フラッシュ268
2016年2月22日
 

ASEAN経済共同体(AEC)2015の成果(2015年12月末時点)

 

国際貿易投資研究所編

 

ASEAN経済共同体(AEC)は2015年12月31日に創設された。同年11月に開催された第27回首脳会議で公表されたASEAN事務局の資料によると、AECブループリントの実施率は高度優先措置を含む506措置の92.7%、全措置の79.5%である。全措置が実施されておらず、残りの措置は2016年に実施の計画である。全措置数は611あるが、関税撤廃のように順調に進んだものから非関税措置のようにほとんど進展のない措置まで実施状況は様々である。本資料は、ASEAN事務局が公表した最新資料(注)により、2015年9月に作成した「ASEAN経済共同体ブループリントの進展状況」を更新したものである。なお、2015年末の創設された経済共同体をASEANはAEC2015と呼んでおり、タイトルを変更した。

(注)A Blueprint for Growth: ASEAN Economic Community2015:Progress and Key Achievements およびASEAN Integration Report 2015

分野

主な目標

2015年末までの成果

評価

備考

全体評価

 

高度優先措置を含む506措置中469措置を実施し実施率は92.7%、単一の市場と生産地域は92.4%、競争力のある地域は90.5%、公平な経済発展とグローバル経済への統合は100%。
全措置611に対しては486措置を実施し実施率は79.5%(2015年10月31日時点)

未実施措置は2016年末までに実施。

関税

関税撤廃

ASEAN6は99.2%撤廃、CLMVは90.9%、ASEAN全体では96%。
ASEAN物品貿易協定(ATIGA)2009年発効

CLMVは7%相当品目の撤廃猶予、2018年1月に同品目を撤廃

非関税障壁

非関税障壁撤廃

撤廃はほとんど進展なし、①データベース更新を計画しているが、2012年3月以降更新されていない)、②省庁間横断組織(進展状況は不明)、③具体事例マトリックス。

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原産地規則

継続的改善

選択的原産地規則導入とASEAN+1FTAに拡大、FOB価額不記載。

2つの自己証明制度パイロットプロジェクト実施、2016年に統合

税関業務円滑化

 

ASEAN通関申告書、ASEAN統一関税分類(AHTN)など進展
AFAFGIT第7議定書に署名。第2議定書はテキストは完了。

AFAFGIT第2議定書の署名。現場での施行が課題

その他の貿易円滑化措置

透明性向上など

ASEAN貿易レポジトリ(ATR)稼動開始。ASEAN投資サービス貿易解決制度(ASSIST)も公開・運用開始。

 

ASW〈シングル・ウィンドウ〉

NSWの導入(ASEAN6は08年、CLMV12年)
7カ国でASWを実施

フォームDとASEAN税関申告書の交換の5カ国の連結テスト実施、ASW実施のための法的枠組みに関する議定書署名。

連結テストから稼動までを2016年中に完了。

基準認証

いくつかの産品について基準の調和と相互承認協定(MRA)。

化粧品統一指令の国内法制化、電気電子機器(EEE)、化粧品、医療製品のMRAの実施、EEE121品目で統一規格への調和・準拠、自動車分野で国連欧州経済委員会(UNECE)規則に基づく15の技術的要件の調和、ゴム製品で47のテスト基準の調和、農産物でよく使われる農薬について955の残留基準値(MRLs)設定、医療機器指令(AMDD)署名、伝統薬・健康補助食品で19の技術的要求の調和、製薬分野で適正製造基準(GMP)。ASEAN共通食品管理基準、優先商品の輸入のための9つのASEAN植物検疫ガイドライン、農業産品に係る46のASEAN標準、5つの農業慣行などで域内共通のガイドライン。

自動車、調整食品、建築材料のMRA、伝統的薬品とサプリメントの技術要件の調和。MRA枠組み協定の見直し・拡充。

サービス貿易

128分野の自由化、第3モードは外資出資比率70%

2015年11月に第9パッケージ署名(104分野の自由化)

第10パッケージ合意(2017年中)。新サービス協定(ATISA)締結。
第4モードは極めて限定。15%柔軟性規定により自由化例外が残存。

金融サービス

保険、銀行、資本市場、その他の4分野で各国別に自由化するセクターを特定し2015年までに実施、その他は2020年。 ASEAN銀行統合枠組み(ABIF)はASEAN適格銀行(QABs)によるネットワーク創設を目標。

AFAS金融第6パッケージ署名。
各国がポジティブリスト方式で自国で可能な自由化領域を明示。15年の財務省会議でQABs選定に合意。
ASEAN銀行統合枠組み(ABIF)は2014年12月中央銀行総裁会議で承認。
ASEAN保険統合枠組み(AIIF)を2015年3月財務大臣・中央銀行総裁会議で最終合意。

第7パッケージ交渉を2016年中に完了予定。
当初よりブループリントで2020年までの自由化を許容している点に留意、ASEAN6は銀行を15年までの自由化対象から除外。

熟練労働者の移動

自由職業サービスのMRA

エンジニアリング、看護、建築、測量技師、会計、開業医、歯科医、観光の8分野署名。ASEAN公認エンジニア(1260名)、ASEAN建築士(212名)の登録は進展。
自然人移動協定(AMNP)署名。
ASEAN資格参照枠組み(AQRF)採択(2014)。

実効性が課題。ASEAN公認エンジニアはすでに就労しているとの報告。

投資

ASEAN包括的投資協定(ACIA)制定、「最小限の制限」を残して自由化

ACIA制定(2012)、留保表(12)、ACIA修正議定書(14)

