一般財団法人 国際貿易投資研究所(ITI)

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フラッシュ

2016/12/20 No.314中国とブラジルの対アフリカ・ポルトガル語圏経済関係

内多允
(一財)国際貿易投資研究所 客員研究員

「多面的な中国のポルトガル語圏への協力政策」

マカオで10月11日と12日、中国・ポルトガル語圏諸国経済貿易協力フォーラムは、第5回閣僚級会議を開催した。同フォーラムの参加国は、中国とポルトガル、ブラジル、東チモール、アンゴラ、カボベルデ、ギニアビサウ、モザンビークの8か国である。中国とポルトガル以外の6か国は、ポルトガルの旧植民地である。

マカオはポルトガルの支配を受けたことから、中国は対ポルトガル語圏諸国交流の拠点都市として、位置付けている。ポルトガルのマカオ支配は16世紀に始まった。ポルトガル人は1557年、マカオにおける居住権を獲得した。

ポルトガルは1848年、マカオの行政権を獲得した。1888年、ポルトガルは清朝との間で友好通商条約を締結した。これによって、ポルトガルのマカオにおける行政権が法的に確立した。清朝はポルトガルがマカオを永久に占領し、第三国に譲渡しないことを承認した。ポルトガルと中国は1979年2月、外交関係を樹立した。

両国はマカオの主権は本来中国にあることを認め、1986年より返還交渉を始めた。1999年12月20日、中国はマカオに、主権回復を宣言した。返還後はマカオ特別行政区として、香港と同様「一国二制度」の下で、自治権を保持している。マカオは今日、中国のポルトガル語圏諸国との交流拠点としての役割を担っている。

一方、ポルトガルはその植民地が独立した後も、経済や外交関係等の分野で、連携関係を維持してきた。また、独立後も旧宗主国の言語であるポルトガル語が、日常言語(或いは公用語)として使用されていることも、ポルトガル語圏諸国間の連携を促す基盤となっている。

ポルトガルとその旧植民地7か国(ブラジル、アンゴラ、モザンビーク、カボベルデ、ギニアビサウ、サントメ・プリンシペ、東チモール)は1996年、ポルトガル語諸国共同体(Comunidade dos Países de Língua Portuguesa 以下略称CPLP)を発足させた。

これら8か国が加盟したCPLPの本部はリスボンに設置され、ポルトガル語圏諸国間の連携強化とポルトガル語の公用語化を目指すことを、基本的な理念としている。加盟国間の連携を強化するための活動内容としては、開発の支援(警察・司法制度の整備や教育や医療の充実)や大学間の交流、移民問題、文化関連の活動、民主化を促すために選挙監視団の派遣などの共同事業を実施している。

中国はCPLP加盟国とは2国間ベースによる関係を強化してきた。また、CPLP加盟国を含むアフリカ地域への影響力を高めてきた。中国は欧州とアフリカ、南米、東南アジアに広がる加盟国を含むCPLPとの連携強化を目指すべく2003年、中国・ポルトガル語圏諸国経済貿易協力フォーラム(Forum for Economic and Trade Co­operation between China and Portuguese speaking Countries、以下フォーラム)を、マカオに設置した。フォーラム参加国は中国とCPLP7か国(サントメ・プリンシペは不参加)の8か国である。

マカオは中国に返還後もポルトガル語が使われていることから、CPLP各国との交流に貢献できる立地条件を具えている。フォーラムによる閣僚級会議の開催回数は2003年、2006年、2010年、2013年、2016年と5回を重ねた。

第5回マカオフォーラム閣僚級会議では、加盟国の貿易拡大や産業育成等に関わる具体的な政策が検討された。その合意事項として今後3か年(2017-2019年)における、中国政府による18項目に及ぶフォーラム加盟国に対する協力分野を決定した。その主な内容は資金協力や経済開発、医療、教育や文化協力など、次の9項目に関係する分野である。

  1. 中国とポルトガル語圏諸国における産業連携と、生産力向上への協力拡大。
  2. 第3国市場開拓への協力
  3. 資金の無償供与と譲許的条件による融資に、それぞれ20億人民元(3億ドル)を負担。これらの資金の使途は農業開発や貿易・投資促進、インフラ整備、産業開発、マラリア予防と治療などに向ける。
  4. 返済期限を迎える無利息借款5億人民元(7,500万ドル)の返済を免除。
  5. 現地における保健や医療協力、対象国への協力に参画している中国の医療機関に対する支援
  6. ポルトガル語圏諸国で、2,000人対象の研修実施や、中国への留学生2,500人に奨学資金を提供。
  7. アジア・アフリカポルトガル語圏諸国の教育・文化施設への支援、各国に中国文化センターのような文化交流施設の設置。
  8. 海洋環境の保全に関連して、気象観測への協力と漁業開発の推進。

