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フラッシュ

2025/06/25 No.541カンボジアに見る中国の影

藤村学
青山学院大学教授

ドナルド・トランプ米大統領が、相互関税を公表(2025年4月2日)した直後に、習近平国家主席はASEANの3か国(ベトナム、インドネシア、カンボジア)に反関税の旅(「Xi Jinping’s Anti-Tariff Tour」WSJ紙)に出た。最後の訪問地となったカンボジアでは、投資、貿易、金融に関する37の文書に調印したというが、中でも注目を集めたのが、中国が「フナン・テチョ運河」の建設費を負担することを明らかにしたことであった。

24年9月初旬、ベトナムとの国境街のバベットを起点として、国道1号線、国道2号線の沿線のインフラ開発、工業団地の整備状況を視察した。そこで垣間見たのが中国のさまざまな形態のプレゼンスである。メコン地域の経済回廊を定点観測してきた藤村学・青山学院大学教授にカンボジアにおける中国のプレゼンス等について伺った。(聞き手 大木博巳国際貿易投資研究所研究主幹)[挿入写真は一部を除いて藤村教授撮影]

Q.ベトナム南部タイニン省のモクバイから国際国境を通過してカンボジアのスバイリエン州バベットに入国しました。昼過ぎでしたが、国境通過待ちのトラックが列をなしているのかと思いきや、一台も見当たらなかった。カンボジアの国際国境では最も交通量が多いと思っていましたが、意外でした。また、バベット側の様子をどう見ましたか。

A. ベトナム側のモクバイ国境は一般車両用のメイン道路とは別に、その北側約150m地点に約1kmにわたってトラックやバスなど重量車両用のバイパス道路があります。私が2016年にホーチミンから早朝出発する国際バスを利用して越境したときには、このバイパス道路にコンテナトラックが列をなしていました。

今回はそのバイパス道路の国境付近に貨物車両をほとんど見かけませんでした。越境前にゲート入り口手前のカフェで休憩し、店のおばさんに聞いたところ、ベトナム側からコンテナトラックがカンボジアへ入っていく「ラッシュアワー」は朝6時ごろから始まり、一方、それらのトラックが積み荷を降ろしてUターンし戻ってくるラッシュアワーは16時ごろからだということです。今回はたまたま国境が最も静かな時間帯に越境したということでしょう。

実際、越境後にバベット側で16時ごろ国境ゲートを観察すると、とても混雑しており、カンボジアからベトナムへ向かうコンテナトレーラーが多く、昼頃とは対照的でした。

バベット国境ゲートから約2km区間の国道1号線沿いにはカジノホテルが林立しています。目視できただけでもGood Luck Casino(銀河国際娯楽城)、Crown Casino、Dynasty、Le Macau、Golden Galaxy Casino、Win Win Casino(永[月生]娯楽城)といった具合です。ベトナム側の静けさとは対照的です。2016年視察時と比べ、カジノ施設の集積が数倍進んだ印象です。カンボジア人通訳の描写を借りれば「シハヌークビルの(オンラインカジノなどの)中国ビジネスがバベットに引っ越してきた」というような状態です。

また、1号線沿いには漢字表記の宿泊施設や各種商業施設が以下のようにあふれています:「銀河大酒店」「巴城商業歩行街」「唐人街」「中国羊州拉麺」「国鵬假日酒店」「新威尼斯度假酒店」「東方巴黎」「海門魚仔店」「1919商行」「69国際 酒[口巴]&KTV」「中国理髪[女尼]造型」「亜太科技手机、電脳、監控」「美容院 洗髪」「天天超市 [口因]酒」「老家羊湯[火会]面」「潮汕大排档」「美容整形外科-越南医院-5星」「牙家診所(歯科)」「大安大酒店」「保健按摩小時」「台球(ビリヤード)倶楽部92」…。

