フラッシュ381
2018年8月15日
 

ミャンマーからのニット製衣類の急増
一般特恵制度(GSP)の原産地規則の緩和がもたらす途上国からの輸入増

 
増田 耕太郎
(一財)国際貿易投資研究所 客員研究員

 

ミャンマーからの衣類(HS61類およびHS62類の輸入が増えている(図-1)。ミャンマーから日本が輸入する衣類はHS62類に分類する「ニットでない衣類」が中心で、ミャンマーからの総輸入額の5割を超える(2017年)。一方、HS61類に分類する「ニット製衣類」の輸入が増えたのは、最近のことである。しかも、近年(2014年以降)のミャンマーからの衣類の輸入増加は、「ニット製衣類」の輸入増による。

 

図-1 日本の対ミャンマー(衣類2品目)の輸入推移 単位:100万ドル、%

出所 日本貿易統計

 

ミャンマーからの「ニット製衣類」の輸入額は、2014年の4,196万ドルから年々増加し、2017年には1億4,492万ドルと、3年間で約3.5倍増となった。

輸入急増の背景に、日本の一般特恵関税制度(GSP)の原産地規則の改正がある。2015年4月以前のGSPにおける「ニット製衣類」の原産地規則は、①「繊維・糸」――>「織物」の工程と、②「ニット製生地」――>「ニット製衣料」の2工程の両方を義務付ける『2工程ルール』であった。それが、2015年4月の改正により、②の「ニット製生地」――>「ニット製衣料」の工程だけで良い『1工程ルール』に変わった(注)。 この原産地規則の改正で、「ニット製衣類の生産」は縫製工場がある途上国内で生産した生地を使わず外国から輸入した生地で縫製しても、GSPの適用が受けられることになった。なお、HS62類の「ニット製でない衣類」は、従前から1工程である。

「ニット製衣類」をHS4桁レベルの品目でみると、HS61.10に分類するセーター類(Sweaters, Pullovers, Vests Etc, Knit Or Crocheted)の輸入増が最も大きい。他の品目も増加している(図-2)。

 

図-2 ミャンマーからの「ニット製衣類」(HS61類)の輸入推移(主要HS4桁分類)
  単位:100万ドル

出所;日本輸入統計

 

2014年から2017年までの日本の「ニット製衣類」の輸入は減少している(表-1)。ところが、国別にみるとミャンマーだけでなく、他の開発途上国からの輸入は増えている。原産地規則の規制緩和後の輸入をみると、カンボジアは2.0倍増、バングラデシュは1.6倍増である。その結果、日本の輸入市場のシェアは、ミャンマーが0.3%から1.1%、カンボジアが1.2%から2.8%、バングラデシュが2.0%から3.5%と高まっている。その間の輸入増加額は、いずれの国も1億ドルを上回る。原産地規則の緩和が、途上国にとって日本向け輸出を有利にする状況に変え、輸入増加につながっていると考えて間違いではない。

 

表-1 日本の「ニット製衣類(HS61類)」の輸入状況

 

原産地規則の緩和は、輸出する途上国にとって有利になる状況に変える。縫製業にとって『中国+1』の動きは、ミャンマー等へ進出する機会を高めている。日本企業を含む外資系縫製企業が進出し日本向けのニット製衣類の生産する機会が増え、日本向け輸出が増える結果をもたらしている。

途上国にとってGSPがもたらす効果はきわめて大きい。GSPの適用有無だけでなく、原産地規則などの適用条件を緩和することが重要であることを示している。

 

【注】 ニット製衣類の原産地規則が2工程基準となったのは2011年4月の改定以降である。それ以前は、加工工程基準として「紡績」―>「編み立て」->「縫製」の3工程を行うことが求められていた。