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2023/03/13 No.518ちょっと気の早い台湾総統選挙予測~2024年総統選挙は三つ巴の戦いか~

宇佐美喜昭
(一財)国際貿易投資研究所 客員研究員

2024年1月、台湾で総統選挙が行われる。3選禁止のため、蔡英文総統は立候補できない。台湾海峡有事が警戒される中、次期総統選挙は世界中の関心の的となる。有力候補を擁立するのは、民主進歩党(以下、「民進党」)、中国国民党(以下、「国民党」)、台湾民衆党(以下、「民衆党」)の3党とみられ3つ巴となると推測されている。候補者が誰になるかも含めて、次期総統選挙を展望する。

1. 数々の実績を残す蔡英文政権

蔡英文総統の一期目の就任は2016年5月。2015年の台湾の名目経済成長率は0.75%と2009年以来の低さを記録した中での船出となった。一期目の総統就任演説で蔡総統は、経済については台湾経済の生まれ変わりと新しい経済発展モデルの追求に言及しつつ、「先ず積極的に多国間および二国間の経済協力等、環太平洋パートナーシップ協定(以下、TPP)、地域的な包括的経済連携協定(以下、RCEP)、を含む自由貿易交渉に参加し、新しい南下政策を促進し、単一市場に依存し過ぎていた過去と別れを告げる」、とした。

折しも、中国の事業環境は、第12次5か年計画(2011~15年)で最低賃金を年平均13%以上引き上げるという賃金政策により急速に悪化した。2010年頃の中国の工場労働者の人件費は台湾の3割弱、これが蔡総統就任前後には6割に縮まった。加えて2014年の環境保護法改正に基づく取り締りは行政と進出企業との摩擦を増やし、軽工業を中心に企業の中国離れを引き起こした。

設備更新による環境規制への対応、機械化による人件費抑制や生産拠点を比較的賃金が安い内陸部に移転するなどで対応してきた電子産業も、第三国でのサプライチェーン構築に踏み出した。電子部品産業は膨大な水と電力を使用する。環境規制強化に加え、水害の多発もEMS企業にとってはリスクと映った。

心理的なリスクも加わった。かつて台湾企業の中国駐在員は、台湾独立や人権問題などへの言動に気をつけていれば経済活動は自由に行えた。しかし、習近平政権発足後、中国当局が強権姿勢に転じたことから、企業は警戒感を強めた。特に香港の民主化弾圧は、少なからず衝撃を与えた。

コロナ禍におけるロックダウンも中国を見限る要因となった。特に2022年の上海のロックダウンは生産にも流通にも大きな影響を及ぼし、サプライチェーンの中国外への移転に慎重だった受託生産の委託元の米国系企業も中国を安定した生産基地と見做さなくなった。

図1. 台湾の対中投資の推移(香港、マカオを除く)

注. 許可ベース
出所: 行政院統計総處


一方、台湾の中国向け輸出比率は過去10年、中国本土が25~30%、香港は13~14%、合計で40%前後で推移しており、大きな変化はない。ただし、台湾の対中輸出は殆どが電子部品であり、台湾の対中輸出依存度が高いというよりも、中国電子産業の台湾依存度が高いと見た方が妥当である。それでも2022年の台湾の対中輸出比率は38.8%と、過去10年では最低となった。40%を下回ったのは蔡総統就任以来初めてとなる6年ぶりだ。今後も、台湾企業の東南アジア、インドでのサプライチェーンが拡大するにつれて、対中輸出比率は漸減すると考えられる。

台湾は2021年9月にTPPへの参加を申請した。2022年10月にシンガポールで開催された加盟国の閣僚級によるTPP委員会では、英国との交渉進展を歓迎するとしたものの、台湾については具体的な言及はなく、共同声明ではTPPの高い水準のルールを満たすかなどの基準に沿って対応を継続するとのみ記された。ただし、台湾の貿易ルールは先進国水準に近いため、経済的なハードルはそれほど高くない。課題は、親中姿勢を見せるいくつかの国の台湾のTPP加入に難色を示す政治的なハードルだろう。加盟にあたっては全加盟国との合意が必要だが、いくつかの国は中国の加盟を重視するようなコメントを出している。RCEPは、中国はすでに加盟国なので、よりハードルが高い。

