今回が初めてのことである。

政策文書は欧州議会、欧州理事会(欧州首脳会議)、EU理事会、欧州中央銀行、欧州経済社会委員会、地域委員会、欧州投資銀行のEU諸機関に宛てたものであるが、離脱協定が批准されるかどうか不確実だとして、離脱日に向けて、EU諸機関だけでなく、EU加盟国政府、企業、市民を含む関係者全てがあらゆるシナリオを前提に、周到な準備をそれまでに完了しておく必要があると呼び掛けている。

文書では「想定される主なシナリオ」として、①離脱日までに離脱協定の批准を終える、②離脱協定の批准が間に合わず、英EU間の「合意なし」の離脱を迎えるとの2つを提示している(表2参照)。

第1のシナリオは、10月までに離脱協定案と、離脱後の通商協定などEU・英国の将来関係の大枠を定める政治宣言に合意し、離脱日までに批准を終えるというシナリオである。このシナリオでは、2021年1月1日(英国時間2020年12月31日)まで移行期間が認められるが、英国はEU法の管轄下で単一市場・関税同盟の恩恵を享受できるものの、意思決定に関与できず、EU諸機関への参加は認められない。

第2のシナリオは、10月までに合意形成ができず、「合意なし」(no deal )あるいは「崖っぷち」「瀬戸際」(cliff-edge)などと称される離脱、いわゆる無秩序な離脱を意味する。EUは離脱協定の内容全てで英国と合意する必要があると主張しており、一部だけの「部分合意」は受け入れないというのが基本的立場である。もし、全てで合意できなければ、移行期間も白紙に戻されるとしている。合意なしの離脱の影響として、英国との国境での税関手続きや衛生・検疫検査の復活に伴う物流の大幅な遅れ、航空など輸送の混乱などが指摘されている。したがって、例えば、自動車産業や医療機器産業、運輸サービスなどに対して、英国で取得した免許や許認可が離脱後はEU域内で無効になる可能性があるとして、他の加盟国で再取得するなど、対応を急ぐよう呼びかけている。

 

表2 想定される2つのシナリオ

シナリオ1

シナリオ2

2019年3月30日以前に離脱協定が批准され、同日に施行された場合、EU法は2021年1月1日、即ち、離脱協定で規定される移行期間の後、英国に(国内での)適用を止める

離脱協定が合意されない場合、あるいは同協定が両当事者によって期限通り批准されない場合、移行期間は無くなり、2019年3月30日にEU法は英国に(国内での)適用を止める(無協定あるいは瀬戸際シナリオと称される離脱)

  • 英国は「第3国」になる
  • EU法の英国および同国内での適用の継続:総じて、EU法は移行期間中引き続いて適用される
  • 諸機関からの離脱:英国は2019年3月30日以降EUの意思決定、EU機関、EU組織体の統治に参加しない
  • 移行期間の管理:EU機関が引き続いて英国におけるEU法の監督・執行を行う
  • 将来関係の交渉:EUは英国と将来関係協定の交渉を行うが、移行期間の終了時に協定が纏まり(合意、署名、批准)、2021年1月1日から適用されることが理想的である
  • 英国は「第3国」となり、EU法は英国および同国内で適用を止める
  • 市民:英国におけるEU市民、EUにおける英国市民のためにまとまった特別の協定はない
  • 国境問題:EUは「第3国」として英国との国境で規則と関税を適用する必要がある。これは税関検査、衛生植物防疫基準、EU規格適格証明を含むものである。英国とEU間の輸送は極度に影響を受ける。国境での通関、衛生植物検疫管理は、とくに、陸上輸送や港湾での様々な困難を伴う状況などで大幅な遅延を引き起こす
  • 貿易・規制問題:英国が「第3国」となるので、WTOの規則を含むEUとの関係は一般的な国際公法で統治される。とくに、厳しく規制されている部門では、市場統合の現行水準と比較して、相当の障害となるだろう
  • 英国との交渉:合意なしの離脱に至る状況次第では、EUは英国と「第3国」として交渉入りを要望することもある
  • EU資金:英国法人はEU助成金の受け取りやEU調達市場への参加のためのEU法人としての資格を失う。別に法的規定がないかぎり、英国からの助成金志願あるいは入札応募は拒否できる

(出所)European Commission Communicationから作成

 

EU側、英提案に難色、再協議へ

英国の新提案を受けて、英EU離脱交渉が7月26日、ブリュッセルで開かれたが、EU側がモノの貿易に限定した「自由貿易圏」を作る英国側の提案に難色を示した。交渉で、最大の障害になっている問題は、北アイルランドと国境を接しているアイルランドとの国境管理をどうするかということである。英EUは離脱後も厳しい国境管理をしないことで一致しているが、その具体化する方法を巡り、激しく対立している。