カジノビジネスに関わる中国語圏のビジネスマンの移住が多いのかもしれません。また、国境近くに台湾資本や中国資本が開発した経済特区開発も多く、それらに入居が期待される中国系企業を対象にした先行投資の面もあるのでしょう。ジェトロ報道によると、最近カンボジア開発評議会(CDC)が認可する経済特区内の適格投資案件の大半が中国企業ということです。

Q. 2010年に、バベットのマンハッタン経済特区(以下、SEZ)を訪問する機会がありました。開業して間もない時期で台湾、米国、ベトナム、中国企業が数社入居していました。日系企業も中国の生産拠点を引き払って来るということでした。当時、周辺はまだ密林で、地盤が悪いと聞きました。マンハッタンSEZの他に、タイセンSEZ、ドラゴンキングSEZが誘致活動をしていました。当時と比べて、現在の国境付近のSEZは様代わりです。

A. 今回は事前にアポを取っておらず、国境から約6km地点にほぼ向かい合って立地するマンハッタンSEZとタイセンSEZの構内を車でざっと見て回りました。ドラゴンキングSEZ(国境から約12km地点)は確認する余裕がありませんでした。

マンハッタンSEZ(曼哈頓経済特区)は台湾資本による開発で、2005年設立、敷地面積500ha。20年時点のJICA情報では29社(ほとんどが台湾系)が稼働もしくは建設中でした。西側のメインストリートから反時計回りに目視およびグーグルマップで確認できた入居企業は以下の通りです:Speedtech Industrial(自転車製造)、 MEDITECS、Jifa SOK、Qindao Yiqing(自転車?)、King Maker Footwear、Xue Da Dongsheng Textile、Towa Industry、Power Home Product、G.U. Industrial(宇宏実業)、SAN Feng、Peace Faith Wire &Cable、Elite、CK Sports、Angkor Spring、Kaoway Sports、Evergrand Bicycle、Top Sports Textile、SHEICO、Royne(日系縫製)、Morofuji(日系)…。敷地を順次拡張してきたせいか、土地はまだ余っている様子でした。

タイセン・バベットSEZ(大成集団経済特区)も2006年設立で、敷地面積は152haで、華僑系カンボジア資本による開発という情報があります。20年時点のJICA情報では22社が稼働もしくは建設中、うち日系企業は12社ということですが、視察時の印象ではそれ以降少し減っているのではないかと感じました。メインストリートの右手(東側)からおおむね反時計回りに目視およびグーグルマップで確認できた入居企業は以下の通りです: Depot Tec Srum(倉庫)、Biwin Garment(佰運服装)、Japana、Houseed、Fopack(福菜)(倉庫)、Young Star Chemical(紅城泰)、Tokyo Parts Industrial、Youngs Electric、Cycletech(自転車)、Le Hoo Furniture、Simple Packing Products、Da Wang Paper、Gan Yao Xing Lighting、Ozmech Machinery、TM Packing、A & J Industgry、Smart Tech。

今回見逃しましたが、国境から11km地点にタイセン・バベットSEZIIがあり、20年時点のJICA情報では敷地面積48haで、7社が稼働もしくは建設中、うち日系4社ということです。

2010年前後まではバベット国境付近のSEZは以上の3か所程度だったと思いますが、それ以降SEZが増えており、今回1号線沿いに確認できただけでも、国境から約12km地点右手にIntervia Automobile Industry Complex SEZ (2017年設立)、約15km地点左手に龍旺経済特区、約18km地点左手にShandon Sunshell SEZ(山東桑莎経済特区、2013年設立)、約23km地点右手にHi-Park SEZ(2013年設立)、約25km地点右手にGiga SEZ(億豊経済特区)といった具合です。山東桑莎経済特区については20年時点のJICA情報があり、総面積220ha、開発業者は中国系、10社稼働もしくは建設中、うち日系1社ということです。

