フラッシュ458
2020年3月27日
 

ドイツ連邦議会 コロナ禍対策のための大規模補正予算を決定

 
伊﨑 捷治
(一財)国際貿易投資研究所 客員研究員

 

ドイツ連邦議会は3月25日、新型コロナ・ウイルスの感染拡大による経済への影響に対処するため政府が提出した2020年予算に対する補正予算および企業に対する救済策をほぼ全党の賛成で可決した。

それによると連邦予算による追加的支出は1,225億ユーロと、過去最大の規模となる。2020年の当初予算額は3,620億ユーロであった。

一方で、経済活動の低下による税収の減少を325億ユーロと見込んでいる。この結果、約1,560億ユーロの借り入れが必要になる。

ドイツは基本法に債務抑制条項(債務ブレーキ)を設けており、原則として収支を均衡させなければならないが、自然災害等に際してはGDPの0.35%の上限を超えることが認められている。しかし、今回の補正予算は災害時の借り入れの上限(約1,000憶ユーロ)を大幅に超えることになり、その解除も必要になる。

このため、連邦参議院の同意も必要であるが、同院はすでに実質的同意を可決している。

ドイツはここ数年、毎年黒字均衡予算で、累積債務の削減も行ってきた。そうした要因もあって、ドイツの国債利率はマイナス3%あまりとなっている。

以下は3月25日に議会を通過した補正予算および経済安定化基金の他これまでに発表されている主な対策の概要である。

1.2020年補正予算

  • 企業等に対する支援措置:1,225億ユーロ
    • 融資を受けられない小規模企業、自営業者、音楽家、写真家、療法士、介護士に対する直接補助
    •     総額:500憶ユーロ
          期間:3か月
          金額:従業員数に応じて9,000~15,000ユーロ
    • 医療機関の強化:30億ユーロ
    • 緊急対応のための予備費:550億ユーロ
  • 税収減:335億ユーロ
  • 借入額合計:1,560憶ユーロ
  • 償還:2023年以降の予算から19年に分けて毎年予算の5%ずつ償還。

2.経済安定化基金の設置

打撃を受けた中規模企業・大企業に対する6,000憶ユーロの「経済安定化基金」を設置して流動性の確保を支援する。

  • 対象:従業員数250人以上など一定規模以上の企業。(重要な企業の場合はそれ以下も対象とする)
  • 復興信用公庫(KfW)特別事業のための資金調達:1,000憶ユーロ。
  • 政府による信用保証(企業の流動性確保):4,000憶ユーロ
  • 大企業の資本強化(必要な場合は国有化も):1,000憶ユーロ
        危機の終息後は民間に戻す。
  • 納税期限の延長

3.コロナ禍対策にかかわる連邦政府に対する権限の付与

これにより、連邦政府は「国家的な緊急性を持つエピデミックな情勢」を宣言し、以下の対策を実施できるようになった。

  • 連邦保健大臣は連邦参議院の同意なくして医薬品、医療機器、関係資材および防護装備品に関する措置を実施することができる。
  • ロベルト・コッホ(疾病監視・予防)研究所は「国家的な緊急性を持つエピデミックな情勢」がある場合、州、連邦その他関係機関の協力をコーディネートできる。
  • 連邦保健相は国境を越える旅行を規制することができる。
  • 連邦保健相は病院建設の認可手続きを迅速化することができる。
  • 病院がコロナ禍に対して3月16日から9月30日までの期間にベッドを開けておく場合、1日当たり一律560ユーロの支給を受けることができる。
  • 新たに集中治療用のベッドを設ける場合、1ベッド当たり5万ユーロの支給を受けることができる。
  • 4月1日から6月30日までの期間について、防護用の装備など追加的コストに対して患者一人当たり50ユーロの支給を受けることができる。期間の延長および金額の引上げが可能。

4.家賃

借り手の収入減少で家賃を払えなくなった場合、家主側からの解約はできない。

  • 対象期間はとりあえず4月1日から9月30日まで。簡素な手続きとする。
  • 借り手の支払い義務は消えない。

5.雇用の維持(労働時間短縮手当の支給)

受注の減少により労働時間が短縮され、賃金が削減される場合、削減された賃金の60%を連邦労働庁が支給する。企業は社会保険料(雇用主分および被雇用者分)の補填を受けることができる。

  • 対象:従業員の10%以上が賃金を削減される企業(従来は30%以上)
        労働者派遣会社も対象。
  • 総額:政府の想定では215万件で約100憶5,000万ユーロ。
  • 参考:金属・電機産業では労使協定により雇用主負担で時間短縮手当を80%に引き上げる。

6.社会保障関係

  • ハルツIV(失業手当、生活保護)の支給について、本人の資産額および家賃の審査を半年間中止する。
  • 政府の試算では対象は120万人、100億ユーロの政府負担増。
  • 収入が途絶えた家族に対して子ども割増の条件緩和。査定の基準を過去6か月の所得から前月の所得とする。
  • 子どもの世話のために所得が途絶えた親に対しては支援金を支給する。

7.その他

  • 倒産法の緩和
  • 重要な産業における労働時間法の緩和
  • 連邦議会の緊急対応
    • コロナ禍により出席できない議員が出た場合も対応できるよう、連邦議会の可決に要する議員の出席率を従来の半分以上から4分の1以上とする。(9月30日まで)