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フラッシュ171 |
2013年8月13日
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東アジアのサプライチェーン網で台頭する韓国・台湾
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(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹 高橋 俊樹 |
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目次
(2/5ページ) 2. ACFTAの効果が見られる中国とインドネシア・マレーシア・タイとの域内貿易(1) ACFTA効果を確認できない輸出入総額の動き 表1は、ACFTA5カ国の1999-2005年、2005-2011年の期間における輸出の年平均成長率を求めたものである。期間を2005年の前と後に分けた理由は、2005年がACFTAの物品貿易協定の発効年であり、2005年以降にACFTAの関税削減効果が現れるからである。 同表のように、1999-2005年の期間における中国の輸出総額の平均成長率は25.5%となり、インドネシア、マレーシア、タイの2倍以上の伸び率であった。2005-2011年には16.4%に低下したものの、依然としてこれらのASEAN3カ国よりも成長率が高い。 中国の財別輸出では、中間財と最終財の平均成長率が1999-2005年では20%台、2005-2011年には10%台となっており、両期間とも相対的に他のASEAN3カ国よりも高い。しかし、素材では1999-2005年の平均成長率は14.9%であったが、2005-2011年には2%に大きく減少し、インドネシア、マレーシア、タイよりも成長率を低下させている。 表1 ACFTA5ヵ国の輸出の年平均成長率(BEC分類、%)
インドネシアの輸出では、1999-2005年よりも、後半の2005-2011年の平均成長率の方が高く、中国の成長率に近い15.5%であった。特に素材の輸出においては、2005-2011年の平均成長率が22.4%と高かった。まさに、素材がインドネシアの輸出を大きく引っ張っている。しかしながら、インドネシアは素材だけの輸出を伸ばしているのではない。後半の2005-2011年には、中間財の平均成長率も14.2%に達しており、マレーシアやタイの伸びを上回っている。 マレーシアにおいては、輸出総額では2005年を挟んだ両期間とも9%近い平均成長率を達している。気になる動きとしては、マレーシアの最終財の輸出における2005-2011年の平均成長率が3.7%であり、1999-2005年の9.6%から大きく減速していることである。最近の2011年だけを見ても、マレーシアの最終財における前年からの伸びが4.6%増と他の国よりも相対的に低く、素材や中間財の輸出は堅調であるが、やや輸出に変化が現れていると思われる。 タイでは、2005年を挟んだ両期間とも、輸出総額は12%前後の高い平均成長率を達成している。タイでは中間財と最終財において、後半の2005年以降の平均成長率がそれぞれ13.7%、10.7%とそれ以前よりも高くなっている。 また、注目されるのは、タイにおける素材の輸出の平均成長率が高いことである。2005-2011年には17.8%となり、インドネシアに迫るほどの高成長率であった。タイの素材輸出のほとんどは産業用資材(原料)であるが、その2005-2011年における平均成長率は21.2%にも達した ACFTAは2005年発効であるので、1999-2005年と2005-2011年の両期間を比較して、後者の平均成長率が高ければACFTAの関税削減効果の影響を示唆するものと考えられる。しかし、リーマンショックが2008年に発生したため、それ以降の世界的な輸出入額の激減してしまった。これにより、ACFTAの効果はACFTA5カ国の輸出動向には明確に現れていない。 それでも、インドネシアとタイの輸出においては、1999-2005年よりも2005-2011年の平均成長率の方がやや上回っており、リーマンショックを考慮すると、少なくともこの2カ国の輸出ではACFTAの効果をある程度は示唆しているものと思われる。 表2 ACFTA5ヵ国の輸入の年平均成長率(BEC分類、%)
一方、表2は輸入面からACFTA5カ国の平均成長率を見たものである。2005-2011年の中国における輸入総額の年平均成長率は17.5%であったが、1999-2005年の25.9%よりも低下した。中国の場合は、素材、中間財、最終財の3分野とも2005-2011年の平均成長率はそれ以前よりも低下した。 しかし、中国の素材の輸入においては、2005-2011年には低下したといっても依然として平均成長率は28.0%という高水準にある(1999-2005年では40.8%)。 逆にインドネシアの輸入総額は、両期間において、2005年以前の15.7%から2005年以後には20.6%に上昇した。このインドネシアの拡大は、最終財の平均成長率が2005-2011年には24.9%とそれ以前の期間よりも10%以上も高まったことが背景にある。同時に、輸入金額が大きい中間財の平均成長率も、16.4%から20.6%に上昇していることも大きい。 タイにおける輸入の平均成長率は、2005-2011年では11.7%と1999-2005年の15.3%よりも低下している。マレーシアにおいては、タイよりも2005年以降の成長率が低く、8.6%であった。マレーシアは輸出でもそうであったが、輸入においても中国、インドネシア、タイと比較すると、平均成長率が低いという特徴がある。これは、これらの国と比較すると、経済の成熟化が進んでいるためと思われる。 したがって、リーマンショックの影響もあり、2005年を挟んだ期間における輸入額の成長率という面では、ACFTAの効果を示唆しているのは、5カ国の中でインドネシアだけということになる。 (2)高い域内貿易の伸びでACFTA効果を確認 ACFTAの経済効果をより正確に見るためには、2005年を挟んだ輸出入総額の成長率を見るだけでなく、インドネシア、マレーシア、タイにおける「世界との輸出入」と「中国との輸出入」との伸びを比較する必要がある。なぜならば、もしも、2005年以降の「マレーシアの世界との輸出入」よりも、「マレーシアの中国との輸出入」の成長率が高い場合は、ACFTAの効果が貿易に現れている可能性があるからだ。 図5 ACFTA主要国の輸出の2005年-2011年平均成長率
図6 ACFTA主要国の輸入の2005年-2011年平均成長率
図5と図6のように、インドネシアから中国への輸出の2005-2011年における年平均成長率は22.9%、インドネシアの中国からの輸入は28.4%であった。インドネシアの世界との輸出入の年平均成長率は、それぞれ15.5%と20.6%であった。したがって、インドネシアにおいては、明らかに対世界よりも中国との2005年以降の貿易が拡大している。 マレーシアの中国との輸出入における2005-2011年の年平均成長率は、21.6%と11.1%であり、対世界の8.3%と8.6%を上回った。また、タイの中国との輸出入の平均成長率は、19.1%と18.3%であり、対世界の12.3%と11.7%を上回った。 したがって、インドネシア、マレーシア、タイの2005-2011年における輸出入において、世界よりも中国との輸出入の成長率が高いということは、ACFTAを活用した中国との貿易が世界との貿易よりも拡大していることを意味する。 ACFTAの関税削減スケジュールを見てみると、2012年までに多くの品目で自由化を行ったのは、中国とASEAN先行6カ国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、シンガポール)である。CLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)の関税自由化はこれからである。 すなわち、本稿で取り上げているASEAN5カ国の中で、2005年~2011年までのインドネシア、マレーシア、タイの中国との輸出入動向を見れば、ある程度のACFTAの効果を確認することができると考えられる。ACFTAの物品貿易協定が発効した2005年以降、中国とインドネシア・マレーシア・タイとの間の輸出入は、それ以外の国との貿易よりも拡大の傾向が見られるので、ACFTAの効果を示唆する結果になっている。 |
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