中国政府の対ポルトガル語圏交流の拠点としては、マカオにおける関連事業の強化策も、今回のフォーラムで発表された。その関連施設としては、ポルトガル語圏との交流促進の複合施設があげられる。今後建設される同施設の総面積は1万4,200平方メートルで、会議場や関係国の製品・加工食品展示場、情報サービスセンター、ポルトガル語・中国語バイリンガル専門職の訓練センター等の設置が計画されている。

中国は国際関係の構築に当たって人的交流や情報発信などの、いわゆるソフトパワーを重視している。これに関連して、対ポルトガル語圏諸国関係についても中国語の普及と、ポルトガル語による情報発信を重視している。

マカオの強みは、ポルトガル語が中国語と並んで公用語であることである。海外で中国語を普及させるために、中国政府は各国に関連教育機関である孔子学院を設置している。ポルトガル語圏諸国のおける同学院の設置数は、17である。中国でポルトガル語を履修できる大学は20大学以上と、発表されている。

中国のポルトガル語メディアは、放送機関では中国国際放送(CRI)がポルトガル語放送を提供している。CRIはインターネットでオンライ放送と文字情報の両方を提供している。

新華社(中国国営通信社)も、ポルトガル語のニュースサイトを開設している。

中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」の電子版である「人民網」は2015年1月8日、ポルトガル語版を開設した。

「減少した2015年の中国・ポルトガル語圏諸国貿易」

中国・ポルトガル語圏(CPLP)各国間の貿易規模は、中国政府統計による2015年実績(表1)によれば、総額(輸出と輸入の合計)は984.74億ドルである。その内訳は輸出361.68億ドル、輸入623.06億ドルで、中国の輸入超過(261.38億ドル)である。2015年にはポルトガル語圏諸国の主要な輸出品である一次産品の国際相場の下落に加えて、これの輸入国である中国でも需要が減少した。また、輸入国側の経済低迷を反映して中国の工業製品の輸入需要も減少した。このような状況が、2015年の輸出入規模が前年に比べて縮小する事態を招いた。中国の対ポルトガル語圏諸国(8か国)の2015年における輸出入合計額の前年比は、輸出21.6%減,輸入27.9%減であった(表1)。

表1.中国の対ポルトガル語圏諸国輸出入(単位:100万ドル、%)

2015年金額 前年比増減率
輸出 輸入 輸出 輸入
ブラジル 27,428 44,380 -21.5 -14.6
ポルトガル 2,899 1,472 -7.6 -11.6
東チモール 106 0.7 75.6 626.0
アンゴラ 3,722 15,983 -37.7 -48.6
モザンビーク 1,941 452 -1.47 -72.7
カボベルデ 45 0.02 -12.3 648.5
ギニアビサウ 19 18 13.6 -64.3
サントメプリンシペ 8 0.03 37.4 6,906.1
合計 36,168 62,305.75 -21.6 -27.9

(出所)中国・ポルトガル語圏諸国経済貿易協力フォーラム常設事務局による中国政府統計

中国が対CPLP貿易で入超を続けてきた要因としては、輸入規模が大きいブラジルとアンゴラからの輸入が一次産品(ブラジルの大豆と鉄鉱石、アンゴラの原油)であることが影響している。これらの一次産品は、中国における需要が拡大してきたことが、入超傾向を促してきた。同年のアンゴラとブラジルからの輸入額合計603.63億ドルは、対CPLP輸入総額(623.06億ドル)の約97%を占めた。

一方、中国のアンゴラとブラジル両国向け輸出合計額311.5億ドルは、CPLP向け輸出総額の86%を占めている。その中で、ブラジル向け輸出額(274.28億ドル)が76%を占める。

CPLP各国の輸出入の取引相手国の実態を見ると、多くの国で中国が主要な地位を占めている(表2)。CPLPで最大の貿易規模を有するブラジルでは中国の地位は、輸出先で1位(輸出総額に占めるシェア18.6%),輸入国でも2位(輸入総額シェア17.9%)である(表2)。同表によれば、他の多くのCPLP各国の輸出入の国別順位で、中国が上位を占めている。

