一般財団法人 国際貿易投資研究所(ITI)

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フラッシュ

2013/01/23 No.163ASEAN経済共同体における金融サービス・資本市場の連携・統合

赤羽裕
ITI「ASEAN経済共同体(AEC)研究会」 委員
亜細亜大学大学院非常勤講師

第1節はじめに

ASEAN経済共同体(以下AECという)における金融・資本分野の動きについて確認・検討する際には、1997年7月にタイで発生し、東アジア域内に瞬く間に広がった「アジア通貨危機」への対応経緯も併せて考える必要がある。そこで、本章では、まず2007年のブループリントを中心としてAECにおける金融・資本分野の動向を確認する。続いて、アジア通貨危機後に出来上がった枠組みである「ASEAN+3」(注1)の取組・施策を確認する。そのうえで、両者の関係について考察し、今後の展望を考える。

他の分野におけるASEAN経済共同体の動きは、対日本、中国、韓国を始めとするFTAなどに見られるように、ASEANとして一体で動いている。一方で、金融・資本分野に関しては、アジア通貨危機以降のASEAN+3の動きが、通貨危機の影響がASEANに留まらず、東アジア全体へ影響が及んだことをふまえ開始されたものであるため、日・中・韓との共同歩調で進められてきた部分も多い。これは、アジア通貨危機が、欧米を中心として進められてきたグローバル化の動きの中で、海外資本が危機発生時にいっせいに地域から流出したことに起因すること。また、その背景には、それまでの通貨制度として域内に多く見られた米ドルペッグ制の問題や、域内のインフラ整備など長期資金が域内からの直接の資金供給ではなく、一度、欧米に流れた資金も含めて、欧米からの調達に依存してきた構造問題が存在する。それは、ASEANのみならず、中国や韓国、あるいは、先進国ながらASEAN域内に日系企業の分業体制を構築していた日本にも大きな影響を与えることとなった。このため、ASEANは金融・資本分野については、ASEAN10ヶ国域内での動きと日・中・韓を加えた「ASEAN+3」の双方の軸で、統合や協力を進めているところに特徴がある。

また、ASEAN10ヶ国では、経済の発展段階の差があり、域内FTA(AFTA=ASEANFreeTradeArea)でも後発4ヶ国(ベトナム・ラオス・カンボジア・ミャンマー)の最終関税率適用の時期を遅らせるなど柔軟な対応をしている。金融・資本分野についても、国内の金融・資本市場自体の整備・発展状況に差異があり、それをふまえた対応を行っている。

続きはこちらからご覧下さい(PDFファイル)

(注1)1997年のアジア通貨危機を契機に開始されたASEAN10ヶ国と日本・中国・韓国3ヶ国が協力していく枠組。同年にASEAN首脳会議に、日・中・韓の首脳が招待されたのをきっかけとしている。

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