フラッシュ54
2003年12月28日


国際監視下におかれた廃棄物や稀少動物の国際移動
−  関税分類(HS)の国際貢献  −


(財)国際貿易投資研究所
研究主幹  増田  耕太郎


  環境汚染や有害物質などを含む産業廃棄物、 絶滅の恐れがある野生動物などの国境を超えた取引実態の一部が通関統計から見えてきた。 新たにそれらを対象にした品目を関税分類(HS分類)の番号を設け、各国が2002年から採用したからである。
  HS分類の改正は、貿易の促進を目的に新商品の出現や貿易構造の変化を反映し行われる。 最近の改正(2002年)で、世界関税機関(WCO)は各国が共通して使用するHS分類6桁レベルの品目数を5,112から5,224に増やした。 その中に、貿易量や貿易額の多寡に関係なく、貿易促進以外の役割を果たす目的で設けられた品目がある。

  主なものは
  • みだりに投棄すると環境破壊につながる「廃棄物」
  • 絶滅の危機にある野生の 「稀少動物」
  • 犯罪の温床になりやすい「麻薬・覚せい剤物質」
  1996年の改正では
  • 「オゾン層破壊物質」を対象にした。

  「廃棄物」はバーゼル条約、「稀少動物」はワシントン条約、 「オゾン層破壊物質」のフロンなどはモントリオール議定書で国際間の取り決めがある。 それらの条約を遵守させるため、税関がモノの移動を監視する活動を通じた「国際貢献」をすることが、HS分類新設の狙いである。
「廃棄物」の定義を決めるのは容易ではなかった。 通関手続きを円滑に行うには、「廃棄物」を鉄くず、古紙、 ぼれ切れなどのリサイクルして工業用原材料として使われる再生「資源」と明確に区別することが必要になる。 定義を決めるのに手間取り、1996年の改正に間に合わなかった経緯がある。 「廃棄物」は、廃油、薬剤廃棄物、都市廃棄物、医療廃棄物に分けてHS分類を定めた。 かつて、開発途上国に有害物質などを含むゴミを不当に捨てる事件がたびたびあり、それらの関税分類を設けることで税関は監視しやすくなる。
  「稀少動物」の監視は、種の保存が危ぶまれるワシントン条約の保護動植物が含まれるもののうち、 霊長類、鯨、爬虫類、猛禽類、オウムなどをHS分類で定め、他の動物と区別した。

  HS番号を設ける目的は、そうしたものの貿易を禁止することではない。監視することで国際条約を遵守させることにある。 条約では国際移動を禁止していない。ワシントン条約の保護対象でない野生動物は規制対象ではない。 人工的に繁殖させたものも対象外である。繁殖目的で外国の動物園に貸し出すこともある。
  廃棄物は、発生箇所で処理するのが望ましい。 しかし、電子機器などの産業廃棄物から貴重な貴金属を回収する、そのための回収技術や設備がないために外国に依存することもある。 最終処分場が国内になく複数の国で管理運営することも起こりうる。

  2002年の主要国の通関統計をみると、これらの貿易額や貿易量は小さいか実績がない。貿易促進目的でないから当然である。

  実際の国際間の移動は、通関統計で把握したものより、はるかに大きい可能性がある。 不適切な関税番号で申告し通関してしまう不正行為による国際移動が行われているかも知れない。 密輸によるものは、貿易統計では把握できない。

  HS番号を設ける場合の原則は、世界貿易額が一定以上あることが目安になる。 「国際貢献」目的の品目は、この基本原則に当てはまらない。 また、通関業務が煩わしくなることで各国の税関業務が混乱し通関に支障をきたすことは、貿易促進の観点からは好ましくない。
  そうしたさまざまな制約の下で、関税番号の「国際貢献」はスタートした。 グローバル化の進展で、地球大に広がりつつある「国境を超えた問題」に取り組むには、 各国がバラバラに対応しているのでは限度がある。 それぞれの機関で対処可能な方策等を見出し、積極的に取り組んでいくことが必要であることを痛感させる。

関連記事等
・「IT時代の環境問題」(増田耕太郎)、ITI季刊No.51、2003年春号(pdf-file)