一般財団法人 国際貿易投資研究所(ITI)

Menu

フラッシュ

2005/05/18 No.78_5アジア・南米の絆を形成する移民ネットワーク(5/6)〜在日日系人とウチナーンチュ〜

内多允
(財)国際貿易投資研究所 客員研究員
名古屋文理大学 教授

起業支援を強化する日系移民ネットワーク

投資公社(IIC:Inter-American Investment Corporation)とWUBが4月10日、相互協力の覚書に調印した。今後、IICとWUBの中南米各国の支部はウチナーンチュの投資やIIC事業の紹介などで相互協力を進めることで合意した。

IDBグループは中南米における雇用拡大や産業開発における小規模な金融(マイクロファイナンス)の効果に注目している。小規模な資金で可能な起業が、地域社会の需要が見込めるビジネス機会を得られる小規模な企業の発展を促し雇用効果を生むからである。そのための資金源として、ODAに比較しても遜色のない規模に膨れ上がった移民送金への期待が高い。IDBの系列機関(IICとMIF)は移民からの送金を活用し、帰国した移民の起業を支援する各国の組織との連携を強化している。

例えばMIF(The Multilateral Investment Fund)は04年5月、ペルー日系人協会との事業提携協定を東京で締結した。協定によれば3か年計画でMIFが50万ドルそしてペルー日系人協会と金融機関(creditunions)が合計66万3,000ドルをそれぞれ負担して、ペルーに帰国した日系人(dwekasegui)の起業を融資や技術指導等にわたって支援する。この協定締結の発表でIDBは、02年時点で日本には日系人(Peruvian Dekasegi)は約5万2,000人に上り、ペルーへの送金額は年間2億ドルであると指摘している。ちなみに日本からペルー向けODA供与額(03年予算)は1億490万ドルであった。

南米日系人社会で最大の人口を有するブラジルでは2000年10月、ブラジル政府やSEBRAE(小規模・零細企業支援サービス)、IDB、日系社会代表が出席して「出稼ぎ基金」設立趣意書が交わされた。その出資機関はIDBとSEBRAE、SUDAMERIS銀行等である。同基金は起業希望者への融資や出資によって支援する。また、出稼ぎ基金と平行してSEBRAEやABD(ブラジル出稼ぎ協会)、その他の機関は出稼ぎ日系人に対してブラジル出発から日本滞在、帰国後までの情報提供や起業支援を行ってきた。SEBRAEはIDB沖縄総会期間中(4月7日)にMIFから155万ドルの資金協力を得る協定を締結した。その主目的は日本から帰国した日系人を対象に職業訓練等の起業支援である。これについての発表の中でIDBは、日本へのブラジル人移民は1990年の5万6,000人から02年には27万人に増加していると指摘している。SEBRAEはMIFの支援によるプログラムで日本からの帰国者に対する起業支援を強化する方針である。この事業にはNPO団体であるABD(ブラジル出稼ぎ協会)も協力している。

ブラジル日系人の帰国後の起業成功率は、高いという評価も報道されている。これはSABRAEとABDの共同調査の結果(BrazilToday04年6月14日号による)では在日日系人の50%が帰国後の起業を考えている。そして帰国後の起業を実現した比率は男性39.3%、女性26.0%である。そして事業が順調な比率は男性14.6%、女性8.7%で、これらの数字は一般の起業に比べて高い成功率であると評価している。

フラッシュ一覧に戻る