フラッシュ326
2017年3月23日
 

踊り場のメコン経済…現状と展望(11)
ミャンマーの地場企業の課題
~Good Brother Companyのケース~

 
Aung Kyaw
モンユワ経済大学商学部 教授

Nu Nu Lwin
ヤンゴン経済大学経営学部 教授

 

本シリーズの第3回(「マンダレー工業団地の生産現場、旧式な設備と溢れる中国製機械・部材」 2016年9月16日 )では、マンダレー工業団地で操業している地場企業を紹介した。これらの企業の中から4社を取り上げて、活動状況や課題について、モンユワ経済大学商学部Aung Kyaw教授とヤンゴン経済大学経営学部Nu Nu Lwin教授に報告をしていただいた。最初は、Good Brother Company。

なお、取りまとめは大木博巳ITI事務局長兼研究主幹が行った。調査は公益財団法人JKAの補助を受けて実施した。

中国と強い事業関係

Good Brother Companyは1991年に農業機械メーカーとして設立された。出資構成では純粋な国内企業だが、創業者と最高経営責任者(CEO)は中国系で、中国と強い事業関係がある。工場はヤンゴンとマンダレーに、販売センターはエーヤワディ、マンダレー、ヤンゴンの各地方にある。全国に1,300人以上の社員を抱えている。うち、約200人は工場労働者、100人は経営管理職、約350人は技術・営業職、残りの社員は事務職と見習い研修員である。

主要販売製品は農業輸送機械、二輪・四輪式トラクター、コンバインハーベスター、ディーゼルエンジン、ポンプである。トラクターとコンバインハーベスターは、すべて輸入品である。主な仕入先は日本のクボタ(同社はクボタブランドのトラクターのミャンマー唯一の公認代理店である)、中国企業(ZOOLION、CHAMGCHAI、JN等)である。農業輸送機器に使われるエンジン、ギヤボックス、サスペンションは中国から輸入し、他の部品は国内で製造している。輸出は主に中国向けで、中国経由でアフリカにも再輸出している。

同社のビジネスモデルは、垂直統合型の事業を展開しており、農家へのマイクロファイナンス、肥料の販売、農地の購入、精米、米の輸出に携わっている。農家は同社の製品を割賦購入できる(通常、頭金で3割支払い、残りを2年以内に返済する銀行ローンで購入)。国内の配送は主に道路輸送である。ICT(情報通信テクノロジー) の使用は社員同士、企業間、仕入れ業者、一部顧客とのやりとりに限られる。修理やメンテナンスなどのアフターサービスが不可欠であり、そのため顧客と緊密な関係を築いている。

AECはマイナス要因

同社の競争力は国内同業他社と比べて優れており、アセアン域内で競争していく力がある。同社は一般に外的要因への対応能力が高い企業とみられているが、アセアン経済共同体(AEC)が発効すれば外国企業との競争が激化する可能性があり、同社はAECをマイナス要因と捉えている。

最近、同社はマイクロファイナンス部門に新規投資し、国内農家向け小口融資を実行した(政府系農業開発銀行と同額の、1エーカーあたり約100ドルの貸付)。将来は、農業金融や農村開発に関するプロジェクトに投資する計画がある。

社員研修が最重要課題

同社の課題は社員の技能開発と農業機器の製造技術の近代化である。同社の技術は自社開発と仕入先の技術に依存するが、社内に製品開発の研究開発部門はない。現状、具体的な技術開発計画はまだない。助言を与えたり技術研修を指導したりする少数の外国人社員はいる。

他の国内企業と比べると同社は社員の研修・訓練に熱心である。同社の社員には、そのレベルと責任に応じて、技術、販売、カスタマーサービス、チームワーク、リーダーシップ開発など様々な分野の研修が用意されている。同社の社内規則担当のマネージャーによれば、事務職と営業系技術者は80時間、製造職と製造系技術者は40時間の研修の修了が求められている。

会社側が最も満足している研修プログラムは職場の技術研修で、最も満足度の低いのがリーダーシップ研修である。同社は社員研修を将来の最重要課題と捉えており、社内や業界団体の研修プログラム、民間の研修機関、政府系の機関などを活用し、職場内外の研修を組み合わせることでこれを実行している方針である。また、同社は、全管理職がMBA(経営学修士)の学位を取得し、すべてのエンジニアが、海外サプライヤーが開催する研修を修了し、現場監督レベルの社員が経営学の学位を取得することを研修の目標としている。