ドナルド・トゥスク欧州理事会常任議長は「アイルランド国境問題の解決がない限り、交渉の進展はない」と述べ、ミシェル・バルニエEU首席交渉官もまた「アイルランド問題を巡って深刻な相違が残っている」と警鐘を鳴らす。英国とEUは今年3月19日、英国が国境問題の解決策が示せないまま交渉が時間切れを迎えた場合には、北アイルランドをEUに実質的に残留させることで一致していた。英国内にEUとの「国境」が設けられる格好となるだけに、離脱強硬派を中心に「英国の分断につながる」と反発も強かったが、メイ首相が交渉決裂の回避のため受け入れた経緯がある。

バルニエ氏は「英側の提案は、関税同盟の保全、EU共通通商政策、規制政策、財政収入をリスクにさらすことなしに実行できるのかどうか疑問である」と指摘、英国のラーブEU離脱担当相はEU側の懸念に応えるための具体的な提案を示すと応じた。交渉は夏休み中の8月21日に再開されるが、交渉がまとまるかどうか予断を許さない状況である。

英国政府は8月23日に合意がないままの無秩序な離脱になった場合に備え、国民や企業に向けた注意事項を発表する予定を明らかにした。いよいよ、合意なしの無秩序離脱もやむなしとした最後の切羽詰まった交渉局面を迎えている。

 

表3 英EU離脱交渉の行程予想

時期

主要事項

2017年3月29日

英国がEU離脱を正式に通告

6~11月

離脱交渉第1ラウンド開始(6月19日)、第2~第6ラウンド交渉(7月17日、8月28日、9月25日、10月9日、11月9~10日)

12月8日

第1段階交渉の離脱条件で合意・第2段階交渉への移行勧告
合意のポイント:

  • 在英EU市民・在EU英国市民の権利保護
  • 英国の対EU財政支出や債務の清算
  • 北アイルランド国境問題への対応

12月15日

EU首脳会議、第2段階の交渉への移行を承認

2018年2~3月

第7~第10ラウンド交渉(2月6~9月、2月19~20日、2月26~27日、3月5~7日)

3月19日

 

2020年末までの「移行期間」で暫定合意

  • 移行期間中は英国をEU加盟国と同等に扱う
  • 北アイルランド国境問題が未解決の場合、離脱後同地域だけを関税同盟に残留させる

4~6月

第11~第15ラウンド交渉(4月16~18日、5月2~4日、5月22~24日、6月5~8日、6月19~20日)

6月7日

 

英国、2021年末まで移行期間を延長することを提案:

  • 北アイルランド国境問題が移行期間中に解決できない場合、2021年末まで英国が関税同盟に残留する
  • EU側、英提案を拒否

7月6日

英内閣、離脱交渉方針で合意

7月12日

英国がEU離脱交渉方針「白書」を公表

7月19日
8月21日

離脱後の通商関係など、英・EU将来関係の大枠について交渉開始
交渉再協議

10月
10月18日

離脱協定に実質合意する期限
欧州首脳会議(欧州理事会)

2019年3月29日

正式離脱日

  • 離脱協定合意の場合、移行期間の開始
  • 離脱協定合意失敗の場合、移行期間なしの離脱

2020年12月31日

移行期間終了

(出所)筆者作成による

 

注・参考資料
1.ジェトロ「EUとの将来関係に関する交渉方針を発表(英国)」(ビジネス短信、2018/07/10) GOV.UK,Government statement following Cabinet away day at Chequers(Policy paper Published 6July2018)
2.Reuters(2018/07/10)、日本経済新聞(2018/07/10)
3.HM Government、The future relationship between the United Kingdom and the European Union(Cm 9593)
4.宗派対立による激しい北アイルランド紛争の平和的解決のため、英国、アイルランド両政府は1998年4月、北アイルランド・ベルファストにおいて、和平合意を結んだ。EUの下で社会・経済の一体化進んできたが、英国のEU離脱で国境管理は復活すれば、再び不安定になるリスクが高まる。
5.EU加盟国には、EUのいずれかの加盟国で免許を交付されれば、EU域内で自由に金融サービスが展開できる。英国は白書ではこの制度の破棄もやむを得ないとしている。
6.Reuters(2018 /07/13)
7.European Commission, Communication from the Commission to the European Parliament ,the European Couuncil,the Council,the European Central Bank,the European Economic and Social Committee,the Committee of the Regions and the European Investment Bank;preparing for the withdrawal of the United Kingdom from the European Union on30March2019(Brussels,19.7.2018COM(2018)556final)