留保分野の削減が課題

資本移動

資本市場統合

ASEAN資本市場フォーラム(ACMF)での各種取組み:ASEAN Exchangesに向けた証券取引所の連携(ASEAN証券取引ブランドアイデンティティ、ASEANスターズINDEX、シンガポール・タイ・マレーシア間のASEAN取引リンク)、域内のクロスボーダーでの起債のための会計基準などの共通化。

2020年までながら、①資本取引の自由化②金融サービスの自由化が提言され、さらに長期では、③決済システムの統合、④資本市場発展も推進。これまでの取組みは、マレーシア、シンガポール、タイの3カ国が先行実施している項目が多い

競争政策

競争政策、競争法の導入
地域ガイドライン作成

8カ国で導入済
地域ガイドライン作成

カンボジアとラオスでの導入および施行のための人材育成。

消費者保護

専門家会合設置など

専門家会合設置済、9カ国が消費者保護法策定、オンラインで消費者保護関連情報を提供するASEAN消費者ポータルを設置。

カンボジアは2016年に導入。
消費者保護法地域ガイドライン策定

知的財産

特許協力条約、マドリッド議定書に加盟。

特許協力条約加盟8カ国、マドリッド議定書加盟5カ国(ただし、ラオスは2016年3月発効)。 ASEAN特許審査協力(ASPEC)、ASEAN商標審査ガイドラインの採用。

特許協力条約未加盟はカンボジア、ミャンマー。
マドリッド議定書未加盟は、インドネシア、マレーシア、タイ、ブルネイ、ミャンマー。

輸送円滑化

ASEAN通過貨物円滑化枠組み協定(AFAFGIT)、ASEAN国家間輸送円滑化枠組み協定(AFAFIST)、ASEAN複合一貫輸送枠組み協定(AFAMT)の締結・発効

AFAFGITは9議定書の3つ(越境交通路の指定、鉄道の国境駅・積替え駅、危険物)が未批准・未発効、1つ(国境交易・事務所)が未署名、一つ(トランジット通関)が署名済・未発効、AFAFISTは批准が5カ国(タイ、ベトナム、ラオス、フィリピン、カンボジア)、AFAMTは批准が6カ国(カンボジア、フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス)

AFAFGITの最終化が優先課題。
GMS6カ国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、中国)で越境交通協定(CBTA)を署名、批准。IT化の進展などにより協定の見直しが必要。

陸上輸送

ASEAN高速道路ネットワーク(AHN)は道路格上げ
シンガポール昆明鉄道(SKRL)の未通部分の建設、修復

ミャンマー区間を除き道路インフラは整備が進展、鉄道事業は経済性などから遅滞。ドライポートの整備。

AHNのクラス1への格上げは2020年以降に繰り延べ
SKRL(東回り)も2020年以降に繰り延べ。中国とラオス、タイの間で鉄道建設が合意。

海上輸送

単一海運市場(ASSM)の創設

47指定港湾能力の向上、RoRo船ネットワーク整備。港湾EDI整備。

実現は2020年以降。

航空輸送

単一航空市場(ASAM)創設
第3の自由(自国から外国への輸送)、第4の自由(外国から自国への輸送)、第5の自由(以遠権)までの実現が目標

航空輸送部門統合に向けたロードマップ(RIATS)により措置の実施。航空輸送、航空貨物輸送、航空旅客輸送に関する3つの多国間合意の進展。

第6の自由(本国をハブとする第3国間輸送)、第7の自由〈第3国間輸送〉、第8の自由(カボタージュ、他国の国内輸送)は含まれていない

エネルギー

ASEAN電力網(APG)は、2015年までに15のプロジェクト
ASEANガスパイプライン(TAGP)は、4500キロに及ぶ二国間パイプラインを敷設

APGは4つが一部完成を含め継続中、3が建設開始、8が準備中。
TAGPは8本2300キロは稼動している。石炭火力クリーンコール(OCT)の導入。

APGの完成目標は2020年に繰り延べ
TAGPは東ナツナ開発にインドネシア政府合意
ガスパイプラインとLNG併用が進む

租税

二重課税防止のための二国間協定を締結(2010まで)

二国間租税条約のためのフォーラム設立

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電子商取引

域内電子商取引のためのインフラと法的枠組みおよび電子商取引実現

ICTマスタープラン2015採択、電子商取引相互運用技術の枠組みについての研究など各種施策を実施。

 

中小企業(SME)

情報、市場、人的資源、金融、技術などへのアクセス改善による競争力と強靭性の強化

情報サービス整備は進展、開発ファンド、金融ファシリティーなどは遅れ。
SME信用格付手法ベンチマーク、SMEサービスセンター、SMEガイドブック発行など。

 

域内格差是正

 

ASEAN統合イニシアチブ(IAI)の作業計画1(2002-08年)と作業計画2(2009-15年)を実施。

 

域外FTA

ASEAN+1FTA締結、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)締結。

5本のASEAN+1FTA締結、インドとのサービス貿易投資協定締結。RCEP交渉モダリティに合意。

RCEP協定は2016年合意が目標、AJCEPサービス投資協定署名、ASEAN香港FTA合意。


(注)◎ブループリントの想定どおりあるいは想定以上の成果をあげている、○は概ねブループリントの想定どおり施策が実施されている、△ ブループリントの想定より実行遅れているが一定の成果がみられる、×は実施が大幅に遅れている、ことを示している。ブループリントの目標達成度の評価であり、自由化・円滑化実現の評価ではないことに留意が必要。
(出所)石川幸一・清水一史・助川成也・福永佳史が作成、輸送とエネルギーは春日尚雄氏(福井県立大学)、金融サービスと資本は赤羽裕氏(亜細亜大学)の協力を得た。