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2017/03/01 No.320トランプ大統領は減税やインフラ投資拡大で経済成長を高められるか~トランプ新政権の規制・エネルギー・貿易政策改革に死角はあるか~(その1)

高橋俊樹
(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹

はじめに

トランプ米大統領は2月28日(火)、米議会上下両院合同本会議で初めて演説し、外交・安全保障政策のほか、大幅な減税やインフラ投資などの経済政策について方針を明らかにした。本稿は、減税やインフラ投資拡大により、不足する財源を規制・エネルギー改革や貿易赤字の削減でバランスすることを狙うトランプ新政権の基本的な考え方を取り上げる。以下、5つのテーマに分け、トランプ新政権の経済改革における米国の経済成長や長期的な国際競争力への影響を探るとともに、米国の抱える経常収支の赤字や累積債務の問題等にどのように関わってくるのかを検討したい。

目次

1.トランプ大統領の経済改革は何を狙っているのか
(1) ナバロ・ロス経済閣僚の経済計画とその効果
(2) 共和党の国境調整税の効果と影響
(3) 長期では国際競争力に影響か
(4) 日本、中国、メキシコなどへの影響と対応

2. 米国では日本よりも40年も前に貿易サービス収支が赤字に転換
~国境調整税で米国の国際収支の発展段階を数段階前の「Ⅳ.未成熟な債権国」まで戻せるか~

3. トランプ新政権は貿易サービス赤字を一掃できるか
(1) 2度の石油ショックを機に経常収支の赤字が定着
(2) 大幅な黒字を示す米国の直接投資収益
(3) 黒字を拡大する米国のサービス収支
(4) 累積債務が年々拡大

4.堅調な米国の企業収益と海外からの資金還流
(1) 拡大する米国企業の利益

(2) 米国企業の高収益と資金流入の背景

5.なぜ米国はデフォールトに陥らないのか
(1) 対外純資産残高の赤字の持続可能性
(2) 米国への資金還流の推移

終わりに

1. トランプ大統領の経済改革は何を狙っているのか

(1) ナバロ・ロス経済閣僚の経済計画とその効果

減税や貿易赤字の削減を強く主張

トランプ新大統領は就任後に次々と大統領令(Executive Orders)に署名し、不法移民の取り締まり強化やインフラ投資の拡大、オバマケアの見直し、などを求めた。また、覚書(Presidential memorandums) にもサインし、パイプラインの建設やTPPの離脱を表明した。

特に、メキシコ国境沿いに壁を建設し、その費用をメキシコ側に求め、中国の為替操作や違法な輸出に対して断固たる対応を行うことを表明している。大統領選挙中から、メキシコに対する35%の国境税や中国に対する45%の関税を設けることを明らかにしている。また、連邦法人税の35%から15%への引き下げ、所得税の減税や1兆ドルのインフラ投資を公約に掲げ、米国第一主義に基づき、米国の雇用を拡大し貿易赤字を削減することを主張している。

2016年の米国の大統領選挙キャンペーンの真最中である9月、トランプ新政権の経済閣僚であるピーター・ナバロ国家通商会議議長とウイルバー・ロス商務長官が共同で執筆した論文 ”Scoring the Trump Economic Plan: Trade, Regulatory, &Energy Policy Impacts”が発表された。これは、トランプ大統領が表明している数々の経済改革の基礎となるものである。

同論文によれば、米国が陥っている現在の低い経済成長は高い税金や規制の拡大、それに貿易赤字の増加によるとしている。そして、米国の貿易赤字の拡大は、NAFTAなどの貿易交渉、中国のWTO加盟、韓米FTAなどの影響が大きいことを指摘している。したがって、米国が高い経済成長を達成するには、貿易政策改革、規制緩和策、及びエネルギー政策改革が必要になると主張している。

