2005/05/18 No.78_6アジア・南米の絆を形成する移民ネットワーク(6/6)〜在日日系人とウチナーンチュ〜
内多允
(財)国際貿易投資研究所 客員研究員
名古屋文理大学 教授
グローカルな基盤形成に取り組むウチナーンチュ
WUBは世界各地でウチナーンチュの国境を越えた連携を強化すべく、さまざまなビジネスに取り組んでいる。南米では今後の投資を行うに当ってIDBグループのIICと提携するようになったことは、新たな力強いパートナーを確保したことになる。さらに、MIFが南米各地の中小企業支援組織を通じてNikkeiDekaseguiとの関係を強化していることも、WUMの南米における基盤強化に貢献するだろう。南米各地の日系社会では、ウチナーンチュの人数が多いからである。前記のペルー日系人協会やブラジルのSEBRAEがMIFと協定を締結する場には、稲嶺沖縄県知事が協定文書の署名当時者ではないが招かれていることからもウチナーンチュの南米における存在の大きさがうかがえる。
WUBの軸足がグローバルな活動を展開すると共に、もう一方の軸足は郷里である沖縄県との関係を重視している。このようなグローバルな視点を持つと同時に、ローカル(沖縄県)も重視する「グローカル」な国際関係は、日本の対外関係を多様化させるためにも重要な要素である。地域の文化や産業の特色を活用した国際交流に、各地域が取り組めば日本を見る世界の目も変わる事が期待できる。日本についての情報が「東京発」に偏ると、その日本像も歪んだ姿になることが懸念される。
中南米の日系人社会は日本人1世の出身地別の同郷人の組織(主に都道府県別組織のいわゆる県人会)が、日本との絆を維持する役割を維持している。日本側の地方自治体の中には、南米側と県人会との交流を通じて日本を知らない若い世代の留学や研修による日本との交流を続けている。世界各地の同郷人とその末裔との交流の目的を経済活動としたことに、ウチナーンチュによるWUBの先駆性がうかがえる。従来の日本人移民と日本との関係は、経済交流については十分発展しているとはいい難い。経済の国際化についても地域の特徴を活用するなら、WUBは沖縄ならではの経済の国際化による成果が期待できるだろう。日本が複雑な国際関係の中で、信頼される地位を保持するためには日本の郷里への熱い思いを持つ世界各地における同郷人の絆が、重要な役割を果たすことをもっと認識したい。世界各地に人的ネットワークを張り巡らしている中国人やユダヤ人、インド人が祖国や郷里と世界を結ぶ外交官の役割を果たし、人的交流が祖国との経済交流を拡大する効果を生んでいる。また祖国が存亡の危機に直面した時、海外の同胞が力強い助けになった事例があることも、重要な視点となろう。
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