表2. ポルトガル語圏諸国における中国の輸出入シェア(2015年)

  中国向け輸出 対中国輸入
シェア(%) 順位 シェア(%) 順位
ポルトガル 1.7 4 3.0 2
ブラジル 18.6 1 17.9 2
東チモール ——— ——— ——— ——–
アンゴラ 43.8 1 22.1 1
モザンビーク ——— ——— 12.5 3
カボベルデ ———- ———– 5.5 2
ギニアビサウ 5.7 3 6.5 3
サントメプリンシペ ———- ——- 3.2 3

(出所)1) Central Intelligence Agency(CIA.USA),The World Factbook( Last updated on October 27,2016)

2) 世界貿易機関(WTO)Trade profiles 2016アンゴラとギニアビサウ両国については、出所1)より、その他6か国は、同2)より引用。

「アンゴラに集中する中国の投資」

中国はサブサハラ地域への投資を、拡大してきた。同地域にポルトガル語圏の5か国が含まれる。世界銀行によれば、中国がサブサハラへの投資を拡大してきた背景事情や実態について、以下のように報告した。

「中国・サブサハラ貿易は1990年代後半から2013年にわたって急増した。中国はサブサハラ最大の輸出先となり、開発援助の引き受け元となった。中国が輸入する石油の三分の一は、サブサハラ産である。中国の開発援助によって、中国の民間企業もインフラ部門の投資に参入した。その開発金融については、中国の政府系金融機関が長期的な融資を担った」(出所は参考文献1)。

サブサハラ諸国の中で、ポルトガル語圏(5か国)への中国の投資規模は、アンゴラ向けが最大規模を占め、モザンビークがこれに次いでいる(表3)。同表によれば、2013年末における中国のアフリカ・ポルトガル語圏5か国向け直接投資実績は、ストックとフローの両方にわたって、アンゴラが最も高いシェアを占め、モザンビークがこれに次いでいる。これら2か国が石油等の資源輸出国であることが、中国からの関連開発への参入を促した。他の3か国への中国からの直接投資の実績は極めて少ない。

表3.中国のアフリカ・ポルトガル語圏諸国向け直接投資(2013年、単位:100万ドル、%)

  ストック フロー
金額 シェア 金額 シェア
総額 2,185.44 100 356.07 100
アンゴラ 1,634.74 75 224.05 63
モザンビーク 508.09 23 131.89 37

(注)総額はサブサハラ地域のポルトガル語圏5か国の合計。(出所)参考文献(1)に掲載の統計より作成。

中国政府によるアフリカ・ポルトガル語圏における資金協力も直接投資と同様に、アンゴラとモザンビークに集中している(表4)。中国政府のODA(政府開発援助)は、OECD諸国のように政府ベースの資金協力と民間企業による営利を目的とする資金協力を、厳密に峻別しない。したがって、中国の対外資金協力は民間部門の貿易取引や企業投資と一体となって、運用される傾向が見られる。表4の公的機関の欄の数字は、中国の国有金融機関による投融資額である。

中国政府によるアフリカ・ポルトガル語圏への資金協力は、2000年から2014年にかけての累計(表4のODAと公的機関の合計)は、供与対象4か国合わせて226.16億ドルである。これら4か国の中で、最大の受け入れ国がアンゴラである。その受け入れ総額137.46億ドルは、4か国合計(226.16億ドル)の60.8%を占める。次いでモザンビークが36.1%を占める。中国からアンゴラに供与される資金協力は、ODA(38.96億ドル)よりも公的機関の資金協力(98.50億ドル)が多くなっている。アンゴラでは中国企業が中国の国有金融機関の融資によるインフラ建設に参入していることが、このような資金協力構造を形成することになった。

表4. 中国の対アフリカ・ポルトガル語圏資金協力(単位:100万ドル)

アンゴラモザンビークカボベルデギニアビサウ合計
ODA3,8966,53543912610,996
公的機関9,8501,640———-13011,620
合計13,7468,17543925622,616
(注)金額は2000年-2014年における累計。ODAは中国政府による資金協力、公的機関はODAの範疇に入らない中国の公的金融機関による資金協力。サントメプリンシペに対する資金協力は計上されていない。
(出所)参考資料(2)のTable3より作成。