トランプ大統領が描いている法人税と所得税の減税により、税収は2.6兆ドル減少すると予測されている。トランプ新政権はこのうち1.7兆ドルを貿易政策改革、0.5兆ドルを規制緩和策、0.15兆ドルをエネルギー政策改革による税収増で相殺することが可能と見込んでいる。トランプ新政権の貿易政策改革の目指すところは、貿易赤字の削減とそれに関連する税制の改革である。貿易政策改革を進めるにあたって、トランプ新政権はNAFTAや韓米FTA交渉が米国の輸出の低迷、輸入増をもたらす要因を助長していると説く。つまり、NAFTAとか韓米FTAのようなこれまでのナイーブな交渉では、教科書通りに貿易赤字は減らず、むしろ増加させていると主張する。

トランプ新政権は、貿易赤字の拡大は中国のような通貨操作や非関税障壁、鉄鋼などのダンピングによる不公正な貿易慣行だけが主な要因ではないと考える。つまり、米国の税体系やWTOルールの問題でもあると指摘する。例えば、米国は国民や法人の所得の源泉が国内にあるか国外にあるかを問わず、その全てを課税の対象とする税システムを取っているが、世界の主要国は国内での利益には課税するけれど、企業が海外で儲けた分に関しては関知しないという税制度を採用している。

したがって、米企業が海外で得た利益は海外にとどまる限り課税されないが、国内に還流すれば課税されるため、税逃れのために海外に蓄えられたままになっているケースが多い。その金額は2兆ドルに達すると見込まれる。この税体系が企業の海外生産を後押しし、国内への投資を控える要因になっている。

また、米国以外の主要国では付加価値税(VAT)を導入しているため、海外へ輸出する際は取引の各段階で支払った付加価値税が還付される(WTOも認めている)。しかし、米国は所得税システム(Income Tax System) を採用しており、輸出で得られる利益に法人税が課せられる。これにより、米国企業は輸出の際に米国に法人税を支払わなければならず、また輸出先でも付加価値税を徴収される。その一方では、外国企業や海外に進出した米多国籍企業が米国へ輸出する時は、付加価値税を取られないので、米国の輸入では外国・米多国籍企業が得をすることになる。

トランプ新政権は、この税体系が米国の輸出を抑制し、輸入を拡大することになり、貿易赤字の大きな要因となっていると指摘する。そして、製造業を中心に米企業が海外での生産を活発化し、そこで生産した部材や製品を米国に逆輸入する要因につながっていると主張する。さらに、高い法人税や過剰な規制とともに、米国の通商相手の不公正な貿易慣行や通貨操作、及びこれまでの通商交渉なども、米国企業の海外への移転を促していると考えている。

NAFTAや韓米FTAを利用した取引や中国との貿易はその代表例として挙げられており、NAFTAの再交渉などにより米国に有利な仕組みを作ることを求めている。現段階で想定されるこの新たな仕組みの1つは、関税を引き上げるか、国境での法人税の調整税の徴収である。

共和党の国境調整税案は、輸入品には20%の国境調整税を課し、米国企業が米国で法人税を払う場合は国内利益にのみ20%の法人税を支払うというものである。簡潔に言えば、輸入品には20%の法人税がかかるが、米国企業の輸出による利益には税金が免除されるということだ。

規制・エネルギー改革と貿易政策効果

トランプ新政権は、米国の貿易赤字を解消するには、NAFTAなどの通商交渉の見直しや、通貨操作や貿易パートナーの重商主義への対応が必要であり、さらに規制緩和策、エネルギー政策の改善が不可欠と考えている。

米国の規制は2015年には3,300件も公表されており、増加傾向にある。ヘリテージ財団などの試算によれば、この規制のコストは2兆ドルでGDPの1割に達しているようだ。トランプ新政権はこの2兆ドルの10%の規制緩和を目指しており、その分野として石炭産業や石油・天然ガス産業の規制を緩和することを検討している。この規制緩和による、石炭の開発促進で何万人もの失業の解消を狙っている。

石油・天然ガスの国内開発の促進は輸入への依存度を低めることにつながるし、輸出規制を緩和すれば、輸出拡大にも貢献することになる。トランプ新政権は、オバマ政権時のクリーン・バワー・プランが新エネルギー分野への投資を促し、石炭や石油・天然ガス開発を抑制したとしている。