蔡英文総統就任後の経済的成果はどうであっただろうか。2016年、1期目の総統就任直前の台湾は、2四半期連続のマイナス成長とリセッション状態にあったが、就任後はプラス成長に転じ、2期目の2021年第1四半期には9.20%という高成長を遂げた。コロナ禍からの回復需要を見込む世界的な半導体需要の増加を踏まえた設備投資と電子機器の輸出が経済成長を牽引した。

しかし、米国がインフレ抑制のため高金利政策をとった影響で電子機器の先行き需要が不透明となり、2022年第4四半期には輸出が2桁の落ち込みを見せ、実質経済成長率も再びマイナスに転じた。同年の年間経済成長率も2016年以来最低の2.45%に落ち込んだ。2023年はさらに低い2.12%と予測されている。

図2. 実質経済成長率の推移(2020年~2022年)

出所: 行政院統計総處


一方、蔡英文総統は、「持続的な社会」、「社会のセーフティネット強化」、「社会の公平と正義」、「両岸(台中)関係を含む地域の平和と発展」、「地球の市民としての責任と世界の課題への貢献」を目指してきた。紐解くと、市民に団結を促し、台湾への貢献に加え、中国を含む周辺地域の安定と発展に寄与し、さらにグローバルな責任と貢献を求めてきた。

端的な例が、コロナ禍におけるマスク外交だろう。マスク輸入国の台湾において、先ず業界関係者を集めてマスク量産への協力と支援の枠組みをつくり、瞬く間に軌道に乗せ、マスク輸出超過国に転じた。次いで、まだ国内でマスクが足りないにも関わらず、困っている友邦国に外交部を通じてマスクを無償で提供した。日本もその恩恵に預かった。加えて必要とする友邦国へは大量の医療用ガウンも送った。市民はその政府方針を支持した。

欧州、とりわけ医療資源に窮していた中東欧諸国は台湾からの支援に感謝を伝えるとともに、コロナ禍の漸次収束機会を捉えて、要人交流や経済交流の拡大に踏み切った。

表1. 海外要人の主な訪台者 (2021年~)

出所: 報道資料より筆者作成

中東欧諸国の動きに神経を尖らせ、露骨に干渉したのは中国だ。しかし、各国は中国の圧力を跳ね除け、台湾との交流を拡大した。ソ連時代にソ連の圧力下におかれた経験があり民主化を成し遂げた国々にとって、大国主義、権威主義を振りかざす中国は好まざる相手と映った。また、中東欧諸国への干渉は同じEU加盟国であるドイツやフランスの反感もかった。リトアニアに至っては台湾との相互の代表所開設にあたり、中国との外交関係を大使級から領事級に格下げされても挫けなかった。

そうした交流を経て、台湾も蒋介石政権以来の圧政を経て民主主義を勝ち取ったという点において、中東欧諸国と似た経験を持ち、西側諸国と価値観を同じくする国であるということがEU諸国にも伝わっていった。まさにグローバルな責任と貢献が友邦国と意を通じる結果となった。

特に、中国当局の指示に基づく香港での民主化弾圧以降、西側諸国は中国の権威主義的な行動に警戒を強め、台湾海峡有事があると真剣に捉え始めた。台湾は米国から日本、東南アジア、インド、中東を経て欧州に至る航路の要衝だ。中国当局の、台湾への武力行使もあり得るという恫喝は、この西側の生命線を脅かすという地政学的不安を惹起させ、台湾海峡有事の抑止に向けて、安全保障分野も含む台湾と西側諸国の連帯と結束を強めることとなった。特に、ロシアのウクライナ侵攻以降、西側諸国の中国への警戒は強まっており、台湾との連携強化が日々図られている。

