フラッシュ189
2014年5月7日
 

アフリカ消費市場展望(5)
新興企業のニューフロンティア

 
(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹
大木 博巳
 

Africa Internet Holding(AIH)が2012年6月に設立したJUMIAは、1日あたり150,000人以上のアクセスがあるアフリカ最大のオンラインショップである。JUMIAのサイトでは、衣料、電気機器、家庭雑貨、食料、香水、書籍など何でも扱う。事業を展開している国は、ナイジェリア、エジプト、コートジボワール、ケニア、モロッコの5か国、中でも、ナイジェリアのラゴスで大成功を収めている。JUMIAがナイジェリアに進出した時点で、すでにAmazonなどの競合相手が存在しており、JUMIAは後発組であったが、ウェブ情報会社アレクサによれば、JUMIAはナイジェリアで16番目にアクセス件数の多いサイトに成長している。

JUMIAのJeremy Hodara社長は、ナイジェリアでオンラインショップを事業化するにあたり挑戦課題として次の4点を挙げていた。

第1が顧客からの信頼をどう獲得するか。アフリカでは、多くの顧客がクレジットカードを所有していないことから、現金または電子マネー決済(M-pesa のような携帯電話を通じた決済)が一般的。たとえクレジットカードを持っている人も、一度目や二度目の購入では使わない。三度目の購入に当たり、信用できると考えて初めてクレジットカードを利用している。支払いは、代金前払いだけを求めるのではなく、商品を受け取ってから顧客がその場で支払うことができるようにしている。商品に満足できなかった顧客からの無料返品も受け付けている。

第2が物流インフラ。ナイジェリアにおいては、ほとんどの人が店舗に容易にアクセスできない。他方で、彼らが要求するサービスは、ニューヨークの人々と変わらない。配達日数が6日間となると、それは長すぎると見なされる。3日間で配達すれば受け入れられるが、4日間かかると苦情が来る。返品においても彼らは同様の利便性を要求する。Galaxy Note 3の発売時には、ラゴスで注文後、3時間43分で配達したことがある。サービスの品質を高める努力は、ラゴスでもニューヨークでも同じことである。

商品の配達は、オートバイ、車、ピックアップトラックなどを使い自前で行っている。DHLや郵便局などアウトソースに頼ることはできない。配達人は、顧客が目にする会社の顔であることから、会社支給のTシャツを着用して身なりをきちんとし、顧客に対して適切に接するよう指導している。配達はラゴスで毎日約70~80名が動いている。

AIHは8都市に200台の車輌を保持し、西アフリカで最大と思われる9,000平方フィートの倉庫を保有している。倉庫やコールセンターを見つけるのは非常に困難で、道路はひどく、機能している配達会社などない。

第3がインターネット環境。家庭にはインターネット環境がないため、多くの人々は会社でインターネットを見ている。週末はネット上の混雑が見られないのが非常に興味深い。新しい顧客を得ても、今までの顧客も保持するのが難しい。どんなに素敵なEメールを顧客に送っても、彼らがSMSで受け取るだけでは効果的ではない。

ウェブサイトに顧客を連れてくる広報活動について、インターネット上のGoogleに広告を載せるだけでは限界がある。あらゆる手段・チャンネルで対策を講じる必要がある。テレビは目に見えて効果があるが、オフラインでさらに多くの対策を取る必要がある。その一例として、3ヶ月に一度新コレクションを発表するファッションショーを行なっている。携帯電話のアプリも開発する一方で、それよりも閲覧頻度の高い携帯用ウェブサイトにも力を入れている。オンラインに顧客を持ってくるためには、多大な努力が必要である。

第4が人材の発掘。ナイジェリアで仕入れやマーケッティングの経験がある有能な中間管理職を見つけることは非常に難しい。経営層については、海外留学をして帰ってきたようなナイジェリア人を見つけることができ、実務レベルに関しては、生まれた時からコンピュータに触っているような知識豊かな年代の人々を簡単に見つけられる。

JUMIAのスタッフに関しては、約半数が女性である。教育的バックグランドのしっかりとした人材を得るために、ハーバード大学卒、マッキンゼー、Tesco、GT銀行(Guranty Trust Bank、ナイジェリアの銀行)出身者などを採用している。

JUMIA を運営しているAIHは、アフリカ13カ国においてインターネットを使ったベンチャー企業をJUMIA 以外にも7社設立している。①Kaymu(ネットオークション)②Hellofood(レストラン予約)、③Lamudi(不動産関連のポータル・サイト)、④Carmudi(車両販売、ナイジェリアのみ)、⑤Jovago(旅行予約、ナイジェリアのみ)、⑥Easy Taxi(タクシー呼び出し)、⑦Zando(南アフリカで展開しているにオンラインショップ)である。

AIHの持ち株会社は、ベルリンに拠点を置くベンチャーキャピタル、ロケット・インターネット(Rocket Internet)である。また、ルクセンブルグの通信会社であるミリコム・インターナショナル・セルラー(Millicom International Cellular)もAIHに出資している。ミリコムは、2012年に、ロケット・インターネットが所有する2つの持ち株会社(ラテンアメリカ・インターネット・ホールディングス(LIH)とアフリカ・インターネット・ホールディングス(AIH))の20%の株式を取得している。ロケット・インターネットは、50カ国で100以上のテクノロジー関連の新規事業を立ち上げている。同社は、クローンのような新規事業を次々と立ち上げては成功し、世界的に有名となった企業である。また、ミリコム・インターナショナル・セルラーは、ガーナ、モーリシャス、ルワンダ、セネガル、タンザニアにおいてTIGOブランドによる携帯電話事業を展開している。

AIHは近い将来、エチオピア、アンゴラ、アルジェリア等でも事業を開始する予定で、アフリカで新たに起業する計画もあるという。アフリカにおける同社の最大の競合相手は、南アフリカ拠点の多国籍メディア企業であるナスパース(Naspers)である。ナスパースは子会社2社(MultiChoice South Africa、MultiChoice Africa)を通じて有料テレビ・サービスを提供している。

AIHが現在重視しているのは、収益性よりも成長性である。南アの大手スーパーマーケットのショップライトと同様、AIHは新しい市場に先行者として参入する利益の方が、リスクや困難を上回ると考えている企業である。