トランプ新政権は、製造業の雇用の拡大に力点を置いており、米国の製造業の再生が経済成長や労働者の所得拡大につながり、消費増に結びついて経済成長を促すと説いている。ある試算によれば、オバマ政権時の2050年までに炭素排出量を80%減少する計画は、30年間に米国のGDPを5.3兆ドルほど引き下げるとのことだ。

エネルギー改革は規制改革と対をなすものだ。なぜならば、規制緩和による石炭の開発拡大や、石油・天然ガスの開発計画、パイプラインの建設許可などのエネルギー改革は、規制緩和と重なるからだ。エネルギー分野の国内生産の拡大は、回りまわって米国のエネルギー輸入需要の低下をもたらす。

エネルギー改革による石炭・石油・天然ガスなどの生産量拡大により、米国のGDPは最初の7年間で1,270億ドル、次の30年間で4,500億ドルも引き上げられるとの試算結果が出ている。

また、トランプ新政権の貿易政策改革であるが、2015年にはラフな計算で米国は2.3兆ドルの財・サービスの輸出を行っており、2.8兆ドルを輸入している。差引5,000億ドルが貿易サービス収支の赤字になる。トランプ新政権はこの貿易サービス収支の赤字がGDPを押し下げる大きな要因と主張する。この5,000億ドルの赤字の内、5割を輸出、残りの5割を輸入で解消するとすれば、輸出を2,500億ドル増加させ、輸入を2,500億ドル減らさなければならない。

この貿易サービス赤字の削減により労働者の所得を引き上げ、それによる消費の拡大から、米国の経済成長を高めることが見込まれている。

(2) 共和党の国境調整税の効果と影響

米国でトランプ新大統領が就任するや否や、矢継ぎ早に何本もの大統領令や覚書を繰り出すなど、その攻勢に圧倒される毎日であるが、全てが思い通りになるわけではない。例えば、NAFTAの再交渉において、必ずしも米国が圧倒的に有利な交渉を進めることができるとは限らない。これは、カナダ・メキシコが自国の立場を主張する交渉材料を持っているからであるし、既にTPPの交渉で、環境・労働、知的財産権などの分野で、NAFTAの再交渉でお手本とすべき議論を実施済みであるからだ。

実際の交渉では、米国は、原産地規則、環境・労働、知的財産、eコマース、農産物規制(カナダの酪農製品等)、などを始めとして全ての分野を持ち出すと考えられる。一方、カナダとメキシコは、バイアメリカン法で守られている政府調達市場の開放(インフラ投資促進関連)、針葉樹材協定、国境税、メキシコ産砂糖への米国の関税割当枠拡大、メキシコ産ポテトの保護、などを議題にすると見込まれる。

そもそもNAFTAを活用したメキシコから米国向け輸出への国境税の課税は、米国の雇用を守るためと、メキシコとの貿易赤字の削減を狙ったものだ。2015年の米国の貿易収支(国際収支ベース)は7,693億ドルの赤字。国別では(通関ベース)、中国から3,657億ドル、ドイツから742億ドル、日本から686億ドル、メキシコから584億ドルの貿易赤字となっている。米国の日本とメキシコとの貿易赤字はいずれも600億ドル前後に達している。

トランプ大統領の国境税はメキシコなどに投資し米国に輸出する企業に対して国境税を賦課すると示唆しているだけで、その正確な内容はまだ不明である。これに対して、共和党(GOP)が検討している国境調整税のアウトラインは前述のようにある程度はわかっている。国境調整税が成立すれば、これまで米国から輸出する財サービスの利益に掛かっていた法人税が免税になる。例えば、100㌦の輸出で33㌦の利益がある場合、これまでは12%(12ドル(33㌦×法人税35%)/100㌦)を課税していたものが、今後は免除される。