2. 総統選は3人の有力候補による3つ巴か

有力政党の次期総統選の候補者はまだ決まっていない。これから7月頃にかけてそれぞれ党内手続きを経て決定される。世論調査を踏まえると、各党の事情は次のようになる。

先ず民進党を見てみる。以下は2023年2月の世論調査による有力者の総統候補としての支持率である。頼清徳・副総統(元行政院長)、陳健仁・行政院長(前副総統)、蘇貞昌・前行政院長の3人である。

表2. 民進党有力者の総統候補としての世論の支持率(2023年2月)

出所: 台湾民意基金会

民進党は党の独自の世論調査を基に候補を決定する。頼清徳副総統は前回の総統選挙で、民進党内で立候補したが、蔡英文総統に敗れ副総統候補にまわった。陳健仁・行政院長は、SARSの時の衛生署長(厚生大臣)で、副総統時代にも新型コロナ対策で立法院と行政院との間を調整し、台湾の厚生行政を支えた。蔡英文総統に近く、周囲から総統候補としての期待が大きいものの、学者肌で本人は固辞しているとされる。蘇貞昌・前行政院長は弁護士出身で、民進党の長老の一人だが、こちらも出馬の意志は希薄とされる。順当なら頼清徳・副総統が民進党の総統候補に選出されるだろう。

次いで世論に基づく国民党の有力候補を見てみる。候友誼・新北市長、郭台銘・鴻海精密工業創業者、朱立倫・国民党主席(前新北市長)の3人である。

表3. 国民党有力者の総統候補としての世論の支持率(2023年2月)

出所: 台湾民意基金会

順当なら本省人(台湾籍)の候友誼・新北市長が候補になりそうだが、内実は複雑だ。郭台銘氏は大陸籍である外省人2世で、前回総統選挙で国民党内の予備選で敗退し、国民党の党籍から離脱した。政治経験はないが、中国での事業展開を通じて中国共産党上層部と親密な関係にある。今回はまだ立候補を表明していないが、総統選への意欲は強いとされ、国民党への復帰、あるいは党外からの立候補があり得るとみられている。しかし、同氏は、中国時報などの媒体を持つ旺旺中時媒体集団の蔡衍明会長と犬猿の仲にある。蔡会長は国民党重鎮に近い外省人二世で、中国共産党とも友誼があるが、傘下メディアを使って郭台銘氏の追い落としを画策しているとされる。

朱立倫・国民党主席も外省人二世で、2016年の総統選挙では蔡英文氏に敗れた。世論の支持率は低いながらも総統選への意欲は捨てていないとされる。

焦点の第一幕は、郭台銘氏の追い落としだ。これが確定した後に第二幕として候友誼氏と朱立倫氏の党内闘争、あるいは蔣万安・台北市長などこれまで候補にあがっていない人が担ぎ上げられる可能性が取り沙汰されている。

蔣万安・台北市長は蒋介石の曾孫、蒋経国の孫とされ、国民党の将来を担うホープとみなされている。2月には上海市の幹部を招聘するなど、中国共産党とのパイプづくりに勤しんでおり、ダークホースとみられている。いずれにしろ誰が候補になろうが国民党は一枚岩になり切れないと目される。

3人目の有力候補は民衆党の何文哲・主席(前台北市長だ)。2期務めた台北市長から離れ、現在は総統選出馬の準備をしているとみられている。

3. 経済状況で有利にたった国民党

各党の党内事情も踏まえた上で、以下、総統選挙を展望する。2022年第4四半期の経済成長率は、米国の高金利政策の影響で輸出が二桁減となったことから、マイナス成長となった。行政院の見通しとして、経済成長率の低迷は2023年第2四半期まで続くとみられており、民進党には逆風、国民党の支持率に追い風が吹いている。一方で国民党内が混沌とし始めたのは、政権交代の可能性が出てきたからに他ならない。

2023年2月時点の世論通り、順当に頼清徳・副総統、候友誼・新北市長、何文哲・前台北市長が立候補すると仮定した場合、支持率は次の通りだ。2023年2月の台湾民意基金会による世論調査では、民進党26.9%に対し国民党27.1%と政党支持率も国民党が上回った。

表4. 総統候補の世論支持率(2023年2月)