「対中依存を高めるアンゴラモデル」

中国はアフリカ各国とは貿易と投資、資金協力が連携する方式で、関係を強化している。これには、中国輸出入銀行等の国有銀行による資金協力(譲許的金利による融資や、クレジットラインの設定)の役割が大きい。特に、資源保有国に対しては、このような協力方式が中国の資源確保や、輸出拡大に貢献している。また、中国人の就労機会を提供することによる移民増加を促している。このような、中国への依存を高める典型的な国として、アンゴラがあげられる。世界銀行はこのような、中国の政府主導型経済進出形態を、「アンゴラモデル」と名付けた(参考文献1.16頁)。同文献によれば、このような形態による投資の特徴としては中国企業による資源開発を促していることがあげられる。その主な分野は、資源の生産や輸送に関わるパイプラインや道路、港湾、発電所等の建設である。アンゴラを含むサブサハラは、中国にとって重要な石油供給源である。

中国の資金協力や企業投資の拡大が、中国人就労者を増加させていることも注目される。アンゴラにおける中国人就労者の実態について、以下のような報告を紹介する(出所は参考文献3)。

同報告では、アンゴラにおける中国人の人口は20万人である。同報告の筆者は中国人の人口については、確定的な統計は存在しない。各国の中国大使機関等の統計でも実態よりも少ない数値であると指摘している。アンゴラにおける大規模なインフラ工事、例えば住宅建設や鉄道建設、スポーツスタジアム建設、電気通信網建設等では、労働者の70%が中国人であるという数字も出ている。

アンゴラ社会でも中国人の増加に対する批判が、出ている。中国人コミュニティでの犯罪も表面化している。アンゴラ・中国関係の今後にこれらの社会問題がどのような影響を及ぼすかについても、注目すべきであろう。

「ブラジルはアンゴラとモザンビークを重視」

ブラジルのアフリカ・ポルトガル語圏地域貿易は、アンゴラとモザンビークに集中している。2015年ブラジル政府の統計によれば、同地域との輸出総額は7億4,230万ドル、輸入総額5,120万ドルである。輸出先の国別内訳によれば、アンゴラが同輸出総額の87.3%(6億4,800万ドル)、モザンビークが9.3%(6,910万ドル)を占めた。一方、同地域からの輸入総額5,120万ドルの内訳では、アンゴラからの輸入額が62.1%(3,180万ドル)、モザンビークが36.9%(1,890万ドル)を占めた。2015年におけるブラジルの対アンゴラ貿易の輸出入実績は、前年に比べて輸出は48.6%減、輸入97.1%減であった。モザンビークに対しては輸出8.2%増、輸入は85.6%増を記録した。

これら3か国における主要な貿易対象となっている商品は、石油や金属鉱石、農産品等の一次産品である。ブラジルの対アンゴラ輸入(2015年)では、同総額(3,180万ドル)の99.7%(3,170万ドル)が原油・同関連製品で占められた。ところが、これが2014年の11億1,000万ドルから97%も減少したために、前記のような2015年の対アンゴラ輸入総額の減少を招いた。

一方、対アンゴラ輸入とは対照的に対モザンビーク輸入は、石油・同関連製品が輸入総額を押し上げた。対モザンビーク輸入の92.5%(1,748万ドル)が石油・同関連製品である。同製品は2014年(826万ドル)からほぼ倍増した。

アンゴラとモザンビークの資源輸出については、ブラジルのペトロブラス(Petrobras,国営石油会社)やVale S.A.(以下Vale、総合資源会社)が関与しており、またこれら両国に進出している。ブラジル企業の進出具体例として、以下の事例が報告されている(出所は参考文献4)。

ペトロブラスはアンゴラでは合弁企業を設立して、石油と天然ガスを採掘している。合弁企業はブラジルの投資銀行であるBTG Pacutualと対等出資で2013年、発足した。同合弁企業はアンゴラを含むサブ・サハラアフリカ各国で、石油資源の開発を目的としている。ペトロブラスはモザンビークで、サトウキビを原料とするエタノールを生産している。この生産企業は、同社と現地資本による合弁企業である。ブラジルは国策として、石油の代替資源であるエタノール生産を、アフリカ各国で拡大することを目指している。

