フラッシュ212
2014年10月17日
 

アフリカ消費市場展望(9)ブラック・アフリカン向け製品開発...ロレアル

 
大木 博巳
(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹
 

フランスの大手化粧品メーカ-、ロレアルはサブサハラの化粧品市場はとてつもない潜在成長力を秘めているとみている。この地域では、美容に対する深い伝統があり、多くの女性が美容や髪の手入れに時間をかける。特にヘアケア製品は、縮毛矯正など、アフリカ人の女性の半分が毎月使用している。

ロレアルのサブアフリカ戦略は、第1に南アフリカをサブサハラ市場開拓のプラットフォームとして位置づけていること、第2にブラック・アフリカン(黒人アフリカ人)向けの製品開発とブランドの立ち上げていることにある。

サブサハラのプラットフォーム、南アフリカ

ロレアルは、ヘアケア、ヘアカラー、スキンケア、化粧品、香水の5事業領域にまたがり、流通チャンネル別に「プロ用製品」、「一般消費者製品」、「高級ライン製品」、「スキンケア製品」の4部門に分かれている。この他にこれら4事業とは別扱いのボディ・ショップなども含めて、全23の国際ブランド(下図)を擁している。

ロレアルの南アフリカ事業は「プロ用製品」、「一般消費者製品」、「高級ライン製品」、「スキンケア製品」の4部門と1つの生産拠点(ミッドランド製造工場)に分かれ、アフリカ大陸市場進出のためのプラットフォーム的な役割を果たしている。


 

プロ用製品部門は、Kérastase、Redken、Mizani、Matrixのブランドを通じて、南ア市場でのリーダー的地位を確立している。同部門はテクニカルトレーニングやプロモーションイベントを通じて、ヘアサロン産業に食い込んでいる。

高級ライン製品部門は、ランコム、ジョルジオ・アルマーニ香水、ラルフローレン、キャシャレル、ヴィクトール&ロルフ、ディーゼル、イヴサンローラン化粧品といったブランド製品が厳選されたショップを通じて販売されている。

スキンケア製品部門は、ヴィシーブランドが薬局を通じて販売されている。

消費者製品部門は、ヘアカラー、ヘアケア、スキンケア、スタイリング、化粧といった部門をカバーするマス市場を対象に、ロレアル・パリ、ガルニエ、メイベリン、ソフトシーン・カーソンといったブランドを展開している。

これらのうち、南アフリカ市場で知名度が高い製品は、ソフトシーン・カーソンブランドのヘアケア製品である。縮毛矯正製品ラインの「Dark &Lovely」は、市場の4割を占め、南アフリカ人が最も好むヘアケア製品の一つである。より価格の安い縮毛矯正・ケア製品ラインの「Restore Plus」、また切れやすい髪用の縮毛矯正・ヘアケアのより高級ライン「Optimum Care」と品ぞろえは豊富である。

ロレアルが南アフリカ市場に進出したのは1963年。ミッドランド工場では、ソフトシーン・カールソンブランドのヘアケア製品、化粧製品を生産している。その他にロレアル・パリの「エルヴィーヴ」のシャンプーとコンディショナー、ガルニエブランドのデオドラントを南ア国内市場向けに製造している。

2014年2月には、初のヘアードレッシング専門学校「The L’Oreal Professional African Salon Institute」を設立している。従来、ロレアルは、毎年、5万人の美容師にトレーニングを行ってきている。このトレーニングと現地生産の製品により、ソフトシーン・カーソンブランドのポジショニングが強化されてきた。

ソフトシーン・カーソンブランドの立ち上げ

ソフトシーン・カーソンは、黒人アフリカ人特有の毛髪、皮膚に特化した製品を開発生産販売に特化した最初の世界的ブランドである。アフリカ市場開拓の課題の一つは、地場の人達の欲求を満たした製品の開発である。世界中どこにでも通用するグローバルブランドを持ってきてもアフリカ市場では通用しなくなってきている。スウェーデンの化粧品企業がインド市場向けに開発した製品をアフリカ市場に投入したが、アフリカ向けに開発をし直したという。ロレアルは、サブサハラ市場の製品開発では、いち早く取り組んだ先行企業である。

ソフトシーン・カーソンは、買収した米企業、2社を統合して創出したブランドである。1998年にアメリカ・カリブ市場の黒人用のヘアケア製品の開発・販売に特化していた米ソフトシーン社(Soft Sheen)買収、続いて2000年にエスニック用化粧用品の世界リーダーであった米カーソン社(Carson)買収した。

ロレアルの黒人アフリカ人向け製品開発の取り組みは、1980年代後半にアフリカ人の髪の研究チーム(the Advanced Research and hair Metrology)を立ち上げことから始まっている。2003年には、non-Caucasian (非白人)の肌・毛の研究に特化した研究所"The L’Oréal Institute for Ethnic Hair and Skin Research"を米国で立ち上げた。

ロレアルは独自の「地理美容学」を展開している。これによれば、世界各国の人々の皮膚と毛髪の特性は、白人・黒人・アジア人といった人種的特徴では対応できなくなっており、8つの毛髪カテゴリーと63の皮膚色に細かい類型をしている。これにより各国の市場性に適合する化粧品開発が可能となった。

世界130カ国に進出するロレアル社は、国によって肌の色や毛髪の特性やニーズが異なる消費者を対象としていることから、研究開発(R&D)を同社の中でも事業の基盤として位置づけている。世界中に18カ所の研究開発センター、12カ所の評価センターにおいて、情報の蓄積、製品開発を行っている。

次は地場ブランドの買収

ロレアルによれば、アフリカの化粧品市場規模は69.3億ユーロ(2012年)、世界市場が平均で4%程度の伸び率にとどまっているところ、アフリカでは8%から10%で伸びている。2017年には市場規模が100億ユーロにまで拡大するとみている。成長が見込まれる市場はナイジェリア(2017年には25億ユーロと推定)である。

サブサハラの最大の市場は南アフリカの30億ユーロ。南アフリカでは、女性のファッション・美容への支出も伸びているが、なかでもブランド志向が高く旺盛な消費意欲をみせているのが、中間層の黒人女性である。ケープタウン大学ユニリーバ研究所は、これら中間層の黒人女性を「ブラック・ダイヤモンド・ウーマン」と名づけている。こうしたブラックダイヤモンドは、他のサブサハラ市場においても台頭しつつある。

独自のブランドを導入してサブサハラ市場を攻めているロレアルではあるが、課題も多い。とりわけ、サブサハラにおける販売拠点を拡大させていることから、流通ルートの開拓が欠かせない。ロレアルは、販売拠点を南アフリカに加えて東アフリカのケニ、ア西アフリカのガーナ、ナイジェリアに置いている。ケニアには2011年に子会社を設立、アフリカ東部(ウガンダ、タンザニア、ルワンダ、ブルンジ、エチオピア)でのBOP消費者をターゲットにした新規市場開拓を目指している。しかし、ケニアではスーパーマーケットの販売は15%程度に過ぎず、伝統的市場などに依存している。効率的な販売網の構築がこれからの課題の一つといえよう。

また、地場市場に密着したブランドの構築も欠かせないようである。ロレアルはケニアのInterconsumer Products 社を買収して同社のブランドInterbeautyを獲得している。新規販路の開拓とともに地場で知名度のあるブランドを手に入れることで消費者との距離を縮めてようとしている。