一般財団法人 国際貿易投資研究所(ITI)

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2005/05/18 No.78_4アジア・南米の絆を形成する移民ネットワーク(4/6)〜在日日系人とウチナーンチュ〜

内多允
(財)国際貿易投資研究所 客員研究員
名古屋文理大学 教授

ビジネスネットワークを構築するウチナーンチュ〜WUBの活動〜

中南米各地に移住した日本人移民は、出身地別の組織を持っている。いわゆる「県人会」と呼ばれる組織である。これらの組織は親睦を主目的としている。沖縄県人(ウチナーンチュ)は海外の県人会とは別に経済活動のための組織を結成している。このような活動は日系人社会では先駆的な活動である。世界各地のウチナーンチュが経済活動についても連携を強化することを目指して1998年2月、「ワールドワイド・ウチナーンチュ・ビジネス・アソシエーション・インターナショナル(以下、WUB)」が設立された。その本部はハワイに設置された。日本国内には沖縄と関西、東京に支部が設置された。移民集団のビジネスネットワークでは華僑・華人の組織が世界的な規模で活動していることが有名であるが、これに比べて日系人の組織化はまだ遅れている。1997年にハワイで「世界ウチナーンチュ・ビジネス・ネットワーク・ワークショップ」が開催されたことが、翌年のWUB発足につながった。

WUBは2004年8月、アルゼンチン・ブエノスアイレスで第8回世界大会が3日間にわたって開催された。同大会には21か国の支部から約140人が参加して商談会や展示会を行い、そのテーマである「独自性とグローバル化」を目指してウチナーンチュ・ネットワークのビジネス展開の可能性を探った。同時に開催された支部長会議では今後のWUB世界大会を、次の第9回は関西で、第10回をペルーで開催することを決定した。WUBブエノスアイレス大会では経済交流に加えて、海外各地のウチナーンチュの連携に結びつく会議も開かれた。南米と北米各地の沖縄県人会の会長が参加したことにより、県人会長会議が開かれた。

同大会の運営に参加した「沖留会」の活躍も、注目される。同会は沖縄に留学したアルゼンチンの若者(20才代から30才代の2世から4世の日系人)による組織である。沖留会はWUB大会の期間中に「ユース&アイデンティティー会議」を開催して、経済交流の現状と課題、沖縄県人系子弟の教育問題を議論した。中南米では若い世代の日系人の間で日本離れの傾向が見られる。日本語教育もとかく不十分となり、日本離れ現象が起きている若い世代の日系人と日本との絆を維持するためには、WUBやウチナーンチュ世界大会を実現している沖縄県の活動は移住地と郷里との関係強化と世代を超えたネットワーク形成に貢献するだろう。沖縄県人系が多い南米では、移住地と日本の絆を維持するためには、ウチナーンチュ活動に期待するところが大きい。

前記の県人会長会議での報告によると、ボリビアの日系人(1万4,500人)の約60%が沖縄県人系であるが、現地人と結婚した子孫や3世、4世の実態把握は困難であるという。その他の南米各国における日系人に占める沖縄県人系の割合はブラジル(日系人約150万人)で10%、ペルー(約8万人)は70%、アルゼンチン(約3万人)70%と報告された。

WUBは具体的な取引を実現している。アルゼンチンからは沖縄県にワインが輸出された。米国には泡盛が輸出された。WUBアルゼンチン支部のメンバーは03年に資本金3万ドルで、「共進貿易」を設立した。その営業内容は健康食品の輸入販売とアルゼンチン産品の輸出である。共進貿易は04年9月20日、ワイン醸造所を買い取った。この醸造所は1890年にワイン産地であるアンデス山脈のふもとに位置するメンドーサ州マイプー地区に建設されたが約20年前に生産を停止した。同醸造所は05年の生産目標を40万リットルとして、アルゼンチン国内と輸出に半分ずつ出荷することを計画している。

WUBは05年4月、大阪市で「人・食・水KANSAIは沖縄と世界をつなぐ」をテーマに第9回世界大会を開催した。関西地域にはWUB関西が組織されている。同大会には13カ国の16支部から約170人が参加した。同大会でもメンバー企業の商品展示・商談会と並んで、具体的なビジネスの成果を上げるWUBネットワークの強化策についての討議が行われた。

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