Q. バベット国境から約25km離れた場所に位置するGiga SEZ(億豊経済特区)では飛び込みでしたが、オーナーの台湾人経営者と面談することができました。

A. 同SEZは敷地面積220ha、完売で約50社が入居、うち42社が製造業。台湾系、中国系が混在しているとのことです。米系と豪州系の入居はありますが、日系はまだないとのことです。入居企業の業種は家具、プラスチック材料、クリスマス用照明装置(北米向けに生産)など。SEZ全体で労働者を約1万8,000人雇用、月給は204ドルをベースとして各種福利厚生を加えて平均月給250ドル位だとのことです。

台湾人オーナー氏のカンボジア進出は2012年で、マンハッタンSEZにカーテン製造企業を立ち上げ、5,000人規模を雇用したそうです。その後、自身のSEZ設立を決め、カンボジア政府にSEZ設立を申請し、9か月ほどで承認されたそうです。13年に土地を確保して「巴域広場」という生活圏基盤を整備し始め、16年にこのSEZを開業しました。彼はカンボジアのIDを持っているので、敷地確保のために現地パートナーは不要だったとのことです。強者の渡り鳥経営者のようで、中国、メキシコ、アメリカ、アフリカにも拠点を持つそうです。ミャンマーでも土地を確保したが、クーデターにより進出を見送ったそうです。

スバイリエン州には現在SEZが10か所以上稼働しており、中国系が申請しているものが稼働すれば25年中に15か所を超えるのではないかと言います。新たに必要な労働者が1.5~2万人になりそうで、労働者の争奪になるかもしれないとのことです。

バベットにおけるカジノの乱立について聞くと、18年まではスローペースだったが、オンラインカジノがブームとなりここ数年で急増したらしいです。Giga SEZのカンボジア人従業員が依存症にならないよう、SEZ内に花園酒店、カフェ、運動中心などレクリエーション施設(麻雀場も含む)を揃えているということです。

ちなみにGiga SEZはベトナム・ロンアン省との新国境Preyvorからも33kmと近く、その立地を生かして23年に姉妹特区として同国境から北方向14km地点にFoison(富裕鎮) SEZを開業しました。この2つのSEZは、カンボジア南東部とベトナム南部の越境経済統合が1号線の「線」から、複数ルートを含む「面」へと進化していることを示しています。

Q. バベットからプノンペン近郊まで約160kmを3時間半ほどで到達できました。これは2015年4月に日本の政府開発援助(ODA)で開通した「つばさ橋」のおかげです。それ以前はフェリーに乗り換えてメコン川を渡っていました。同橋の経済的効果をどう見ますか。

A. つばさ橋開通前にプノンペンからレンタカーでフェリーを利用した経験がありますが、フェリーの混み具合次第でバベットまでの所要時間が読めず、越境時間を含めてホーチミンまで1日のうちに到達できるか不安でした。現在はプノンペン~ホーチミン間の旅客輸送は確実に朝から夕方の間にこなせるので、両都市間を結ぶ物流・人流の時間節約と確実性は飛躍的に向上したと思います。また、ベトナム方向からカンボジアのアンコール遺跡を目指す観光客や、安価で品ぞろえ豊富なベトナム側の薬局で買い出ししたいカンボジア人にとって、つばさ橋開通の経済波及効果もあると思います。

プノンペン~バベット間の国道1号線の道路整備とメコン架橋は、2000年前後からJICAとアジア開発銀行(ADB)が連携・分担して支援してきました。中国支援の輸送インフラ整備と比べてスピード感は劣りますが、地元住民の移転を含む社会環境影響に対応しつつ進めたと理解しています。

つばさ橋建設のみを切り取って経済効果を考えるのは困難ですが、バンコク~プノンペン~ホーチミンを結ぶ「南部経済回廊」という、経済ハブが比較的短距離で連なる物流ルートにおいて最大のボトルネックだったメコン川渡河の不確実性を解消したことの費用対効果はポジティブだったと推測されます。メコン地域における多くの「経済回廊」を定点観測してきた立場からは、相対的に最も優れたインフラ投資の1つだったと思います。

