フラッシュ185
2014年4月24日
 

アフリカ消費市場展望(2)
~スパザショップを攻略せよ~

 
(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹
大木 博巳
 

サブサハラの消費市場において、昔ながらの市場など非組織的小売業は、メーカーや卸売業者にとって重要なマーケティングチャネルである。非組織的小売業とは、①公共のオープンスペースで商売を行う業者(露店商)、②キャラバン、小型トラック、自転車、稼働コンテナ、手押し車/滑車等を使った移動取引(行商人)、③固定されたコンテナ、④ノミの市、手工芸品マーケット、専門品市場、⑤大規模なイベントで商売を行う業者(定期市、季節ごとに行われる市場、ナイトマーケット)それに⑥スパザショップなどが挙げられる。これらの非組織的小売業は、正確な店舗数や市場規模のデータを得るのは困難であるため、インフォーマルセクター(非公式経済)の重要な一部を形成している。

例えば、南アフリカでは、行商人、スパザショップ、潜り酒場、その他の非公式小売業者は2004年で、南アフリカ全土に75万人(推定)、小売売上高は年間300億ランド、うち食品は単独で170億ランドを占めている(南アフリカ大学市場調査研究所調べ)。南アフリカの非組織的小売業の中で最も重要なのが、南アフリカの小売販売の10%を占めるスパザショップである。

『スパザ(Spaza)』はズールー語で『隠された』という意味である。黒人が商売を行うことが制限されていたアパルトヘイトの時代に登場した。アパルトヘイトの時代には、当局の取締りを逃れるため、これらの店舗の多くが自宅の敷地内で開業された。1991年に、スパザショップは合法化されたが、今日では、スパザショップの店主は、迫害の懸念よりも経済的な必要性から居住地に店を構えている。

スパザショップで販売される商品は、ソフトドリンク、タバコ、パラフィン(家庭ストーブ用石油)とキャンドル、トウモロコシ、アルコール飲料、パン、砂糖など生活必需品が主である。スパザショップの利用者は、誰でも知っている有名ブランド商品を好んで選択し、ノーブランドや二流ブランドの商品には消極的である。理由は、低所得層は豊かでないがゆえに消費に失敗は許されず、ブランド品に品質面で絶対的な信頼を置いている。

スパザショップで販売している品物の価格は大手スーパーと比べて割高である。スパザショップのオーナーの77%は、キャッシュアンドキャリー(現金持ち帰り制店舗)などの卸売業者から直接商品を購入し、薄利をのせて販売している。それでもスパザショップを利用するのは、交通費を払って遠くのスーパーマーケットに行くよりは近くのスパザショップで買ったほうが割安になる。いわゆるBOPペナルティが発生しているからである。

スパザショップでカード支払が可能に

筆者は、2011年に南アフリカのヨハネスブルグ郊外にある旧黒人居住区、ソウェットを訪ねたことがある。300万人の人口を抱えながら、商業的な活気は感じられず、住宅街が延々と一面に広がっている静かな所であった。街角には、スパザショップが店を開き、ソウェットでの生活を支えていることがわかる。しかし、2000年代前半になって南アフリカの大手小売企業が、ソウェットの消費市場に本格的に参入し始めた。関係者によると2004年頃に地場の大手スーパーマーケットの幹部が、ソウェット詣でし始め、2005年以降、大規模なショッピングモールが開業した。1994年に開業したドブソンビルショッピングセンターを加えて6のモールが営業している。

このうち最大規模のマポニャモール(2007年営業開始)は百貨店ウオールワースと大型スーパーマーケットPick ‘n Payをはさんで170の店舗が並んでいる。その姿はアメリカのショッピングモールそのものである。訪れたのが月曜日の昼間という時間帯であったが、モール内はかなりの人で賑わっていたが、その99%は黒人の中間層である。建物がアメリカと似ているだけではなく、スーパーでの買い物は大型ショッピングカートの大量の食品を詰め込む(バルク買い)、自家用車に詰め込むという生活スタイル自体はアメリカンスタイルそのものである。まさに、南カリフォルニアにいるような錯覚を覚えた。

ショッピングモールの波が旧黒人居住区に押し寄せてはいるが、大多数の黒人はスパザショップが買い物の場所であることに変わりはない。むしろ、低所得層市場の販売拠点としての重要性が高まっている。第1に外国人(ソマリア人とパキスタン人が大半)がスパザショップの経営に乗り出して、外国人が経営する店が急ピッチで市場を席巻している。南アフリカ人の店舗オーナー達がお互いを競争相手とみなし、またお互いを信用しないためにバルク買いのためのパートナーシップを結ぶのを渋る傾向があるのに対し、外国人オーナーは共同で安く大量購入し、安いマージンをのせた価格で販売している。あるソマリア人グループは、安価な衣類をコンテナ単位で中国から直接仕入れている。ダーバン港にコンテナが到着すると、スピードは遅いが料金が安い鉄道を用いてヨハネスブルグに運ぶ。衣類は生ものではないので、短時間輸送という時間的制約がない。このため、より低価格だが、信頼性に乏しい鉄道輸送という選択肢を利用できる。ヨハネスブルグまでのコンテナ輸送費用を含む合計購入価格に対する出資金額に基づき、グループの間で平等に貨物を分配する。

第2は、南アの中堅通信事業者のBlue Label TelecomsとMasterCardが提携して旧黒人居住区や地方の数千に上るスパザショップなどの小規模小売業者に対して、クレジットカードによる販売を受け入れることを発表した。クレジットカード払いによって売上の増加が見込まれるとともに、危険でコストがかかる現金決済のリスクが軽減される。

スパザショップでは、すでに、ネスレやユニリーバ、P&Gの製品が定番品として店頭に並び、コカ・コーラや大手ビール醸造会社のSABミラーがスパザショップに直接配達している。日本企業ではパイロットが、ソウェットで挑戦している。アフリカのボリュームゾーン市場で勝ち残るには、まず、スパザショップを攻略することから始まる。

次回

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