一方では、これまで免税されていた米国に輸入される財サービスに法人税がかかる。共和党案で議論されているのは新たな法人税は20%であるが、10%程度になるとの見方もある。ライアン下院議長を中心に共和党が国境調整税を議論している背景には、米国以外のほとんどの国は国内利益には課税、海外利益には非課税にしていることが挙げられる。

現行の税制は米企業の輸出にペナルティ、外国企業からの輸入に補助金を与えているとの批判を受けて、米国は法人税の35%を15%に減税する代わりに、税収不足を相殺するために国境で輸入品への法人税を引き上げようとしている。すなわち、共和党においても、米国内で生産する方が法人税の支払いという面で有利なルールを検討しているということだ。共和党の国境調整税は、トランプ大統領の国境税とは違い特定の企業を狙うものではなく、35%の法人税が減税されるものの、国境での関税の引き上げと同等の効果を発揮する。米国に本社や子会社を持つ企業は、国境調整税の影響を最小限に食い止められるが、そうでない企業には打撃になる。

国境調整税は米国の輸出を拡大し輸入を縮小させるため、貿易赤字が減少し、ドル高要因になる。同時に、輸入コストの上昇要因となり、インフレを招く(消費者物価で数%程度か)。20%の輸入関税、12%の輸出補助金と同等の効果を持ち、4,000億ドルを超える貿易赤字の削減効果を持つとの試算もある。

(3) 長期では国際競争力に影響か

トランプ新政権は、貿易サービス赤字を削減し、規制・エネルギー緩和を実行することにより海外から米国への投資を回帰させ、労働者の所得を向上させ、GDPを引き上げることを目論んでいる。また、米国での生産拡大により、生産の単位コストが減少することにより、米国の比較優位や利益率が上昇することを期待している。

しかし、こうしたトランプ新政権の狙いが確実に実現するとは限らない。なぜならば、こうした経済計画は、さまざまな要因によってその実行を妨げられるからである。例えば、共和党が進める国境調整税は保護貿易主義的な色彩が強いので、WTOのルールと整合性が得られるかどうかの保証はない。また国境調整税は関税に限りなく似ているので、米国の貿易相手国がこれを黙って認めるかどうかは、不確定である。場合によっては、諸外国が米国からの輸入品に報復的な関税を賦課することもありうる。

米国の小売り、自動車メーカーなどの企業は、輸入する資材・製品価格の上昇により売り上げの減少が見込まれることから、国境調整税案には反対の立場にあると考えられる。

また、経済計画は過度に製造業に焦点を当て、サービス産業の労働者所得が低いことから同産業をあえて軽視する傾向があり、製造業とサービス産業の両面で国際競争力を高めている米国の産業構造を正確に捉えていない面がある。これは、意識的に中西部の労働者の雇用と所得の改善に焦点を当てることにより、選挙を有利に展開しようとの意図が反映されているためと思われる。

さらに、長期的には、国境調整税の導入による輸入コストの上昇から競争力の低下を招く恐れがある。輸入コストの上昇は米国内で販売する製品の価格に上乗せされる。このコストアップは米国の輸出製品の価格にも影響を与え、輸出での法人税の免税という税の低下を相殺する可能性がある。

また、経済計画の実施により、貿易赤字の削減や規制・エネルギーコスト低下から労働者の所得向上につながり、GDPや生産を押し上げ、これが製品の単位コストや生産性の向上に結びついて米国の比較優位や国際競争力の増強が期待される。しかしながら、必ずしもこの一連の連鎖が十分に生じるほど、米国の生産やGDPの拡大が米国の比較優位や国際競争力を高めるとは限らない。

むしろ、インフレや労働者の賃金上昇が競争力を奪うかもしれない。つまり、回りまわって最終的には、米国の輸入コストアップ要因はスマートフォンや自動車などの製品価格を押し上げ、徐々に米国の国際競争力を奪うことになりかねない。米国のインテルやアップル、ヤフー、グーグル、ジョンソン・アンド・ジョンソン、GMなどの代表的なIT・製造業を中心とする他国籍企業は、積極的な海外展開や海外での製造委託を武器に国際競争力を高めてきた。これが、国内生産を有利にする税体系の導入で、これまで保持してきた国際競争力に変化が生じないとは限らない。

