フラッシュ188
2014年5月2日
 

アフリカ消費市場展望 (4)
アフリカ市場にウォルマートの旗がはためく日

 
(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹
大木 博巳
 

マスマート(Massmart)は1990年に、南アフリカで設立されたディスカウント・スーパーである。ブランド商品を大量に購入して廉価で現金販売するMAKROを創業した。その後、同業他社を吸収買収することにより業態を拡大させ、Game、Builder’s Warehouse、CBWなどのブランドを所有している。消費財の販売企業としてはアフリカ第3位の大手であり、 一般家庭用雑貨、酒類、日曜大工器具の小売店、基本食料品の卸売店としては最大である。2000年にヨハネスブルグ株式市場に上場している。2011年6月に小売世界最大手の米ウォルマート(Wal-Mart)が、マスマートの株式51%を24億ドルで買収した。マスマートがグローバルパートナーを必要としていたところに、南アフリカでパートナーを探し始めていたウォルマートと出合い、株式の過半数を譲渡した。マスマートの買収で、ウォルマートは、アフリカ大陸進出を果たした。

マスマートの事業は4部門に分けられる。

マスディスカウンターズ(Massdiscounters)。2つの小売業態 GameとDionWiredを展開している。Gameは、日用雑貨と家庭用、レジャー用、業務用保存食のディスカウント小売店で、南アフリカ全域とサハラ以南アフリカの12の大都市で営業している。マスマートがアフリカ大陸への事業展開を図る際に利用するブランドはGameである。(サブサハラ・アフリカに100超の店舗)DionWiredは、中~高所得層の消費者をターゲットとする南アフリカのエレクトロニクス・機器専門店である。DionWiredの店舗は、全て南アフリカ国内にある。

マスウェアハウス(Masswarehouses)。卸売形態で商品を大量にまとめて販売している。顧客は、一般客、独立系小売店、ホテル関係者、貿易業者である。南アフリカ国内だけで展開している。Makroブランドで16のwarehouse店舗を経営している。これらの店舗は南アフリカ大都市の中心街にあり、食品、酒類、日用雑貨を小売業者、卸売業者に販売している。

マスビルド(Massbuild)。次の3つの補完的ブランドを運営している。まず、Builders Warehouseは大都市圏で大型DIYおよびホームインプルーブメント用品店を展開している。次に、Builders Expressは、住宅街にある小規模なホームインプルーブメント用品およびガーデニング用品のチェーン、そしてBuilders Trade Depotは、大都市周辺および都市圏の工業地帯にある建築業者向けのアウトレットである。南部アフリカ地域でいくつかのBuilders Warehouseの出店を計画している。

マスキャッシュ(Mass Cash)。低所得者層向けの食品の卸売・小売店である。CBWは、食品、酒類、食料雑貨、化粧品などを、独立経営の雑貨店、政府の食糧配給計画、フランチャイズ加盟店、小規模の貿易業者、販売業者に卸売している。ジャンボは、トイレタリー、基礎食品、業務用品、家庭用品などを独立経営の貿易業者や商用ユーザーに販売している。シールドは、有志の購買組合で、南アフリカ、ボツワナ、ナミビア、スワジランドで卸売店や食品小売店を経営している加盟店に代わって商品の買い付けを行っている。マスキャッシュの小売部門はケンブリッジの傘下にある。

サプライチェーンの改善に注力

ウォルマートがマスマート買収時に描いていた戦略は、買収後3年間で54の新規店舗を開店することやセネガル、カメルーン、アンゴラなどの未進出国にも進出し、食品ビジネスを5年間で50%以上の成長を見込むというものであった。しかし、実際には、短期的に未進出国に進出する拡大路線を採るのではなく、既存の店舗を強化する方向に軌道修正を行っている。マスマートは2011年6月末から2012年6月末までの1年間に35店舗を新規開店したが、そのうち国際新規店舗はボツワナの1店舗で、他の新規国への進出はなかった。長期的にはナイジェリアにおける事業展開を考えているようである。

具体的な店舗戦略としては、マスディスカウンターの店舗数を2016年までにアフリカで2倍に、Makroを2015年まで毎年2店舗のペースで新規に開店する。また、ボツワナに初の国際展開を果たしたマスビルドは、ザンビアとモザンビークにも新規開店する。マスキャッシュは、モザンビークへの進出を計画し、他のアフリカ諸国にも進出する予定であるという。

店舗戦略を軌道修正する一方で、サプライチェーンの効率化に投資をしている。マスマートは2009年以降、流通センターの新設および新しいITシステムに30億~40億ランドを投じてきた。その結果、マスディスカウンターズの地域流通センター3カ所、マクロの倉庫3棟、ケンブリッジ流通センター1カ所等を開設した。こうした流通センターの新設とITへの投資が、在庫管理の大幅な改善、リードタイムの短縮と商品保管に要するコスト削減に貢献している。また、マスマートは、生鮮食品セクターで、ショップライトやその他の小売業者との激しい競争に飛び込もうとしている。しかし、マスマートは同セクターの経験が乏しく、このため、ウォルマートの英国における子会社からノウハウを導入した。

ウォルマートは、サプライチェーンマネジメントと、サプライチェーン効率化による利益を商品価格の大幅引き下げという形で消費者に還元していることで有名である。ウォルマートがそのノウハウをマスマートのアフリカでの事業経営に持ち込むのも当然であろう。

報道によれば、ウォルマートのアフリカ出店は、ゲームブランドではなくウォルマートブランドで展開される可能性がある。南アフリカがアフリカ諸国に進出することに対するネガティブな感情があることを考慮すれば、南アフリカの小売ブランドよりもアメリカの有名ブランドを使った方が、進出はスムーズであるというのがその理由である。