フラッシュ328
2017年3月27日
 

踊り場のメコン経済…現状と展望(12)
マンダレー地場企業の課題
~Top Myanmar Mya Taung Nyunt Company のケース~

 
Aung Kyaw
モンユワ経済大学商学部 教授

Nu Nu Lwin
ヤンゴン経済大学経営学部 教授

 

今回は、Top Myanmar Mya Taung Nyunt Company 。
(取りまとめは大木博巳ITI事務局長兼研究主幹。調査は公益財団法人JKAの補助を受けて実施した。)

製糖からプラスチックバック製造に事業転換

Top Myanmar は1990年にサトウキビを原料とする製糖会社として創業されたが、2000年代初めに製糖業の事業環境が悪化したため、生き残りを賭けて、オーナーが熟考の末、砂糖を入れて運搬する布袋(プラスチックバック)の製造販売に事業を転換することを思いついた。袋の市場は砂糖の市場より大きいと見込んだためである。2009年に樹脂ポリプロピレン製の袋の製造を開始し、2011年には、132台の機械が並ぶ4ラインの砂糖用袋の製造工場を立ち上げた。工場の全ての機械は中国から輸入した。

現在、同工場では多様なサイズの袋を日産16万枚製造している。製造工程は単純だ。輸入製のポリプロピレン樹脂ペレットを加熱し、その後、押出・延伸機でテープ状に加工する。テープは自動環状織機で袋状に加工され、表面には印刷が施される。

農家と卸売業者は生産物をそれぞれのブランド名が付いた袋に詰めるため、各州で多様な仕様の袋が必要である。ブランド名なしの袋の市場では、卸売業者への販売は代理店経由である。自社ブランド入りの袋を使う会社は、同社に直接自社ブランド名入りの袋を特注する。現在の展開色は3色。将来的には6色を使える機械を中国と日本から導入する計画である。

原料のペレットはサウジアラビア、シンガポール、韓国、タイから輸入されるほか、国内で再利用されたペレットも使っている。国内の原料製造業者はいない。再利用原料に特殊処理は不要だが、そこからは黄色の袋しか作れない。白色の袋は新しいペレットからしか作れず、新しいペレットのコストは再利用ペレットの5割増である。

純粋ミャンマー企業

同社の主要顧客は、鶏用飼料の製造加工業者、精米、製粉、石灰、製糖など、多くの産業の国内企業である。顧客の要望があれば、中国製のラミネート加工機を使って完全防水加工の袋も製造できる。

肥料用の袋の単価は砂糖用の袋より6割ほど高いが、製造コストが嵩むため利益は小さい。ただ、肥料用の袋の市場は砂糖よりはるかに大きいため、生産拡大の余地がある。全ての袋は国内市場向けだが、中身の充填後に最終的に輸出されることもある。詰められる製品の中身により袋には厚さ80グラムのものと20グラムのものがある。国内で使われる袋と最終的に輸出される袋に質的な違いはない。

同業他社はマンダレーに10社ある。同業他社10社のうち5社は生粋の中国企業か中国資本との合弁企業である。残りの5社のうち4社はミャンマー生まれの中国人の企業で、同社だけが生粋のミャンマー人の企業である。

日本企業との提携という点では、日本の宮崎県延岡市にある企業とのビジネスマッチングの結果、同社の工場幹部は延岡に1週間、ホームステイした。このため彼らは延岡の人々と強い関係で結ばれている。

労働条件

工場労働者の教育程度は主に中卒と高卒である。管理事務職の社員数は8名、現場監督職の社員数は7名である。工場にエンジニアはいないが15名のテクニシャンがいる。テクニシャンは社内で養成され、現場業務と管理業務合わせて最低15年の経験を積んでいる。またこれらの技術士はミャンマー日本人材開発センターで1日〜1週間のカイゼン・セミナーに参加している。社員の転職は滅多にない。研修後、社員はチームワークについて理解を深める。オーナーは研修・訓練を重視しており、社員の会社への忠誠心が高い。過去に中国企業が研修・訓練を受けた社員を引き抜こうとしたことがあったが、多くの社員は同社を辞めなかった。

2015年の月額100米ドル相当の最低賃金法が制定された後、かつてより工場労働者を雇いやすくなっている。月給の100ドルから一日3食一月分の食費3ドルと住居の家賃の3ドル等が天引きされ、社員は差引の手取りで月額92ドルは受け取っている。昇給は職階と労働条件によって変動する。労働時間は2シフト制である。第一シフトは午前7時30分から午後5 時30分、第二シフトは午後5 時30分から午前7時30分の24時間操業体制である。シフトあたりの最大残業時間は4 時間で、2時間のこともある。休日は週2日と国民の祝日である。

課題

第1は機械のメンテナンス。工場の機械の大半は中国製である。中国製の機械は比較的安く、輸入しやすい。ドイツや日本の機械は良質だが、国内企業にとって高価である。現行の機械は不具合が生じることがある。深刻な問題が起きないよう定期的なメンテナンスが必要である。 生産能力拡大のため、特にシートから袋を作る工程と印刷の工程を自動化するための新たな機械の導入を検討している。

第2は事業資金の調達。同社は政府や銀行から融資を受けていない。融資プロセスの不透明性等で融資が迅速に行われないからである。新政権の樹立後、融資のプロセスは若干迅速化したものの大きく変化したわけではない。当面、事業拡大用の資金源は会社の内部留保しかない。同社は親や親族から支援を受けたことはない。

第3はマーケティング。事業は天候によって左右され、悪天候になると需要は若干減る。繁忙期は12月から4月までで、この時期に年商の半分が計上される。繁忙期と閑散期の生産能力には約15%の差がある。マーケティング・チームによる事前需要予測と既存顧客の定着を図る施策を組み合わせるという正しいマーケティング戦略のおかげで、同社の生産量は近年、増加傾向にある。

第4は電力。同社は電力の常時安定供給を必要とする。そのため工場の立地は主に電力供給の状況によって決まる。マンダレー工業団地の現行立地の近隣には、合板、プラスチック成形、靴製造など多くの工場があり、これらの工場が電力の安定供給を得るために競い合っている。停電の発生に備えて自家発電装置は必須である。工場の地価は高く、狭隘である。最近、電力価格は上昇傾向にある。Kyaut-Se工場はマンダレーから25マイルのところに作られた。

第5が人材育成。工場長以外にはエンジニアがいないが、工場長にはエンジニア・レベルの専門性が必要となる。