出所: 台湾民意基金会

3人の略歴と信条は次の通り。

表5. 総統候補者の略歴と信条

出所: 各種資料より筆者作成

総統選挙の争点となるのは、第一に有権者の身の回りの経済状況、第二に社会の安定、第三に両岸関係を含む国際関係の安定、第四に党内支持の結束と目される。この点、経済状況について民進党は現在不利な立場にある。

1年前に比べて生活は悪くなったかを問う世論調査では、変わらないが6割を占め安定しているものの、悪くなったが2021年1月の23.7%から2023年1月は32.2%に上昇した。失業率は若干の改善がみられるものの、物価上昇率が反映した結果と思われる。

表6. 失業率の推移

出所: 行政院統計総處

表7. 物価上昇率の推移

出所: 行政院統計総處

行政院の展望によると経済が好転するのは2023年第3四半期とされる。総統選挙の佳境の時に経済情勢が好転しているかは、選挙結果を左右する大きな要因となるだろう。

2番目の社会の安定についてはどうだろうか。頼清徳・副総統は台南市長、行政院長、副総統の職を通じて、行政手腕に定評がある。候友誼・新北市長は、警察官僚時代に治安対策で辣腕を振るい、国民党員であるにもかかわらず民進党の陳水扁政権下で史上最年少の警察長官に抜擢された。新北市長就任後のコロナ対策でも、6つの直轄市の市長の中では市民の評価が最も高い。何文哲・前台北市長は無所属にも関わらず、2期目の台北市長選挙で民進党候補、国民党候補を破って当選するなど、やはり行政手腕が評価されている。この点では3人とも甲乙つけ難い。評価の分かれ目は3番目の国際関係と4番目の党内支持の結束となりそうだ。

4. 国際関係と党内結束では民進党に有利か

国際関係においては、3人とも親日家として知られ、日本の地方との交流や政界との交流もある。候友誼・新北市長はパフォーマンス好きとして知られ、過去には「こち亀」の両津勘吉のコスプレを披露している。何文哲・民衆党主席もサブカルチャー(大衆文化)好きで知られ、「ONE PIECE」のルフィやチョッパー、台北市長になってからは、名探偵コナンの江戸川コナン、さらにブラックジャックのコスプレもしたことがある。

対米関係では、米国・ハーバード大学留学経験がある頼清徳・副総統が中央政府での経験もあり最もパイプが太いと目されるが、何文哲・民衆党主席も医療関係で滞米経験がある。

差異が出るとすれば対中関係だろう。2022年12月の国立政治大学選挙管理センターによる台湾市民のアイデンティティ調査結果は、「台湾人」60.8%、「台湾人で中国人」32.9%、「中国人」2.7%、無回答3.6%であった。また、台湾民意基金会による台湾の将来像に関する2023年2月調査では、「台湾独立」44.0%、「現状維持」24.0%、「中国との統一」12.3%、「不明」19.7%であった。

これらに鑑みると、総統選挙では台湾独立ないし現状維持の立場を鮮明にしない限り有権者の支持を得ることは難しいことがうかがえる。

また、台湾海峡有事への備えとして、現状4か月の義務兵役を1年に延長するとした蔡英文政権の方針について、公式表明直前の2022年12月に台湾民意基金会が行った世論調査では支持は73.2%、不支持は17.6%となっており、台湾防衛への意識が高まっていることが推察される。この点、中国に毅然とした態度を取る頼清徳・副総統が有利なのは間違いない。

新北市は、台湾で有権者数が最も多い行政区域で、新北市長は台北市長と並び、最も総統に近い登竜門と言われる。しかし、候友誼・新北市長は、国民党重鎮や党支持層の中国宥和派に気を遣わなければならず、対中姿勢では歯切れが悪い。2023年2月に国民党の夏立言・副主席が訪中し、中国国務院の台湾事務弁公室の宋濤主任と会談した折に、「台湾独立に反対する立場を確認し、交流を強化していくことで一致した」とした党中央の動きについて特にコメントしていない。夏立言・副主席は外省人で、馬英九・前総統の最側近として知られる。また候友誼市長は、朱立倫主席が新北市長の折に副市長に登用された経緯があるものの、現在は距離があるとされる。