JICAの組織横断チームが南部経済回廊を走破した結果を以下のサイトで公表しており、参考になると思います。
https://www.jica.go.jp/information/topics/2023/20231211_01.html

Q. バベットから国道1号線を西進してプノンペン市内に入る手前に「フナン・テチョ運河」建設予定地に着きました。2025年4月17日、カンボジアを訪問した習近平国家主席は、「フナン・テチョ総合水源管理プロジェクト(FTC)」に関する5つの協定に署名しました。フナン・テチョ運河は全長180km、事業規模は17億ドルに上るという報道があり、この運河建設を巡って様々な議論がなされています。

A. メコン川沿いのプノンペン河川港に到達する約5km手前にフナン・テチョ運河(「テチョTecho」は「偉大な」を意味するフン・セン前首相の愛称) の始点があります。今回視察時点では用水路レベルで、ここを大型船が航行する姿は想像できませんでした。2024年8月以降の国内外の報道内容を整理すると以下の通りです。

この運河のルートは、メコン川本流から南方向に分岐するバサック川の一部を経由し、タケオ、カンポット、ケップの各州を通過し、タイランド湾へ至るルートです(図1)。この運河が完成すればスエズ運河(160km)に匹敵する規模となり、ベトナム領土を経由せずにタイランド湾沿岸部とプノンペンが水運でつながります。

同運河の原型となる水路は扶南王国(1~7世紀ごろ)時代に建設されたとされ、現在も深さ1.5mのこの水路は利用されています。このルートを大幅に改造し、幅は上流域が100m、下流域が80m。水深は5.4mで、3,000トン級の船舶が航行できるようにする計画です。BOT(建設・運営・譲渡)方式で建設され、工期は4年を見込みます。

建設工事は第1区間(21km)と第2区間(159km)に分かれ、第1区間は全額をカンボジア資本が拠出し、第2区間は51%をカンボジア資本、49%を中国交通建設集団(CCCC)傘下の中国路橋工程(以下、CRBC)が拠出します。運営にあたる合弁会社には、プノンペン自治港(PPAP)が25%、シアヌークビル自治港(PAS)が26%、残りの49%は地場複合企業オーバーシーズ・カンボジア・インベストメント(OCIC)が出資します。

運河建設の採算性や経済性については、事前調査や事業化調査などの情報公開がないので考察は困難です。この運河の出口にあたるケップの約30km地点では中国の支援でカンポット新港が2024年6月に開港しており、プノンペンから3号線をまっすぐ南下する陸路輸送ルートとほぼ並行する形になっています。経済性の面からは運河建設は重複投資という印象です。

カンボジアにとってはこの運河建設によって大半がベトナム領に属するメコンデルタにおける水運に依存せず外洋につながるという地政学的意図があるのでしょう。フン・セン氏には、もともとクメール王国の領地だったメコンデルタ地帯をベトナムに奪われたという歴史的な思い入れがあるのかもしれません。

環境面では、ベトナム側が生態系への影響を懸念する声を上げていますが、カンボジア側は、運河に流れ込むのはメコン川の水量の1%に過ぎず、メコン川委員会(MRC)のデータに基づいた調査で問題ないという結果が出たと主張しています。西側諸国からは運河完成後に中国海軍が利用するのではという懸念の声が上がりますが、カンボジア政府はこの憶測を否定しています。

Q. 運河始点からさらに約5kmの地点にプノンペン~バベット高速道路の起工地点があり、そこは「習近平大通り」((Xi Jinping Blvd:習近平大道)の始点でもあります。「習近平大通り」は、プノンペンとカンダール州を結ぶ旧第3環状道路を改名したもので、2024年7月19日、中国とカンボジアの国交樹立66周年を祝う記念日に標識の落成式が行われました。

