一般財団法人 国際貿易投資研究所(ITI)

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2018/09/11 No.390メーソート・ミャワディ国境貿易の光景、集積する日本の中古品ITIミャンマー研究会現地出張報告(2)

大木博巳
(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹

第1友好橋

ミャンマーの国境貿易においてムセに次いで貿易額が大きいメーソート・ミャワディ国境貿易のルートは、①第1友好橋を自動車で運ぶ陸上貿易、②モエイ川を小船で横断する河川貿易の2つがある。

陸上貿易は、全長420mの第1友好橋を渡る。車両は橋の真ん中でタイの左側通行からミャンマーの右側通行に切り替わる。タイ側からはコンテナトレーラーや大型トラックが数珠つなぎになってミャンマー入国を待っていた(写真①)。ミャンマー側からはトラックの流れよりも、黄緑色の一時パスをもつミャンマー人の流れが圧倒的に多い。ミャンマーにはタイからモノが流れ、タイにはミャンマーからヒトが流れている。

タイへの輸出品は水産物や農産物などで、品目がかなり限定的だ。タイからミャンマーに運ばれる貨物の9割超が片荷でタイに戻されている。

貨物を満載したトラックは、友好橋を渡ると、幹線道路の85号線をまっすぐ西へ進み、Border Trade Zoneに向う。Border Trade Zoneの手前に、物流会社の倉庫があり、そこでタイ車両に積載された貨物をミャンマーの車両に積み替える。倉庫群の一角の古そうなビルの正面に日本通運の看板がかかっていた。荷物を積み替えたミャンマーの車両は、その先の右手にある広い輸入検査場に移動して荷物検査を受ける。輸入検査所には、日本の物流企業のロゴ入れのトラックが止まっていた。ヤンゴンに向かう便であろう。

2019年に第2友好橋の開通が予定されている。建設現場を見て回ったが、タイ側では、正面の国境ゲートとその周辺の施設はまだ建設中で立ち入ることはできないが、モエイ川のふもとまで通じる側道を走ると、川までのアクセス道路と橋そのものはすでに完成しているのが見えた。

① ミャンマーへの入国を待つトラック(第1友好橋)

日本の中古品の集積地、メーソート

モイエ川を渡る河川貿易は、メーソート側に22か所の桟橋(ピア)がある(写真②)。ここからミャンマーに、小船で物が運ばれている。桟橋付近には、ゲートと呼ばれる保管場所がある。例えば、友好橋の国境ゲートから12号線をほんの500mほど引き返した信号のある三叉路を左折してモエイ川の下流方向へ進むと、No.9とかNo.10とかNo.12といった番号のついた門(ゲート)が出てくる。これらは、日本の中古自動車の一時保管場所として、地元の人々にも知れ渡っている。

② ゲートNo10付近の桟橋場(メーソート)

ゲートNo.10の門が空いていたので、そこに入っていくと、モエイ川を隔てて小さい簡易フェリーが中古車を向こう岸へ運ぶ桟橋があった。しかし、中古自動車はなく、自転車、冷蔵庫、各種鍋釜、テニスラケット、乳母車、建設会社のヘルメット、クーラーボックス、プラスチックボックス、家具、冷蔵庫など日本の全国各地から様々な中古品が集まっている。ミャマンー人の日本製品に対する愛着ぶりがよくわかる。

特に、目を引いたのが、所管する日本各地の警察ステッカーが貼られていた自転車である(写真③)。日本の自転車輸出は、ガーナやカンボジア、タンザニアが輸出上位国であったが、2012年以降、ミャンマー向け輸出が急増し、ガーナに次いでミャンマーが第2位の輸出先なっている(図1)。

しかし、お目当ての中古自動車はどこを探してもなかった。ゲートNo.10で偶然出会った日本語が非常に堪能な、埼玉県在住のパキスタン人によれば、タイ側から24時間以内に中古自動車をメーソートからミャワディに移すよう指示があったために、午前中にはミャワディに送ってしまったと説明していた。

ミャンマー政府は、2018年から、右ハンドル車輸入(重機を除く)を禁止した。ミャンマー政府は、2011年に中古車の輸入規制を大幅に緩和したことで、右ハンドルの日本の中古車が大量に流入し、2011年度に25万台だった乗用車の登録台数は2015年度には46万台に増えた。これに伴い、特にヤンゴンなどの都市部で渋滞が深刻になり事故も増えたことから、ミャンマー政府は2017年から右ハンドル車の輸入を規制し始めた。2018年からは右ハンドル車の輸入を全面禁止とした。

しかし、このパキスタン人によれば、ヤンゴンでは、右ハンドルの中古車流通は禁止されているが、地方ではまだ出回っているとのことであった。ただし、最近では競争が激しくなり1台当たりのマージジンが薄くなってきている。ヤンゴンの中古自動車ビジネスに詳しい専門家によれば、パキスタン人の中古自動車ビジネスは、部品にあるという指摘をしていた。

③ ゲートNo10 で見た日本の中古品

中古自転車

鍋等

図1

出所:貿易統計

日本の中古自動車の置き場となっていたミャワディの輸出検査所

メーソートからミャワディ市内に入ると、日本の右ハンドルの中古自動車で溢れていた。日本の中古冷蔵庫を専門に展示販売する店舗も多数あった。日本の中古自転車も売られていた。日本の中古自動車は、ミャワディの輸出検査所の敷地で見つけた。輸出検査所は、輸入検査所の反対側にある。左右対称の形で輸入検査場と輸出検査場がある。

輸出検査場には、日本の中古車(主に軽自動車)が無造作に放置されていた。パキスタン人が述べていたように、メーソートでは長時間、保管できないので、ミャワディに持ってきたのであろう。

輸出検査場では、中古自動車を探している客も散見された。中古車ビジネスに詳しい地元の人によれば、気に入った中古自動車を見つけると、その場で現金で支払い、運転して持ちかえる。ナンバープレートは、自分の好きな番号を販売店からもらうことがきるということであった。他州からもミャワディに中古車を買いに来る人もいるようである。車が壊れたら、修理するよりは新たに中古車を購入したほうが安くつくからである。

ミャワディ市内を走っている車のナンバープレートは、地元のカイン州(KYN)のナンバープレート以外にYNG(ヤンゴン)、MDL(マンダレー)、BAG(バゴー)、MON(モン)、NPW(ネピドー)などのプレートをつけている車が多数走っている。これらの地元以外のナンバープレートは、偽物が多いという。

本物と偽物のナンバープレートの見分け方は、難しくない。本物はプレートの左上と右上角に運輸省のロゴが押し出されている。また、黒地に白の数字の白い部分にかすかにRoad Transport and Automobile Department (RTAD)のすかしが細かく入っているが、偽物にはそれらがない。慣れれば素人でもすぐ見分けられる。

ただし、非公式ナンバープレートの自動車でヤンゴンまで走るのは、難しいようである。途中の検問所でチェックが入るからである。

④ ミャワディの輸出検査所に駐車している日本の中古軽自動車

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