何文哲・民衆党主席は海外長距離の出張でもエコノミークラスを使い、空港でもラウンジを使わず一般の人に交じりスマホで連絡をとっている姿が目撃されるなど庶民派として支持を得ているが、様々な舌禍事件を起こしており敵対者も多い。特に、台独派と目されていたところ、台北市長就任後に中国に融和的な発言が目立つようになってから、台独派や現状維持派だけでなく中国の反体制派からも警戒されている。ただし、祖父が二二八事件(注)で粛清された経験から、国民党に対しては妥協を許さない姿勢を貫いている。

党内結束はどうか。民進党は様々な派閥の集合体で、蔡英文総統は対中関係では「天然独」(台湾は中国と関係なく、元から独立した存在)の立場をとり、陳健仁・行政院長と近い。「台湾独立」は、両岸関係の現状維持を壊すものとして、陳水扁総統の時には欧米、特に米国の警戒を呼び込んだ。しかしながら、米国のマーク・エスパー・前国防長官が「もはや一つの中国政策は不要」と言い切るなど、米国政府の姿勢も大きく変化している。頼清徳・副総統が穏便な表現にとどめるならば党内結束には影響しないと考えられる。

候友誼・新北市長はこの点では前述のとおり、党内結束の支持を得られるかハンディを負っている。党内では未だに中国との親密な交流が台湾海峡の緊張を和らげるとする外省人長老が隠然とした影響力を持っている。有権者と党長老との意識の乖離は大きく、調整は難しい。なお何文哲・民衆党主席は党のオーナーであり、結束について問題はない。

もう一つ、候友誼・新北市長については悩ましい問題がある。2022年11月の選挙で新北市長に再選されたばかりであり、総統選挙出馬となると休職ないし辞職を余儀なくされる。前回の総統選挙で国民党の韓国瑜・高雄市長が長らく休職して総統選挙を戦い、あげくに高雄市長をリコールされたことに鑑みると、新北市民の総統選挙出馬への強い支持がない限り盤石の態勢が取りづらい。これは、ダークホースと目される蔣万安・台北市長についても言える。

従って、国民党は党内対立を含む様々なハンディを背負いつつ総統選挙を戦うこととなるため、目下の世論の支持率は必ずしもあてにすることはできないだろう。

蔡英文総統も次期総統選挙を見据えて大きな戦略を考えているようだ。選挙戦を念頭に4月にも渡米することが検討されている。訪米の名目は、中米の国交締結国訪問の経由地としてだが、総統1期目の選挙前に講演をしたワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)、母校であるニューヨーク州のコーネル大、或いはカリフォルニア州のロナルド・レーガン大統領図書館での講演や、ケビン・マッカーシー下院議長など有力者との懇談が取り沙汰されている。米国政府は台湾要人との接触の自粛を2021年1月に解いている。昨今の台湾海峡の緊張を踏まえて、政府の高位関係者との懇談、さらにはキャンプデービッドでジョー・バイデン大統領との極秘会談が行われるようなことになると、総統選挙へ大きく影響するだけでなく、台湾の国際関係にも新たな歴史を刻むこととなる。

注. 1947年2月27日にタバコの露店売りをしていた40歳の女性を官警が銃剣で殴打し金品を没収、翌2月28日に台北市庁舎前に抗議のため集まった市民に憲兵隊が発砲したことに端を発する台湾市民に対する虐殺事件。瞬く間に台湾全土に広がった抗議活動の鎮圧のため、国民党側は中国本土から増援の軍を送り、日本統治下で育った知識階級を中心に台湾市民を見境なく粛清・殺害した。公的調査の暫定発表では、犠牲者は1万8,000~2万8,000人とされるが、詳細は未だ判っていない。背景には日本の敗戦に伴う台湾接収のため来台した官警や軍人らよる汚職、略奪、殺人や強姦などの横行があげられている。経済的にも、物資の組織的略奪により市民生活の必需品不足が深刻化しており、国民党による施政は台湾の市民から強い反感を買っていた。

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