A. プノンペン~バベット高速道路については2023年6月に起工式が開かれましたが、今回視察時は、そばにCRBCのセメント工場は完成していましたが、メコン川を北へ渡す架橋工事は開始していませんでした。この高速道路は国道1号線の北側を並行するルートで総延長135km、片側2車線、2027年の開業を目指すといいます。完成すれば約1時間半で走行可能となる見込みです。総工費13億5,000万ドル(約1,800億円)のうち、20%をCRBC、残り80%を中国とカンボジアの合弁企業が拠出し、50年間の運営権を取得するBOT方式で受託しているという情報があります。こちらも経済性に関する情報は乏しく、現時点での考察は困難です。

この高速道路の起工点から1号線を挟んで対面に、22年に開通した習近平大道(片側2車線、中央分離帯付き)の入り口があります。同大道はプノンペン首都圏の渋滞を回避するために整備中の環状3号線の主要部分を構成し、市街の南側では21号線、2号線、3号線を東西につなぎます。視察時の印象では路面は非常にスムーズで、料金所もなく80~100km/hで走行できました。21号線と2号線の中間には建設中のプノンペン新空港へ至るアクセス道路と、プノンペン市南郊外へ至るフン・セン大通り(Samdach Techo Hun Sen Blvd)の結節点となる交差点があります(図3参照)。

この大道の整備についても経済性面の情報はないですが、利用率は高い印象で、首都圏の物流効率化には大きく貢献すると思われます。利用率が非常に低い印象のプノンペン~シハヌークビル間高速道路よりは経済性が優れているということは言えそうです。

Q. ベトナム南部メコンデルタ地帯とカンボジア南部の国境線には、主要な国境ゲートが5か所(北東から南西方向の順にベトナム側国境ゲートはサーマット、モクバイ、ロンビン、ティンビエン、ハーティエン)あります。その1つが、バサック川沿いに国道21号線を南下した終点のチェリータム国境です。国境をなすBinh Di川を挟んで向かいはベトナムです。泳いで渡れそうな距離でした。

A. 今回の視察では上述の習近平大道経由で21号線に入りましたが、プノンペン市街からは21号線を南下して約75km、路面の傷んだ箇所も多いですが、1時間45分程度でチェリータム(Chrey Thom)国境に着きます。国境から10kmほど手前の沿線にGalaxy Casino、1.5kmほど手前にYong Yuan Casinoというカジノを過ぎます。

バサック川から枝分かれするBinh Di川がカンボジア・カンダール州とベトナム・アンザン省の国境をなしています。この川に架かる越境橋の手前1kmほどに国境ゲートがあり、車両は入れませんが、徒歩であれば川のこちら側のカンボジア領を自由に歩けました。実はベトナム側は国境管理が厳しく、対岸のロンビン(Long Binh)国境ゲートには近づけなかったのですが、カンボジア側は管理が緩かったです。ただし、第三国人はここからベトナムへ入国できません。

ご指摘の通り、Binh Di川の幅は狭い箇所は50mほどで、泳いで渡れそうな印象です。国境橋のすぐ北側にはGolden Phoenix Entertainment City(金鳳娯楽城)という大規模で新しそうなカジノ施設があります。正面の建物だけ対面カジノ施設を備え、奥に連なるアパート群のような建物はオンラインカジノ専用だと推測します。さらにその北側のGrand Dragon ResortsやCrown Casino Chrey Thomという老舗と思われる小ぶりのカジノがあります。

チェリータムは生活感のある国境町ですが、カジノ施設が多く、「ミニ・バベット」という印象です。多くの飲食店や商業施設にクメール語と英語に加え、漢字が併記されています。バベットと比べてこの国境は物流の観点からは工場立地には向いていておらず、ここに住む中国人はカジノ関係者が中心ではないかと想像します。

