フラッシュ200
2014年8月14日
 

アフリカ市場展望(7)
サブサハラ市場開拓の課題…ショップライトのケース

 
(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹
大木 博巳
 

ショップライト(Shoprite)は南アフリカの最大手の小売企業である。1979年にケープタウンのスーパーマーケットを購入したことから始めて、今では売上高が93億ドル(2013年)でアフリカ最大の小売企業に成長している。店舗数(フランチャイズを除く、2013年6月時点)は南ア国内に1982、サブサハラに300の店舗を構えている。

ショップライトの顧客層は、価値志向が強くかつ価格に敏感な低中所得者層をターゲットにして、多様な店舗ブラントでサービスを提供している。例えば、食料品を扱う「チェッカーズ」や「チェッカーズ・ハイパー」、家具店「ハウス・アンド・ホーム」は高所得層向け、「ショップライト」と「OKストア」(両ブランドとも食料品)、「OKファニチャー」、日用品量販店「ユー・セーブ」は中低所得層向けの店舗。「ユー・セーブ」は店舗の規模や内装を必要最低限に抑えることで、低所得者層向けに「どこよりも安い」価格での提供している。

ショップライトが、低価格で商品を提供できる背景には、徹底したサプライチェーンへの取り組みがある。店舗数が増加するなかで、商品の品質を維持し、在庫水準の引き下げによって利益を生み出すためには、効率的なサプライチェーンが不可欠である。このため、サプライチェーン構築のために積極的な投資を行っており、トラックには最新式の情報技術と冷蔵機能を装備し、商品の流れを徹底的して管理している。

サブサハラ市場での店舗展開

ショップライトは、南アの大手スーパーの中で、早くから、サブサハラ地域に出店した先駆けである。本格化したのは95年からで、ザンビア(95年)、モザンビーク(97年)、スワジランド(97年)、ボツワナ(98年)と続き、1998年6月までに、ショップライトは南アフリカ以外に25店舗を有するに至った。2000年代初めの5年間には、ジンバブエ、ウガンダ、マラウイ、レソト、マダガスカル、モーリシャス、タンザニア、ガーナ、アンゴラ等11ヵ国に進出した。内戦が終結したアンゴラに最初に出店したのもショップライトであった。

サブサハラで成功を収めてきたショップライトであるが、エジプトでは短期間で撤退した。2001年にエジプトに進出し、一時期7店舗を出店していたが、2006年には、制限の多い通商に関する法律を理由に同国から撤退した 。

2012年には、コンゴ民主共和国(DRC)の首都キンシャサに1店舗開店し、その存在感を増大させた。

ショップライトのサブサハラ市場開拓の特徴としては、第1に、所得水準が低く、また伝統的市場や路上の販売店から買い物が主であることを踏まえ、消費者にきちんとした買い物の経験をさせ、手ごろな低価格の製品を提供することを狙っている。店舗形態はショップライト・ハイパーマーケットである。

第2は注力する市場(地域・国)。2013年は、ナイジェリアおよびアンゴラであった。それぞれ9店舗、21店舗を開店している。ショップライトのバッソンCEOによれば、ナイジェリア市場は、ショップライトが南アフリカに保有している店舗数と少なくとも同等の出店スペースが可能であると述べている。またアンゴラについては、2012年に次のように語っていた。「当社がアンゴラに出店してまだ5年しか経っていないが、アンゴラは、南アフリカを除くと、当社の売上に最も貢献している市場である」。

第3は内陸市場やフランス語圏市場開拓を視野に入れ始めた。DRCへの進出は、フランス語圏初進出という点で意義深い。DRCで経験を積み、マーケティング材料を築くことは、今後、アフリカ西部および中部へ進出を続ける上で、大きな助けとなるだろう。キンシャサへの出店により、ショップライトはDRCの内陸への出店が可能になる。カメルーンやガボンといった他の近隣フランス語圏の国で正式小売業者はまだ手をつけていない地域にも進出できるという基盤を築いた。

サブサハラ市場開拓の課題

ショップライトのサブサハラ市場における店舗展開を見ると、拠点の拡大によって事業が点から面に拡大しつつあることが読み取れる。ショップライトの当面の課題としては次の3点が指摘できよう。

第1に、出店できる用地の確保である。サブサハラ市場に進出しようとしても、小売業向けに開発された用地が不足していることが障害となっている。ショップライトは「スーパーマーケット拡大」計画の一環として店舗を建設できる、または借りられる可能性のある場所を特定する部署を社内に設けた。ナイジェリアで不動産関連のインフラを開発し建設することに2億500万米ドルを最近投資しているが、小売用地を確保することが目的である。ショップライトが多くの課題に直面してもサブサハラ市場において成功できるかどうかは、「スーパーマーケット拡大」計画にかかっている。

第2は商品の現地調達の向上である。南アを中心とした商品供給から各拠点をハブとした展開が限界にきている。海外店舗の運営コストのうち、最も大きいのが商品調達コストである。たとえば、新規に店舗を開店すると、当初は商品調達の約70%を輸入に頼るためコストが嵩む。特に生鮮品の輸入コストが高い上、物流面でのリスクも大きい。しかし、現地産品の比率を上げるのは容易ではなく、時間を必要とする。

ショップライトは、現地調達の向上の一環として、地場の食料供給業者との提携を積極的に進めている。例えば、ザンビア最大の農業関連企業であるZambeefと独占供給契約を結んでいる。Zambeefは、ザンビア、ガーナ、ナイジェリアにおけるショップライトの食肉処理場の経営を行っている。

また、地元の農家と提携して栽培方法や品質向上の指導を行い、店で販売できるレベルの産品を作り上げる。ザンビアでは、生鮮品の現地調達が70~80%を占めるようになった。その他の国でも野菜類はほぼ現地産品で占められている。

第3は点から面に拡大に伴う物流の再編である。ショップライトは、ザンビアで生産した生鮮品をナイジェリアに輸出している。これまで物流は南アを拠点に行っていたが、進出国が増えるにつれ、横のネットワークを活かした流通網の展開が可能になった。

さらに、サブサハラで締結されている域内関税協定を軸にした物流戦略を考える時期に来ているという。南アが加盟していない自由貿易協定である東部・南部アフリカ共同市場(COMESA)などを利用することになれば、関税同盟のある国同士であれば南アを経由せずに直接搬送することも予想できる。


Shopriteグループのブランド(2013年6月時点)

出所:年次報告書2013年等より作成