米国企業は、スマイルカーブに見られるごとく、製造という付加価値の低い工程では海外に製造委託し、カーブの両端である製品の設計・企画・立案やその販売、特許・フランチャイズ、リース・アフターサービスなどの付加価値の高い部門で優位性を発揮してきた。これに対して、トランプ新政権はむしろ製造業に焦点を当てたわけである。

後述するように、米国の経常赤字は米国の多国籍企業の高収益を背景に、海外から資金還流によりバランスされている。もしも、こうした多国籍企業の海外での活動を規制し、国内生産を促すような政策が浸透し、国際競争力が低下するようなことがあれば、将来的には、現時点で海外からの資金還流によって解決している国際収支のアンバランスの問題がより深刻になると考えられる。

(4) 日本、中国、メキシコなどへの影響と対応

ナバロ・ロス論文を読んで気が付くことは、中国やメキシコ、あるいは韓国とのFTAに言及する箇所が多いが、相対的に日本の名前が記述される部分が少ないということである。日本では、日米FTAに関して米国から激しく求められることを懸念するニュースが多く散見されるが、実際には米国は韓米FTAで失業が9.5万人増加し、米国の対韓貿易赤字は3年で約倍増している。つまり、NAFTA同様に韓米FTAの再交渉の可能性も残されているのだ。

日本への言及が少ないことに対して、中国やメキシコに関する記述は多い。中国との貿易で米国は巨額な貿易赤字を生んでいるが、通常の教科書によれば、これは為替の変動によってバランスされるはずである。しかし、現実には対中貿易赤字は慢性化しており、改善の兆しは見えない。

この理由は中国の通貨である元は完全フロートではなく管理された通貨であるとし、さらに、不公正な貿易慣行や鉄鋼製品などのダンピングにより赤字が定着していると指摘する。メキシコに対しては、米国からの輸入では付加価値税を16%まで引き上げて輸入抑制的な措置を実行する一方で、対米輸出ではNAFTAを利用し関税なしで輸出できるし、米国に付加価値税を支払っていない分だけ輸出で優位性を保っている、などの問題点を指摘している。

EUのユーロの下落は、ドイツの実際の通貨の実力を過小評価することにつながり、ドイツの対米輸出において競争力を高めることになる。これが、2015年において、ドイツの対米貿易黒字が中国に次いで2位となっている理由としている。

トランプ大統領が国境税あるいは共和党の国境調整税を採用し、貿易赤字を強制的に縮小させ、ハードなランディングを実行する可能性は現時点では確実とは言えない。この法案の議会での審議は、WTOルールとの整合性も含め、小売りや自動車業界などの反対勢力との調整が予想されることから、かなり厳しいものになりそうであるからだ。しかしながら、選択の幅は狭く、それに対応する構えが必要だ。

トランプ新政権の貿易赤字削減の経済計画は、慢性的な国際収支問題や債務問題の解決につながり、米国経済の高く安定した経済成長を促すので、ある意味では世界経済に貢献する。

いずれにしても、中国やメキシコはこれまでのような対米輸出の拡大を続けられず、それに代わる対米投資の活発化や輸入促進の圧力が高まることになる。特に中国には、かつて日本が辿った投資促進や、輸入促進活動が求められるだけでなく、非関税障壁の改善が求められよう。日本も対岸の火事ではなく、さらなる対米投資や対米輸入の促進を検討せざるを得ないと思われる。

この意味において、日本は既に日米経済対話を進めることになっているが、米中においても2国間の新たな通商交渉の可能性が高まることは確実だ。米国は同時に日本や中国あるいはメキシコ・ドイツなどの主要赤字相手国に対して、税制改革や石油・天然ガスの輸出の拡大や米国への投資を進めることにより、一層の赤字削減を達成することが可能である。

日本としては、地道に米国との通商交渉を進め、最終的には、米国が離脱するTPPの再交渉の可能性について模索することが肝要である。

その2 >

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