Valeはアンゴラでは主にニッケルや銅などの鉱石資源の調査に留まっているが、モザンビークでは炭鉱に加えて鉄道や港湾も経営している。ブラジルのアフリカへの直接投資で、前記の資源関連より企業数が多い部門はアグリビジネスである。アンゴラではメイズ、大豆、豆類の生産、カシューナッツや植物油の加工があげられる。2009年にはブラジル・アンゴラ企業の合弁形態で3万ヘクタールのサトウキビ農園が発足した。同農園はエタノール生産プラント向けの原料となるサトウキビを供給する。モザンビークでもブラジル企業連合(the Brazilian Confederation of Biofuel Companies,略称APLA)と現地企業の合弁によるバイオ燃料生産への投資が報道された(以上のアグリビジネス投資の具体例は、参考文献5より引用)。ブラジルの民間農園は、中南米地域と、アフリカで農地を取得している。モザンビークやその他のアフリカ諸国における具体例については、拙稿(参考文献6)を参照されたい。

ブラジル企業のアフリカ向け輸出や直接投資に対する金融については、政府系金融機関であるBNDES(ブラジル社会開発銀行)の役割が重要な地位を保持してきた。同行は2013年、ヨハネスブルグ(南アフリカ)に事務所を開設して、アフリカ地域におけるブラジル企業支援体制を強化した。しかし、2015年にブラジル政府機関や国営企業、民間大企業に対する汚職疑惑への追及が厳しくなるに伴って、BNDESもその渦中に巻き込まれるようになった。その影響をうけて、同行の融資が停止される事例が発生している。2016年11月の報道によれば、BNDESは25件の海外向けサービス取引について70億ドルの融資枠を設定していた。この内、23億ドルの融資は実行されたが、残り47億ドルについては停止されとのことである。停止対象の中にはモザンビークやその他の中南米諸国やガーナ向けの取引が含まれる。

ポルトガル語圏アフリカ諸国と取引している国営企業のペトロブラスも、汚職疑惑の渦中にあり、従来の取引見直しが迫られている。また、民間大手建設会社であるオデブレヒトもアンゴラやモザンビークで投資を展開してきたが、汚職疑惑の影響で、関連事業の停滞が懸念されるだろう。

「ブラジルはアフリカへの進出拠点」

ポルトガル語を国語とするブラジルが、ポルトガル語圏アフリカとのコミュニケーションに有利な立地条件を具えていることは、言うまでもない。さらに、地理的条件についてはどうだろうか。日本から地球儀をみると、どちらも遠隔地である。しかし、大西洋を中心にみれば、ブラジルとアフリカはそう遠くない。特にブラジルとアンゴラは大西洋を挟んでまさに「お向かいさん」といった感じである。歴史的にも両国は関係が深い。奴隷貿易の時代には、アンゴラからもブラジルへの人的移動が相次いだ。アンゴラは1975年、ポルトガルから独立した。この独立を世界で最も早く承認したのが、ブラジルである。アンゴラではブラジルの迅速な承認を今でも高く評価している。地理的な近さと言語の共通性を活かして、アンゴラ人対象の研修を、ブラジルで実施して、人材育成に貢献している例も伝えられている。

日本ブラジル両国企業が、連携する最近の事例としては、モザンビークで三井物産がVALEの炭鉱と鉄道・港湾インフラ事業に出資参加したことがあげられる。三井物産の発表(2016年9月30日付け)によれば、炭鉱に対する初期投融資額は2億5,500万ドル、インフラ事業の初期投融資額は3億4,800万ドルである。本事業のモアティーズ炭鉱は世界有数の炭鉱であることから、モザンビークの有力な輸出商品に成長することが期待される。また、鉄道の充実は石炭以外の貨物輸送にも資することが期待される。VALEはブラジルで大規模鉄鉱石鉱山と鉄道・港湾インフラの一体開発と運用の実績を積み上げてきた。また、ポルトガル語による共通の文化的な背景を有するブラジル企業の強みが現地で生かされることはいうまでもない。

<主な参考文献>

1) Miria Pigato and Wenxia Tang, [2015]“China and Africa”,Washington DC,World Bank

2) “Africa Spectrum,Vol.50 2015 No.3” GIGA German Institute of Global and Area Studies, Institute of African Affairs, Hamburg Germany

3) Jonas Parrello-Plesner,[2016]“China’s Risk Map in the The South Atlantic” The German Marshall Fund of the United States(GMF),Washington DC

4) BRICS Policy Center[2015],“Chinese and Brazilian Private Firms in Sub-Saharan Africa”, Rio de Janeiro

5) Agence Française de Développenment[2013],Working Paper 134,Paris

6) 拙稿「中南米における外資による農地取得の現状」[2013]『季刊国際貿易と投資』No.93
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