Q. 国道2号線の終点にプノムデン国境、国道3号線の支線 33号線の終点にはプレクチャク国境があります。これら国境を2016年に視察したということですが、今回どのような変化がありましたか。

A. 国道2号線は大半が片側1車線ですが、肩幅が広く路面はスムーズです。交通量が多い箇所もありますが、平均時速45~50km/hは出せました。国境に近づくにつれ、沿線一帯が稲作地帯になります。プノンペン市街からは2号線を南下して122km、2時間40分程度で突き当りのプノムデン(Phnom Den)国境に着きます。

検問所に国境警察官5~6名が詰めていました。16年の視察時は、観光客だからと説明し、パスポートを預けて中立地帯まで立ち入ることが許されましたが、今回は無理でした。ベトナム側はティンビエン(Tinh Bien)国境ゲートそのものに近づけないほど管理が厳しくなっており、カンボジア側もそれに応じて厳しく対応しているようです。検問所から少し入ったところまでは入れてくれて、写真撮影なしという条件でベトナム側ゲート方向を眺めることは許されました。中立地帯は150m程度で、ベトナム側ゲートまで見通せます。カンボジア側は前回なかった入国管理棟が6年位前にできています。警官たちに聞き取りしたところでは、この国境では ベトナムからの輸入貨物は果物が多く、カンボジアからの輸出貨物はあまりないそうです。国際路線バスはこのルートを走っていませんが、外国人観光客はこの国境でアライバルビザを取得してカンボジアに入国できるということです。16年視察時と比べ、トラックの往来が増えている印象でした。バベット国境とは比べものになりませんが、この国境経由ルートはベトナムのメコンデルタ地域トとプノンペンを結ぶ「サブ南部経済回廊」に成長しつつあると思います。

一方、この国境ではカジノ施設をあまり見ませんでした。16年の視察時に見たゲート手前約200mにあったTakeo Casinoというカジノは潰れてなくなっていました。手前約700mの左手にある平屋建てのTop Diamond Casinoが健在でした。ここのオーナーはカンボジア人で、中を覗くとバカラテーブルが約10卓あり、ベトナム人客が20人位居ましたが、全体的に寂しい雰囲気でした。上述のチェリータム国境が「ミニ・バベット」化しているのとは対照的です。漢字表記の商業施設も見かけず、プノムデン国境地帯には中国人のプレゼンスは(今のところ?)ほとんどないようです。

今回、プレクチャク(Prek Chak)国境へはプノムデン国境から複雑なルートでアクセスしましたが、プノンペン市街からだと国道3号線を南下し、31号線、33号線とつないで突き当りのプレクチャク国境まで154km、3時間程度で着きます。

プレクチャクの国境施設はプノムデンより立派です。それに比例して管理も厳しそうだったため、ゲートに近づいて係官に話しかけることは控えました。ベトナム側のハーティエン(Ha Tien)国境ゲートでは第三国人の観光客を見たので、この国境でもアライバルビザを取得してカンボジアに入国できるようです。

国境ゲートに隣接して高層のカジノホテルがあります。16年の視察時には閉鎖されていましたが、今回は営業していました。中に入ってみると、昼間の時間帯のせいか客はおらず、閑散としていましたが、玄関に送迎バスが駐車していたので、需要に応じてベトナム人越境カジノ客を連れてくるのでしょう。越境路線バスは走っていないもようです。

国境ゲートから約2.5km地点に、16年の視察時には見なかったMy Casino(中国名:我娯楽)というカジノ施設のコンパウンドがあります。入り口ゲート手前にたむろしている生業不明の男性たちに聞き取りした結果、以下のようなことがわかりました。

  • このカジノは3年ほど前に開業
  • 33号線に面する正面の建物は対面客用施設
  • 奥のアパート群のような建物はオンラインカジノ棟
  • スタッフはロシア人、パキスタン人、インドネシア人など多国籍

33号線をはさんでカジノ施設の向かい側には漢字表記のスーパー(超市)を発見しました。バベットのような経済特区は見かけないので、この付近に住む中国人もカジノ関係者が中心だろうと推測します。

競輪の補助事業 このレポートは、競輪の補助により作成しました。
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